(※写真はイメージです/PIXTA)

相続した不動産を現金化し、手間なく平等に分けるには? 佐伯知哉氏(司法書士法人さえき事務所 所長)が、相続不動産の遺産分割テクニックを解説します。

相続のプロが教える遺産分割テクニック

今回は、不動産を相続したときの遺産分割テクニックについて見ていきましょう。

 

我々司法書士は相続の手続きを多く扱っています。私のところでは特に相続登記や不動産の代理売却なども行っていて、その中でいろいろな遺産分割のテクニックを活用しています。

 

遺産分割のよくある悩みを取り上げ、それに対してどんな方法論があるのかをお話しする形で解説します。一体どんなテクニックがあるのか、ぜひ皆さんにも知っていただきたいと思いますので、ぜひ最後までお読みください。

相続不動産を現金化し、手間なく平等に分けるには?

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【よくある悩み】

遺産の中に不動産があるのですが、相続人は誰も不動産を所有することを望んでいません。そのため売却して、お金という形で平等に分けたいと思っています。なるべく手間をかけずにうまく分ける方法はないでしょうか?

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結論から言うと、「誰か1人を代表相続人にする」という方法があります。

 

この方法では、代表相続人1人がすべての手続きを行います。もし相続人が3人いれば、うち2人は少しラクをできることになります。代表相続人にはやや負担がかかるものの、3人全員で一緒に手続きをするよりは全然手間ではありません。

 

ただしこの方法には、3つの注意点があります。

注意点①売却前に「不動産の名義変更」が必要だが…

一般の方々が自分たちで遺産分割協議をする場合、実際に不動産を平等に分けたいと考えたらどんな方法を取るでしょうか。たとえば相続人が3人いたとすれば、その不動産の名義を3人の名義に変えてから3人が売主として売却し、そのお金を3分の1ずつ分ける…。このような方法がぱっと思いつくのではないでしょうか。

 

しかしこの方法の場合、3人が足並みをそろえて売買契約などを行わなければいけません。なぜなら、不動産の名義が3人のものとなっている(3人が所有者となっている)からです。

 

実際に買主が見つかったら、物件を引き渡す「決済」の手続きも3人全員で出席し、代金についても、買主からそれぞれ受け取るという形を取らなくてはいけません。上記の方法では、とにかく3人で動かなくてはいけないのです。

 

一応、不動産の名義を3人のものにしても、そのうちの1人を代表相続人にして、残りの2人から委任されて売却を行うという方法ができないわけではありません。ただ、少なくとも決済の場においては、立ち会う司法書士は登記名義人3人に売却の意思確認をしなくてはいけません。代表相続人ではない相続人2人から直接それぞれの委任状をいただく必要があるため、3人全員の協力が必須になることは変わらないのです。

 

内々で相続人1人を代表相続人に選んでも、登記名義人が3人であれば、法的にはその3人が所有者であり売主です。3人が足並みをそろえて行わなくてはならず、3人のうち誰かが遠方に住んでいたり、仕事の都合で時間が取れなかったりなどすれば、不具合が生じてしまいます。

 

これを解決するために、我々プロは次のようなご提案をします。

 

いったん不動産の名義を代表相続人1人の名義に変更し、売却してお金に換えたあと、代表相続人からほかの相続人へとそのお金を分配します。この方法を「換価分割」といいます。

 

換価分割は、代表相続人が完全に1人でできる方法です。登記の名義は代表相続人1人の名義になっていますから、登記簿上の所有者も代表相続人1人だけです。1人で売買契約ができ、引き渡しのときもその人だけが行けばいいことになりますし、引き渡しに立ち会う司法書士もほかの相続人の意思確認はしません。

 

相続人1人が“完全なる代表相続人”になって手続きを完了させられるのです。

 

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<素人の遺産分割>

相続人全員の共有名義にしてから売却して、持分割合に応じて売却代金を按分する

⇒売買契約や決済などは、原則として全員で行わなければならない

 

<プロの遺産分割テクニック>

不動産の名義をいったん代表相続人名義に変更し、売却換価したあとに代表相続人からほかの相続人へ相続分を金銭で分配する(換価分割)

⇒売買契約や決済などはすべて代表相続人が単独でできる

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