中国共産党の目標は人民元の基軸通貨化
もうひとつ、IMFの基準からいうと、中国は資本や金融の自由化をほとんど進めていません。しかしながら、中国の貿易量は現実に大きく増えています。国際貿易シェアが大きいならば、それだけ中国の世界経済での重みも増す。中国経済の安定に関わる資本や金融の自由化はこれからの努力目標でいいだろうと、譲歩したのです。
名目上はSDRの一角を占める通貨ですから、いちおう国際通貨に見えなくもない。けれども実質的に国際決済通貨としては、シェアは低いままで、ロシアやイランなど反米国家が人民元建て貿易決済を積極的に受け入れている程度です。
■中共は人民元を基軸通貨にしたい
何事もドル建てで取引するから、ドルが圧倒的に強いことは先に触れました。中国はあわよくばドルに成り代わって人民元が基軸通貨になることを、当然狙っています。SDRの一角を占めるのは、そこに至るためのいわばステップです。実態は伴っていないにしても、中国共産党の目標は人民元の基軸通貨化にあります。
なぜかというと、基軸通貨にさえなれば人民元を刷るだけで石油も手に入る、金も買える。穀物もことごとく買えます。自分がお金を発行したら、すぐほしいものが買える。こんないいことはありません。
それからもうひとつの理由は、あらゆるハイテクが手に入ることです。ハイテクを獲得するには、株式市場でのM&A(企業の合併・買収)が手っ取り早いのですが、それは国際的にはドル金融の世界で行われます。
石油も新しい武器や技術もドルさえあれば手に入ります。覇権を握るために中国も真似したいのは当然です。
人民元基軸通貨化にはまだ全然届きません。ただ戦略的目標として基軸通貨ドル、覇権通貨ドルの一角を崩すことはずっと狙っているのです。
田村 秀男
産経新聞特別記者、編集委員兼論説委員
↓コチラも読まれています
ハーバード大学が運用で大成功!「オルタナティブ投資」は何が凄いのか
富裕層向け「J-ARC」新築RC造マンションが高い資産価値を維持する理由