(※写真はイメージです/PIXTA)

中国の強みはドルがどんどん手に入る、流入する仕組みを持っていることです。対する弱みは、ドルが入らなくなったらどうするのだという点です。そこに中国の致命的かつ構造的な弱点があるのです。日本経済の分岐点に幾度も立ち会った経済記者が著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

中国の致命的かつ構造的な弱点とは?

■中国はドル依存経済

 

何度も言ってきましたが、中国経済はドル金融で成り立っている世界です。ドルが入らなければどうしようもない。金融がいかに大事かというと、結局お金、つまり基軸通貨のドルさえあればいろいろなことができるからです。その代表例がエネルギー資源、食料の調達で、経済安全保障そのものです。

 

とくに現代はグローバル経済ですから、投資も貿易もすべてドルで動きます。そのため中国の強みはドルがどんどん手に入る、流入する仕組みを持っていることです。対する弱みは、ドルが入らなくなったらどうするのだという点です。そこに中国の致命的かつ構造的な弱点があるのです。

 

そのため、習政権は弱点をなんとかカバーしようとして、西側の企業ばかりでなく投資家を引きつけようと手を打っていることは先に述べた通りです。

 

中国は人民元を、外国為替市場で他国通貨と自由な交換が可能な通貨(=ハードカレンシー)にすることを目指していますが、実質的にはそんな代物ではありません。人民元はソフトカレンシー(流動性がほとんどなく、他国の通貨と自由に交換できない通貨)であり、中国経済は依然としてドルに依存しているのです。

 

一方、IMFにSDRというものがあり、これの構成通貨に人民元は含まれています。

 

SDRとはIMF加盟国が持つ「特別引出権」のことです。IMFへの出資比率に応じて加盟国に割り当てる一種の仮想通貨で、通貨危機等で外貨不足に陥った加盟国は、割り当てられたSDRと引き換えに他の加盟国からドルなどの外貨を受け取ることができます。

 

SDRの構成通貨をバスケット通貨といいます。バスケット通貨であるアメリカドル、ユーロ、円、ポンド、人民元をミックスして、1SDR=何ドル=何ユーロ=何円=何ポンド=何元とレートを算出します。もともとSDRのバスケット通貨を構成していたのがアメリカドルとユーロ、円とポンドでした。これに割り込んだのが人民元です。

 

2016年秋、「我々の人民元も立派な国際通貨だ」と中国が主張して、IMFの親中派ラガルド専務理事(現・欧州中央銀行総裁)が、「まあ、いいでしょ」と受け入れてしまった。ラガルド氏は専務理事になる前に、「IMF本部をワシントンから北京に移してもよい」と表明したほどのトンデモ親中派なのです。

 

その結果、人民元はSDRのバスケット通貨の一角を占めて、順位はアメリカドル、ユーロ、それから人民元、円、ポンドなのです。円はナンバー3からナンバー4に下ろされてしまいました。当時私は、日本の財務省はIMFに巨額のお金を出しているのに何をやってるのだ、と批判したのですが、財務官僚は事なかれ主義でした。

 

IMFはいわば国際金融資本の元締めのようなところです。そして、国際金融資本は皆中国のお蔭(中国に投資したり、融資したり)で儲かっているわけです。それで目をつぶって中国に譲歩したのです。

 

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本連載は田村秀男氏の著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)の一部を抜粋し、再編集したものです。

「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由

「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由

田村 秀男

ワニブックスPLUS新書

給料が増えないのも、「安いニッポン」に成り下がったのも、すべて経済成長を軽視したことが原因です。 物価が上がらない、そして給料も上がらないことにすっかり慣れきってしまった日本人。ところが、世界中の指導者が第一の…

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