(※写真はイメージです/PIXTA)

バイデン政権が本格的な対中金融制裁に踏み切れば国際金融市場は大揺れに揺れるでしょう。しかし、それ以上に中国経済は一挙に崩壊の危機に見舞われ、習政権、共産党独裁体制そのものが根底から揺らぎます。日本経済の分岐点に幾度も立ち会った経済記者が著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

中国企業のIPOが大きな外貨調達手段

■中国の外貨と負債

 

中国は、世界最大の外貨準備を保有しているのには違いないのですが、実際は外貨不足に悩んでいます。外貨に絶えず飢えていて、辺り構わず、外貨という食べ物をひたすら吞のみ込んで膨張し続ける怪物のようです。外貨こそは人民元金融の原資で経済成長を支えると同時に、対外投資や軍拡、ハイテク取得の軍資金でもあります。

 

改革開放路線の開始以来、中国は外国企業の対中直接投資、貿易黒字が外貨獲得の主力になりましたが、いまはそれに加えて外国からの証券投資、アメリカや香港市場での中国企業のIPO(新規公開株)が大きな外貨調達手段になっています。

 

最近では中国の外貨準備は多少増えていますが、それは主に外国からの対中証券投資など対外金融負債の増加によるものです。習政権の締めつけにも拘わらず、中国からの資本逃避は年間で2000億~3000億ドルにも及ぶうえ、中国企業の対外進出に伴う外貨資金需要も旺盛なのです。

 

そこでますます重要な役割を果たすのが国際金融センター・香港です。外国人投資家による対中株式投資や中国国債投資が香港経由で行われます。加えて中国は2020年、上海に米欧日の証券会社の出資比率5割超を認め、外国からの証券投資を加速させようと躍起になっています。

 

外国からの直接投資や証券投資は借り入れと同じく、中国の負債になります。その負債で得られた外貨は中国人民銀行が買い入れることで外貨準備に組み入れられるので、外貨準備が増えるのです。しかし、負債は外貨準備をはるかに上回るので、巨大に見える外貨準備も実は借金で成り立っています。

 

つまり、習近平政権の金融パワーとは外貨債務によって成り立っているのです。だから、一帯一路プロジェクトでなりふり構わず、東南アジアなどから契約上貸し付けたことになっている外貨をサラ金ばりに取り立てるのです。

 

話はそれますが「借金は悪い。国の借金が増えているから大変だ」と書くマスコミ、とくに私の古巣の『日経新聞』などは、経済学を勉強したことがあるのかと思ってしまいます。それから金融市場についても理解しているのかと疑わざるを得ません。

 

市場経済では政府であろうと民間であろうと、だれかの借金はだれかの資産になります。民間企業の借金減らしに加えて政府が緊縮財政で借金返済に努めると、国民全体の資産が減る。つまり国民は貧しくなる。余ったお金は海外に流れる。主な借り手は国際金融市場のニューヨーク、香港などで、アメリカや中国の経済成長を支えることになります。

 

金融市場とは債務市場のことですが、証券などの金融債務が増えるからこそ金融資産も増える。

 

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本連載は田村秀男氏の著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)の一部を抜粋し、再編集したものです。

「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由

「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由

田村 秀男

ワニブックスPLUS新書

給料が増えないのも、「安いニッポン」に成り下がったのも、すべて経済成長を軽視したことが原因です。 物価が上がらない、そして給料も上がらないことにすっかり慣れきってしまった日本人。ところが、世界中の指導者が第一の…

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