支持率低迷のゼレンスキー…「元コメディアン」を大統領に選んだウクライナ国民の後悔

支持率低迷のゼレンスキー…「元コメディアン」を大統領に選んだウクライナ国民の後悔

2015年、ドラマで大統領役を演じて人気を博した当時コメディアンのゼレンスキーは、勢いそのままに2019年の大統領選に出馬し当選。当時の支持率は73%を超える人気でした。その後、さまざまな問題で支持率を失ったゼレンスキー。大統領となった彼にいったいなにがあったのか、彼を大統領に選んだウクライナ国民の心境とは……元外交官で作家の佐藤優氏が解説します。

ドラマが上書きした現実は「大統領」だけではない

なおウクライナ戦争が始まって以降、オレクシー・アレストーヴィッチという大統領府長官顧問が記者会見に毎日出てくる。彼も元コメディアンであり、かつては女装で笑いを取っていた人物だ。

 

アレストーヴィッチはジョージア(旧称・グルジア)生まれのウクライナ人で、キーウ国立大学を卒業し、俳優になった。またカトリックの高等教育機関で神学を学んだ。その後、ウクライナ軍の諜報部門で勤務した。ゼレンスキーの側近のほとんどが、ドラマ「国民の僕」に出てきたスタッフによって固められている。

 

なお22年5月から、Netflixで日本語字幕つきのドラマ「国民の僕」が配信されている。興味がある読者は観賞してみるといいだろう(特に第3シリーズ)。

ヨーロッパ最貧、政治は腐敗…改革を求めたウクライナ

1991年12月にソビエト連邦が崩壊した当時、ルーブル(ソ連の基軸通貨)は紙切れ同然になり、92年にロシアでは2500%というハイパーインフレになって経済は崩壊した。ウクライナは新通貨を導入したが、93年のインフレ率は4700%になった。ロシア経済もウクライナ経済も破滅的な状況に陥り、ポスト冷戦の時代がスタートした。

 

ところがその後、ロシアとウクライナの経済格差は大きく広がる。ロシアの一人当たり名目GDP(国内総生産)は、1万1273ドル(146万4000円)だ(2021年、JETRO=日本貿易振興機構の公開情報による)。それに対して、ウクライナの一人当たり名目GDPは3726ドル(48万4200円)でしかない(20年、世界銀行)。

 

ウクライナの人口は4159万人(21年、クリミアを除く/外務省 基礎データ)だが、ロシアには1億4617万人(21年、JETRO基礎統計。ロシア連邦国家統計局による)もの人口がいる強みもある。

 

ヨーロッパにおける最貧国グループに属するウクライナでは、トップによる腐敗と汚職が蔓延してきた。政権が替わるたび政治も経済もガタガタし、国家体制をまともに構築できない。

 

「チョコレート王であり、ガラス王であり、造船王でもあるポロシェンコは、私腹を肥やすばかりで国民のための政治をやろうとしない。民衆の声を反映する政治を実現するべきだ」

 

ゼレンスキーは本気でそう思ったからこそ、大統領選挙に出馬した。

 

ポロシェンコ政権が存続する限り、ウクライナの問題が何ひとつ解決しないことは明らかだった。平和と経済復興を願う民衆の望みによって、ゼレンスキー大統領は必然的に誕生したのだ。問題は彼が手がけたその後の政治だった。

 

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※本記事は、佐藤優氏の著書『プーチンの野望』(潮新書)から一部を抜粋し、GGO編集部にて再編集したものです。

プーチンの野望

プーチンの野望

佐藤 優

潮出版社

ロシアとウクライナの歴史、宗教、地政学、さらには外務官僚時代、若き日のプーチンに出会った著者だからこそ論及できるプーチンの内在的論理から、ウクライナ戦争勃発の理由を読み解き、停戦への道筋を示す。 〈戦争の興奮…

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