自爆型ドローンでロシアを煽ったウクライナの責任
民主的な制度がまだ十分でないウクライナでは、テレビの影響がとても強い。なにしろゼレンスキーは元コメディアンだから、ユーモアのセンスもあるし、どのようにパフォーマンスすれば自分がより画面映えするか熟知している。未来の理想像を、ビジュアルな形で国民に示す彼の戦略は当たった。
「この人が大統領になれば、国が一挙に変わる」
7割以上の国民が本気でそう信じた。
ところが、あっという間にゼレンスキーの支持率は40%まで下がる。戦争が始まったときには、20%台にまで支持率はガタ落ちしていた。
親ロシア派武装勢力は、ウクライナ東部のドネツク州やルハンスク州を実効支配し続けている。ミンスク合意は破綻したまま、ロシアとの和平はいっこうに実現しない。
2021年10月には、ゼレンスキーが海外のタックスヘイブン(租税回避地)に資産を隠していた事実が明らかになった。「これではポロシェンコ大統領の時代と、政権の腐敗は変わらないではないか」「政権が腐敗したままなのだから、道理で国内経済なんて改善しないわけだ」。国民はソッポを向き、ゼレンスキーの支持率はみるみるうちに落ちていった。
危機感に駆られたゼレンスキー政権は、21年10月以降ナショナリズムに訴えて国をまとめようとし始める。ドネツク州やルハンスク州、クリミアから親ロシア派武装勢力を追い出し、ウクライナの実効支配を貫徹しようと考えたのだ。
21年10月、ウクライナ軍は自爆型ドローン(無人攻撃機)「バイラクタルTB2」を使って親ロシア派武装勢力への攻撃を開始した。この行為はロシアを非常に強く刺激した。
自爆型ドローンによる攻撃が、軍部だけをピンポイントで傷つけるとは限らない。ドローンの攻撃によって、無辜の民間人が巻きこまれて犠牲になる可能性がある。ウクライナが自爆型ドローンを使用したことが明らかになると、ヨーロッパ諸国が非難声明を出した。