他院 挙筋短縮・前転法後や埋没法術後の医原的眼瞼下垂の治療 症例
症例:39歳女性
他院手術歴:26歳時に某有名医院にて二重埋没法のカウンセリングを受けた後、勝手に全切開と筋膜切除をされてしまい、その後不自然な瞼の形状と開閉眼障害を治すため26歳~43歳の間に計11回切開した。脂肪注入や筋膜移植、不溶性フィラー注入等を試みれば試みる程、悪化の一途を辿った。
当院治療法:特殊施術計8回(この期間中に他院で余剰皮膚切除1回)その後当院オリジナル新挙筋法2針4点固定法(左右で異なる挙筋度)
治療合併症:内出血・炎症(発赤・熱感・腫脹)・線維化等、ごく稀に糸露出・感染・後戻り・麻酔アレルギー等
Dr.コメント:
この方は形成専門医が院長の関西ローカル医院で、当初埋没法を希望したにも拘らず御本人に無断で頼んでもない切開や筋膜等の組織切除をされたと仰っています。その後遺障害により26歳から43歳の治療終了迄の約17年間、自殺もよぎり人生を棒に振ったとも訴えていらっしゃいます。
当院を受診された或る患者さんは過去に自殺未遂を繰り返し、別の患者さんは脳神経外科、神経内科、精神科をたらいまわしにされた挙句に、疾患だと認知されず結局「あなたの気のせいだ」と言われ、安定剤を処方されただけで終診とされました。多くの方が開閉眼障害やドライアイを併発しています。
患者様たちは不用意な医師のせいで路頭に迷い、地獄めぐりをしています。再切開せずに合併症を治せないのなら片手落ちです。交通事故なら加害者にも受傷機会がありますが、医療過誤では常に被害者は一方的に患者側のみとなってしまいます。
上眼瞼や眉周囲、前額を全切開する手術は、患者の自然な表情や目つきを奪い、ある意味大げさに言うと患者様の社会性を抹殺してしまうような恐ろしい手術なのです。先日も当院にハリウッド俳優さんが御来院されました。曰く、「役者は目でも演技するが、切開瘢痕のせいで自然な表情ができなくなった」と。
【非切開式次世代治療法に基づいた厳格な眼瞼下垂診断新基準と適応分類】
殆どの眼瞼下垂を対象に、全切開を併用せずに治せる技術と15年の実績が当院には既に存在しています。眼瞼下垂に対する認識が進歩し、なおかつ新技術により適応対象が大きく変わったため、先ず当院で眼瞼下垂そのものを再定義しました。医療技術のパラダイムシフトにより治療法からみた分類の方が個別症例毎の適切なマッチング適応新基準になると考えられるからです。
眼瞼下垂は大きく分類して(新分類法)
1.真性眼瞼下垂(神経や挙筋の麻痺、外傷等による挙筋腱膜の断裂等が原因のもの)
2.仮性眼瞼下垂(挙筋腱膜の弛緩や上眼瞼脂肪過多または上眼瞼陥凹症、上眼瞼・前額のタルミや皮膚の肥厚、蒙古ヒダの牽引等が原因のもの)
にそれぞれ(新基準で)再分類することができます。…もっとシンプルに言えば、ご自身で(鏡の前で)簡易診断が可能です。眉を使わず眼瞼挙筋のみの力で
「瞬(まばた)きができなければ真性の疑い」=本来の保険診療対象(切らずに治せることもあります)
「瞬(まばた)きができていれば全て仮性」=全切開は一切不要です。
つまり、眼瞼挙筋(瞬きをする際に瞼を挙上する筋肉)以外の表情筋(眼輪筋を含む目の周囲の筋肉群)を使わずに瞬きができているのなら、全て仮性(全切開せずに治せる)眼瞼下垂です。挙筋とその運動を司る神経が麻痺または不可逆的な器質変容を起こしていないということですから、決して全切開や挙筋または腱膜まで展開する(不可逆ダメージを与える)手術はすべきではありません!
次世代の非切開式眼瞼下垂治療法
皆さん、ここで一度考えてみて下さい。もしも技術が進歩して全切開せずにその必要な分の縫合だけができれば、不可逆的で重篤な全切開のリスクを背負わずに眼瞼下垂が治療できる筈ですね? 非切開式次世代の眼瞼下垂治療法の症例や詳細、既に全切開された場合のメスを用いない瘢痕治療について、本連載で申し上げていきたいと思います。
九野 広夫
医療法人美来会 理事長