「やらせ」を指摘された際のプーチンの反応とは…?
プーチンは、環境保護に強い関心をもっている。ゲッセンの著書から引用を続ける。
〈「結構だ。それでは我々は話し合える。私は子猫や子犬、小さな動物が好きだ」と彼は微笑んだ。彼は絶滅危惧種のための彼の公共的努力が重大な問題に対する注意を惹くことに役立ったと感じ、「だから、私はシベリア鶴のプロジェクトを考え出したのだ」と言った。
これは私にとってニュースだった。シベリア鶴の個体数を回復するプロジェクトは、1970年代後期に遡る。私は彼にこの考えの提唱者が自分であると主張することによって、彼が何を狙っていたのかを明らかにするよう彼に求めた。
プーチンは数年前にこの計画について聞き、この計画に運転資金がないことを知り、この計画に再び支援資金をつけるのが彼の考えだった。
※ マーシャ・ゲッセン/松宮克昌訳『そいつを黙らせろ──プーチンの極秘指令』柏書房、2013年
ゲッセンはプーチンに強烈な質問を浴びせる。それまでプーチンが自然保護プロジェクトにおいてやらせを行ってきたことを、直接ぶつけたのだ。
〈「(略)大統領がシベリア虎に衛星送信機の首輪をつけたとき、その虎がハバロフスク動物園から実際に借りてきたものだったことを、おそらく大統領はお気づきのことと思います。大統領が北極グマに送信機をつけたときも、そのクマは事前に捕獲され、大統領が到着されるまで鎮静剤を打たれた状態にされていたのです」と私は言った。
プーチンは「言うまでもなく、やり過ぎの事実があったな」とむしろ陽気な調子で、私の指摘をさえぎり、「私はその仕事をさせるために人を連れて行ったのだ。とはいえ、私にはこの問題に注意を惹かせることがはるかに重要だったのだ! 確かに、雪ヒョウが鎮静剤を打たれていたな」と彼は言った(私は雪ヒョウについては言及しなかったのだが)。
「しかし大事なことは、雪ヒョウ・プロジェクト全体を考え出したのは私だったということだ。虎もだ。私がそれを考え出したあとに、虎が生息する20ヵ国がこの問題に取り組み始めた。言うまでもなく、行き過ぎもあったことは確かだな」と彼は繰り返した〉※
※ マーシャ・ゲッセン/松宮克昌訳『そいつを黙らせろ──プーチンの極秘指令』柏書房、2013年
このように、プーチンのほうから自分に不利な事実を語る。これは独裁者の心性を考える上で非常に興味深い。プーチンはさらに言葉を重ねる。
〈「あのときのように、私が古代ローマの両手付きブドウ酒の壺を潜水して持ってきたようにね」
私はプーチンが、古代ローマの両手付きのブドウ酒の壺を二つ抱えて黒海の海底から現れ、カメラに向かってポーズを取った一年前のあのことのあとに、すぐに判明してしまったような、彼が海底で見つけるように用意されていた両手付きのブドウ酒の壺を発見するやらせの類似例を引き合いに出すことなど信じられなかった。
「誰もが両手付きのブドウ酒の壺が用意されていたことを書き始めた。もちろん、それらはこっそりと持ち込まれていたものだよ! 私が海に潜ったのは自分の力を大きく見せつけるためでなかった。そのようなことは、海の中の一部の生物がライバルを威嚇するために自分を大きく見せることと同じさ。あの場所の歴史に注意を惹かせようとして潜ったのだ。あれから誰も彼も、私が脳なしのクソ野郎のように両手付きブドウ酒の壺を持って海中から現れたと書き始めた。ところが一部の人は、実際に歴史の本を読み始めたのだ」(傍点、著者)
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