中国が推進する巨大経済圏構想「一帯一路」。世界各地への中国の進出は地域の経済発展の可能性が高まる一方で、さまざまな懸念やトラブルも起きています。日本経済の分岐点に幾度も立ち会った経済記者が著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

「一帯一路」は他国を侵略する手段?

■一帯一路の実像

 

一帯一路は、習近平が2013年に提唱した経済圏構想です。中国と中央アジア、ヨーロッパを結ぶ「シルクロード経済帯(一帯)」と、中国と東南アジア、インド、アラビア半島、アフリカを結ぶ「二一世紀海上シルクロード(一路)」の地域で、中国が現地の国と連携してインフラ整備や貿易関係を促進しようとするものです。

 

中国がここで展開しているのは以下のようなことです。

 

まず必ず、中国の金融機関を参画させます。加えて中国の国有中央企業が中国人労働者を数多く連れて現地に入り、インフラ整備(鉄道や高速道路、港湾や通信設備)や資源開発、エネルギー網整備や科学技術開発など、いろいろな投資をします。その際の給料はほとんどが中国人に支払われるので、すべて人民元です。人民元で完結するようにしているのです。

 

一方で現地、とくにパキスタンやミャンマーなど経済的に弱い国に関しては、「これは融資だ」ということで、ドルで返済しなさいと迫ります。つまり輸出行為、ドル建てで輸出しているようなものです。相手国にはドル債務が残ります。それで金利を、しかも4%といった法外な金利をつけています。

 

相手は経済弱小国ですから、返済に窮します。すると「返せねえだろ。返せないのなら、この港湾は99年間、我々に好き勝手に使わせろ」という具合に“侵略”していくのです。

 

有名なのが、スリランカのハンバントタ港の運営権を中国に譲渡した事例です。中国から融資を受けたスリランカは、国内にハンバントタという大規模港湾を建設しましたが、借入金の返済に行き詰まり、中国企業に同港運営権を99年間引き渡すことになりました。

 

まさに重商主義と帝国主義が一体になったような話です。帝国主義を批判するマルクス・レーニン主義の流れを汲むはずの中国が帝国主義を実践するのは矛盾していますが、実利優先の習政権は平気のようです。

 

日本の場合、こういうことは経済援助や経済協力とされ、円借款で例えば10年間返済不要で20年で返済してくれればいいという感じです。それでいて金利はゼロ・コンマ数%と抑えます。日中では経済協力の質がまったく違うのです。

 

「こんなぼったくりみたいな中国と組む国なんてあるわけがない」と思われがちですが、東南アジアやさまざまな途上国のリーダーにとってみると、中国と組めばすぐ橋が出来ます、道路が出来ます。これが嬉しくて仕方ないわけです。

 

借金はあとで返せばよい。インフラ――橋が、港が、空港が、鉄道が出来る。出来てさえしまえば、使用料や税金も入る、経済も好転する、中国からの融資はそれで返せる……と思ってしまうのです。

 

でも実際は返せない。加えて大体の工事が杜撰なので、よく橋が崩落したり、工事がいっこうに進捗しなかったり……こんなことを中国は平気でやるわけです。

 

「いい加減に中国共産党のやることに関しては、みんな、目覚めなさい」と声を大にして言いたいところですが、背に腹は代えられないのでしょうか。

 

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    本連載は田村秀男氏の著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)の一部を抜粋し、再編集したものです。

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