コロナワクチンの偽情報を信じる日本人
■日本における新型コロナワクチンに関する偽情報
日本においても、ワクチンの有効性を否定し、副反応ばかりを強調し、不安を煽るソーシャルメディアやネット上の偽情報が拡散されている。私のSNSにも様々なワクチンに関する偽情報(以下、ワクチン陰謀論)が送付されてくるが、送付者のほとんどは米大統領選挙の偽情報を信じて疑わないトランプ支持者(Jアノン)である。
つまり、多くのJアノンはワクチン陰謀論も信じる人たちである。これらの偽情報を信じる人たちの共通点はファクトチェックをしないことだ。
以下は、認定NPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)」のファクトチェックの一例だ(https://fij.info/coronavirus-feature)。
・情報①:ワクチンの中身はマイクロチップ(洗脳)、放射性同位体(体内被ばく)、組み換え遺伝子配列(ミュータント化)、塩化カリウム(安楽死用の劇薬)、DHMO(Dihydrogen Monoxide、爆発物)であり危険だ。
情報①に対するファクトチェック:ワクチンにはマイクロチップや放射性物質は含まれていない。DHMOはもともと、ワクチンに関するデマを揶揄する人々がインターネット上で拡散したジョークで水のことであり、(中略)塩化カリウムは含まれているが、それによって健康に影響が出るとは考えにくい。
・情報②:「ワクチン接種者が周囲に病気を撒き散らす」とファイザー社の治験文書にはっきり書いてある。
情報②に対するファクトチェック:明らかに誤った情報。ファイザー社の治験文書にはこのような記載は一切ない。
・情報③:ワクチンが卵巣に蓄積、不妊の原因になる。ファイザー社の公式サイトに不妊症を引き起こす可能性があると記されている。
情報③に対するファクトチェック:ワクチンが卵巣そのものはもとより、妊娠に影響するという報告はない。ファイザー社の公式サイトでは、ネット上に広がっている同様の情報を否定している。不妊や流産などに直接影響がないことは、臨床試験や10万人を超える妊婦への接種後の追跡調査から明らかになっている。
・情報④:武田邦彦元中部大学特任教授が英国における接種レポートをもとに、「日本の高校生全員にワクチンを打ったら、50人が死亡か半身不随などの副作用に見舞われる」と発言した。
情報④に対するファクトチェック:武田氏が紹介した英国における接種レポートには、コロナワクチンに直接関連する死亡例やそのような重篤な副反応は報告されていない。
以上は偽情報のほんの一部だが、多数の偽情報がインターネット上に流布されている。
これらの偽情報を信じてワクチン接種をしない人たちが増え、ワクチン接種率が向上せず、新型コロナの感染拡大が止まらない国々も出てきた。その典型例が米国であり、ワクチン接種を完了した比率は2021年12月9日時点で米国60%であり、中国77・9%、日本77・6%、英国69%に比して低い。米国の接種率の低さは宗教・人種・思想(ワクチン接種は個人の自由であり、強制されるべきではない)など様々な理由があるが、偽情報に影響されている人たちが多いのも大きな要因である。
偽情報を信じて頑固にワクチン接種をせず、新型コロナに罹患して死んでいく人たちが多いのは事実であり、ワクチン偽情報の影響は大きいと言わざるを得ない。
渡部 悦和
前・富士通システム統合研究所安全保障研究所長
元ハーバード大学アジアセンター・シニアフェロー
元陸上自衛隊東部方面総監
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