中国の超限戦に対して全領域戦で勝利せよ
■「超限戦の中国」に「専守防衛の日本」は勝てるか
国際政治において、大国関係は基本的にゼロサムゲームである。一方が勝てば、他方が負けるという厳しい現実がある。日本人独特のガラパゴス的な発想を捨て、軍事や安全保障の要素をつねに取り入れた国際標準の発想をしないと、憲法前文に記述されている〈国際社会における名誉ある地位〉は確保できない。
日本と中国は、戦いにおける考え方で180度違う国家である。中国の超限戦では、任務達成のための手段には制約はない。人命や基本的人権への配慮、国際法などの法の順守、噓をつかない、相手を騙さないなどの制約もない。
一方、日本は民主主義国家、法治国家として、普遍的価値(自由、民主主義、基本的人権、法の支配、市場経済など)を大切にする。さらに、先の大戦の敗戦を契機として成立した日本国憲法の極端な平和主義、軍事に対する嫌悪感は、日本の政治・経済・外交・安全保障・アカデミア・マスメディア・法曹界などあらゆる分野にネガティブな影響を与え、我が国の安全保障論議をきわめて歪なものにしている。
つまり、グローバルスタンダードの安全保障論議ができない状況だ。
例えば、自衛隊違憲論、専守防衛、宇宙の平和利用、相手に脅威を与えない防衛力、防衛費GDP1%以内枠など、日本の防衛を阻害するタブーがたくさん存在する。超限戦は、この弱点を巧みに突いてくる。
中国はあらゆる制約を超越し、自由に戦うことができるのに対して、我が国は異常なほど多くの制約やタブーで身動きが取れない状況で戦わなければいけない。これでは最初から勝負にならない。
中国のような目的のためには手段を選ばない超限思想に基づき、統一戦線工作を仕掛ける国家にとって、日本は鴨がネギを背負った状態の“鴨ネギ”国家という表現がぴったりだ。手強い国に対して、日本はあまりにも無防備だ。
愚かなことに我が国は非常に多くの安全保障上の制約やタブーを、自ら設けている。日本人はその愚かさにもっと危機感をもたなければいけない。そして、鴨ネギ状態から脱却しなければならない。
我々がいまは平和なときだと思っていても、中国などが仕掛ける「目にみえない戦い」は進行している。このままでは、目にみえない戦いに気づかないまま敗北してしまう可能性がある。