(※写真はイメージです/PIXTA)

いつ収束するのかみえない新型コロナの“第7波”。かつてないスピードでの感染拡大に伴って、医療体制がひっ迫しています。政府は“第6波”までとは異なり「行動制限は必要ない」というスタンスを崩しません。ジャーナリストの岡田豊氏が著書『自考 あなたの人生を取り戻す不可能を可能にする日本人の最後の切り札』(プレジデント社、2022年2月刊)で1年前のケースを解説します。

なぜ国民の不安に答えようとしないのか

■オリ・パラ開催、国民への説明を尽くさない日本の首相のレベル

 

パンデミックの中、緊急事態宣言下で、東京オリンピック・パラリンピックが開催されました。開催の是非をめぐり、「中止・延期」と答えた世論調査の割合が一時、約8割あったメディアもありました。その後、開催賛成の比率も増え、賛否両論の中の開催となりました。

 

政府のコロナ対応は、その場しのぎ的な印象がありました。未曽有の危機ですから、完璧な対応を政府に求めるのはなかなか難しい面もあります。

 

失敗があれば、正直に、誠実に見直し、少しずつ前に進めばいいのだと思います。でも、菅政権はオリ・パラ開催について国民に十分な説明責任を事前に果たしませんでした。

 

不誠実だと私は評価します。反対論も根強かったオリンピック・パラリンピックをなぜ開催するのか、開催したいのか。具体的な根拠を示しませんでした。シンプルな質問に正面から答えず、はぐらかした印象も残りました。それは「緊急事態宣言をなぜそのタイミングで出すのか」という問いかけに対し、科学的で具体的な根拠を示さなかったケースと似ていました。民主社会の手続きを軽視したと言わざるを得ません。国民軽視です。

 

感染拡大の中のオリ・パラ開催は、国民に説明しにくいダブルスタンダードだと多くの人に受け止められました。感染防止をめぐり真逆の基準が同時に存在するからです。だからこそ、政府はきちんと説明しなければならなかったのです。国民への説明責任を事前に怠った菅政権の姿を私は覚えておこうと思います。

 

私たち国民は考えなければいけません。政府や政治は私たち国民とともにあるべきです。反対・賛成。意見が分かれても、政府や政治は説明を尽くしながら進めなければなりません。説明せず、不誠実に突き進む国家の行きつく先がどんな無残な結果になるのか。私たちはそれを経験しています。だからこそ、政府に関わる人たち全員、そして、私たち国民一人ひとりが自考しなければならないのです。

 

東京都の新規感染者は8月5日に5000人を初めて上回り、全国で1万5000人を超えました。国民の不安は高まっていました。東京オリンピックの閉会式の2日前の8月6日、原爆の日。広島で平和記念式典に出席した菅首相は会見で、感染者の急増と東京オリンピック開催の関連を問われ、次のように答えました。

 

「交通規制やテレワーク、さらには国民のみなさんのご協力によって、東京の繁華街の人流はオリンピック開幕前と比べて増えておらず、これまでのところ、オリンピックが感染拡大につながってるという考え方はしておりません」

 

しかし、この2日前の8月4日、衆院厚生労働委員会の閉会中審査で、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は首相と異なる見解を示しました。野党議員から感染拡大と東京オリンピックとの関係を問われると尾身会長は「オリンピックをやるということが人々の意識に与えた影響というのはあるんではないかというのは我々専門家の考え方であります」と答えました。

 

次ページ「東京オリ・パラ開催」と「人の命」

本連載は、岡田豊氏の著書『自考 あなたの人生を取り戻す不可能を可能にする日本人の最後の切り札』(プレジデント社、2022年2月刊)より一部を抜粋し、再編集したものです。

自考

自考

岡田 豊

プレジデント社

アメリカでの勤務を終えて帰国した時、著者は日本は実に息苦しい社会だと気付いたという。人をはかるモノサシ、価値観、基準の数があまりにも少ない。自殺する人があまりにも多い。笑っている人が少ない。他人を妬む。他人を排…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録