(※写真はイメージです/PIXTA)

ビジネスで課題を処理するのに必要な情報を、記憶のデータベースから検索をして見つけ出し、最適な情報を引っ張り出して脳のメモ帳に書きます。その情報を参照しながら目の前の課題を処理することで、スムーズに作業を進めることができるようになります。記憶力日本選手権大会6回の最多優勝者の池田義博氏が著書『世界記憶力選手権グランドマスターの 驚くほど簡単な記憶法』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。

ワーキングメモリの能力を高める2つの方法

ここで、皆さんの学習スタイルを少し思い出してください。誰でも、多かれ少なかれ得意な学習のスタイルというものが存在します。「見る」ことで学習効率が上がるタイプ、「聞く」ほうが理解がしやすいタイプ、また、言葉からの情報よりも絵やイメージで学習することに向いているタイプ、実際に体を動かして体感することで理解を深めるタイプと、人それぞれに習得がしやすい学習タイプが存在します。

 

当然、自分の学習タイプに合った形で勉強を進められれば、それに越したことはありません。一方、現実的には、常にそれぞれの学習タイプに即した形で学習することはほぼ不可能です。しかし、ワーキングメモリの能力を高めることで、この問題も解消できる可能性があるのです。

 

イギリスの高校生を対象にしたある調査において、ワーキングメモリの能力が高い学生は、どんな学習スタイルで行われた授業でも好成績を修めることができるという結果が出たのです。この結果は、ビジネスの場面の処理能力においても直結させられるのではないでしょうか。

 

ただし、このワーキングメモリは、一度に保持しておける記憶の容量はあまり多くありません。心理学的には「マジカルナンバー7」とよび、一度に保持できる情報の数は7個±2個などといわれていました。

 

最近では、もっと少なく5個±2個くらいでないかともいわれています。数字では、最初の3個を抜いた携帯電話の番号くらいといえばわかりやすいでしょうか。トレーニングによって多少は改善できるようですが、そこに注力してもあまり効率はよくありません。ワーキングメモリで鍛えるべき能力は、先程紹介したように、既知の記憶と眼の前の課題の照合能力です。これがビジネスにおいても、課題のスピード処理を可能にします。

 

ワーキングメモリの能力を高める方法は、大きく2つあります。

 

方法の1つは「運動」です。先程、ワーキングメモリが働く場所の1つが脳の前頭葉という話をしました。近年の研究により、この前頭葉の機能を高めるための一番効果的な方法は運動だということがわかってきました。運動といっても、激しいことをする必要はありません。ウオーキング程度でいいのだそうです。

 

ただし、研究の結果から、ゆっくり歩くのではなく、早歩きが効果的とのことです。日課としてウオーキングを取り入れて、通勤などでも積極的に歩く距離を増やせば、体力強化を図りつつ脳も鍛えられて、一石二鳥というわけです。

 

そして、ワーキングメモリの能力を高めるもう1つの方法は、やはり「イメージ」なのです。ワーキングメモリは、脳の中で特に「ACC(前部帯状回)」という部位が活発に働いている人ほど能力が高いということが、大阪大学の苧阪満里子招聘教授の研究によりわかっています。覚えるべき単語を「イメージしてください」と伝えてから絵に描いてもらうという、

 

まさに記憶法そのもののような実験を行ったところ、脳内でACCが活動しているのが見られたということです。ワーキングメモリ能力向上は、ACCの活性化が決め手ということになります。

 

イメージングによって高性能のワーキングメモリを手に入れ、ビジネスの処理速度を倍速にしましょう。

 

池田 義博
記憶力日本選手権大会最多優勝者(6回)
世界記憶力グランドマスター

 

 

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本連載は池田義博氏の著書『世界記憶力選手権グランドマスターの 驚くほど簡単な記憶法』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、再編集したものです。

世界記憶力選手権グランドマスターの驚くほど簡単な記憶法

世界記憶力選手権グランドマスターの驚くほど簡単な記憶法

池田 義博

日本能率協会マネジメントセンター

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