複数の知識を関連付けして体系的に覚える
■記憶能力を最大限に活かすためのライティングメソッド
▶(3)コンセプトマップ
コンセプトマップは、複数の知識を関連付けして体系的に覚えておく必要があるときに威力を発揮するものです。
アメリカの医学生たちを対象にしたある実験において、生理学を学ぶさいにコンセプトマップを使った場合と使わなかった場合とを比較したところ、使用した学生たちの試験の点数が、統計的に有意に増加したという事例が報告されています。
コンセプトマップには2パターンあります。1つは垂直方向につなげていくもの、もう1つは水平方向につなげていくものです。
●コンセプトマップ①垂直方向
垂直方向のパターンの場合は、まず中心となる概念(コンセプト)を置き、そこからその概念の下位になる概念を書き足していくということをします。もちろん、下位の方向に伸ばすのではなく、上位になる概念を上の方向に書き足していっても結構です。
つまり、この垂直方向のコンセプトマップの原理は、「抽象化思考」を図示化したものであるともいえるのです。上に進めば抽象化、下に降りていけば具象化というわけです。
下図に「記憶」をテーマにしたときの垂直方向のコンセプトマップの例を載せています。
●コンセプトマップ②水平方向
もう1つのパターンが水平方向のコンセプトマップです。垂直方向のコンセプトマップは各概念が論理的につながっているのに対し、水平方向のコンセプトマップは論理的につなげてもいいのですが、基本は連想を使って発想を広げていくことに重きを置きます。
水平方向のコンセプトマップも、まずは中心となる概念を設定します。その概念から連想する概念をランダムに周りに記入していきます。書く場所や順番に規則はありません。自由に書いていきます。
下図に「記憶」をテーマにしたときの水平方向のコンセプトマップの例を載せています。
水平方向のコンセプトマップは連想を使うというのがポイントなので、何か思いついたらそこで留まらず、どんどん書き込んでいきましょう。書き足した概念からさらに連想や想像が膨らめば、そこから線でつなげて新しい概念を追加していきます。
すべて書き込み終わったら、全体を見渡します。そこで新たな関連性が見つかれば、その概念同士を線で結んでおきます。その作業が終わったら、各項目の中に共通項を見つけ出していきます。
まず、共通項同士を枠で囲むということをします。囲んだらその集合を表す見出しを付けます。ここまでの作業をすることによって、中心に置いた概念にまつわる自分自身の知識や考え方が整理されるはずです。
頭に入れるべき重要情報に対して、垂直方向・水平方向の2軸の思考ツールを用いてアプローチすることによって、その情報を脳の中で自動的に体系化された記憶に変えることができます。それは、単に強い記憶になっただけではなく、応用が効く、使える記憶に変わったことにもなるのです。