(※写真はイメージです/PIXTA)

ビジネスにおいて高いパフォーマンスを発揮するために必要な能力は集中力です。集中力をキープするための鉄則というものがあります。記憶力日本選手権大会6回の最多優勝者の池田義博氏が著書『世界記憶力選手権グランドマスターの 驚くほど簡単な記憶法』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。

ビジネスに必要な集中力を身に付けるには

1つだけ違うリンゴがあります。見つけることができますか?

 

池田義博著『世界記憶力選手権グランドマスターの 驚くほど簡単な記憶法』(日本能率協会マネジメントセンター)より。
池田義博著『世界記憶力選手権グランドマスターの 驚くほど簡単な記憶法』(日本能率協会マネジメントセンター)より。

 

ビジネスにおいてはもちろんですが、さまざまな場面で高いパフォーマンスを発揮するために必要な能力は集中力です。しかし、この集中力は、何となく能力のニュアンスはわかるのですが、よく考えてみると、具体的にこういう能力だということを定義するのは難しい気がします。

 

ただし、いろいろな捉え方はあるにせよ、共通しているのは「複数の事柄の中から最優先すべき1つの課題に注意を集中し、それに取り組む能力」ということではないでしょうか。当然、ビジネスにおいても必須の能力といえるでしょう。

 

冒頭で、1つだけ違うリンゴを見つけることはできたでしょうか。この問題は、実は「集中力」のアナロジー(類推)です。問題に取り組んだ方は、とりあえずやってみようと着手した、つまり、やる気を出したということです。とりあえず課題を始めることができるか、つまり、やる気が出せるかが問われたのであり、その行動が集中力の入口なのです。

 

まずは着手できなければ、何も始まりません。心理学的には、やる気というものは、いくら待っていても自然にはわいてこないということがわかっています。何はともあれ始めてしまうと、脳の「側坐核」というところが刺激されて、数分後にいつの間にか出ているものがやる気なのです。これを心理学では「作業興奮」といいます。

 

したがって、先程のリンゴをとりあえず探そうとした方は、この作業興奮を実践したということになります。そして、複数の事柄(リンゴ)の中から優先課題(1つだけ違うものを探すこと)に注意を集中して取り組んだこと自体が、集中力の構造を端的に表したものだったというわけです。さすがにビジネスシーンにおいて、この程度の集中レベルでOKというわけにはいきませんが、構造としてはイメージできたのではないでしょうか。

 

そして、いったん課題に着手したあとについてですが、集中力をキープするための鉄則というものがあります。それは、マルチタスクを避けることです。マルチタスクとは、同時に複数の課題をこなすことです。世の中にはマルチタスク信仰のようなものがあって、マルチタスクができる人は能力が高いと考える風潮があります。

 

しかし、これまでの研究から、マルチタスクをすることによって、それぞれのタスクのパフォーマンスは明らかに低下することがわかっています。パフォーマンスが下がれば、アウトプットする成果の質も下がります。このため、課題には優先順位を付けて、「一度に1タスク」というのが鉄則なのです。

 

とはいえ、タスクをこなしているときに何か思い付くことは、当然出てきます。しかしそんなときも、原則は現タスク優先です。思い付いたことはメモに残し、現タスクが終了したあと、残りのタスクを含め、また優先順位を付けて1つずつこなしていくことが、集中力を持続する決め手です。

 

次ページ記憶するために集中力は必須の能力

本連載は池田義博氏の著書『世界記憶力選手権グランドマスターの 驚くほど簡単な記憶法』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、再編集したものです。

世界記憶力選手権グランドマスターの驚くほど簡単な記憶法

世界記憶力選手権グランドマスターの驚くほど簡単な記憶法

池田 義博

日本能率協会マネジメントセンター

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