(※写真はイメージです/PIXTA)

空間認識能力は、「物体同士の空間的な関係を理解し、記憶する能力」です。この能力はクリエーティビティーやイノベーションにおいて主要な役割を果たすことが、最近の研究でも紹介されています。記憶力日本選手権大会6回の最多優勝者の池田義博氏が著書『世界記憶力選手権グランドマスターの 驚くほど簡単な記憶法』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。

仕事の手順を考えるのは「空間認識能力」

■イメージ記憶で作業効率もアップする

 

下段の3つのうち、上段の立体と違うものはどれでしょうか?

 

 

 

イメージングによって、記憶能力をアップさせることができるとお伝えしてきました。それは同時に、頭の中でイメージを操作する能力に長けてくることを示しています。

 

この能力向上は、ビジネスパーソンとして最強の武器を手に入れたことを意味します。その武器の名前は「空間認識能力」といって、「物体同士の空間的な関係を理解し、記憶する能力」です。言葉にすると難しそうですが、人間誰しもが持っている能力です。

 

例えば、子どもの頃よく行った祖父母の家や親戚の家の間取りなどは、時間が経ったあとも、案外すみずみまで思い出せるのではないでしょうか。あるいは、学生時代に住んでいた街の地理なども、今でも頭の中に思い描けるのではないでしょうか。

 

こういった能力も、空間認識能力の1つです。人間がこれまで生き延びられてきたのは、空間(場所)を認識する能力が高かったことが要因の1つにあります。その名残が、今でも脳内にあるというわけです。

 

この空間認識能力を表す特徴は、ほかにもあります。冒頭で述べた頭の中でイメージを操作する能力も、実は空間認識能力の1つなのです。

 

冒頭の問題は、空間認識能力を使って考える問題です。ちなみに、答えはCです。あるべきブロックが1つなくなっています。

 

この問題は、空間認識能力の中でも「メンタルローテーション(心的回転)」とよばれるものです。簡単にいうと、「同じ物体を異なる角度から見た図をイメージする」能力です。空間認識能力は、クリエーティビティー(創造)やイノベーション(変革)において主要な役割を果たしうるということが、最近の研究でも紹介されています。

 

物事の認識や判断・思考、そしてもちろん記憶においても空間認識能力の働きが必要となってくるため、この能力が低い人は判断を誤ることが多かったり、なかなか記憶ができなかったりするのです。

 

また、仕事の手順を考えるときなども、この能力が必要になってきます。個々のタスクを頭の中で並べたり組み替えたりして、最適化した形の全体像を頭の中で把握するといった能力が、まさに空間認識能力なのです。したがって、空間認識が苦手な場合は、要領も悪く仕事も遅いということにつながってしまうのです。

 

東京大学の池谷裕二教授によると、空間認識能力の向上により、論理的に考えることができる「垂直思考」、そして、アイデアを生み出すときに必要な既成の枠にとらわれずに考えることができる「水平思考」の2つを手に入れることができるのだそうです。仕事でロジックツリーやマインドマップなどの思考ツールを利用している人は、ツールの効果が倍増しそうですね。

 

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本連載は池田義博氏の著書『世界記憶力選手権グランドマスターの 驚くほど簡単な記憶法』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、再編集したものです。

世界記憶力選手権グランドマスターの驚くほど簡単な記憶法

世界記憶力選手権グランドマスターの驚くほど簡単な記憶法

池田 義博

日本能率協会マネジメントセンター

在宅勤務など個人単位で働く機会が増え、従来よりも個人の成果に焦点があてられ、成果物の質を決める「思考力」が要求されています。まずは頭の中の知識・情報の量を増やし、これらを有機的に結び付け、価値のあるアイデアを生…

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