効果的な「見る」イメージストリーミング
■理解と記憶を促すイメージストリーミング
人は、言葉や文章をイメージに変換して頭の中に思い浮かべることができます。それには、主に2つのルートがあります。
1つは目から入ってくるルートです。例えば、書籍などの文章を読みながら内容を頭の中でイメージするパターンです。もう1つが耳から入ってくるルートです。音声として入ってきたものを頭の中でイメージするパターンです。皆さんは、どちらが得意でしょうか。
個人的には、耳からの情報のほうがイメージ化しやすい印象があります。特に、目をつぶると、さらに集中できる感覚もあります。
目で見る場合には、当たり前ですが目の前にずっと文章が提示されているので、自分が理解できるまでその情報を見続けることができます。それに対し、音声情報は流れていくものなので、内容を理解しようとすると必然的に集中力が要求されます。それにより、他の感覚を遮断できるので、結果的にイメージ化を容易にするのでしょう。この性質を学習や仕事でも活用しましょう。
振り返って考えると、仕事では想像以上に「人の話を聞く」という状況が多くあります。それは、相手先のプレゼンや会議中のほかの人の発言、業務における上司からの口頭の指示などもあります。できるならば、それらをリアルタイムに記憶に残したいものです。そこで使うのがイメージ化です。
以前、お話しした「エピソード記憶」という記憶の種類を覚えていますか。脳は、言葉による情報や知識の記憶(意味記憶)を苦手としています。それに対し、体験・経験したエピソードは記憶に残りやすいという特徴を持っています。
要するに、話の内容を頭の中でイメージに変え、動画の再生(ストリーミング)のように「見る」イメージストリーミングにより、エピソードとして脳に刻まれることになるのです。情報のイメージ化を日頃から意識して、さらに習慣化しておいてください。意識しないと、イメージ化のスイッチが入らないからです。
そして、イメージしながら、そのとき浮かんだものの中でキーワードがあれば、その都度メモに取っておいてください。
イメージ化が行われているのは、本連載でも何度か出てきた「ワーキングメモリ」の機能によるものです。思考を働かせるためには、ワーキングメモリの働きが非常に重要なのですが、すでに述べたように記憶容量が少ないのです。ワーキングメモリが情報で埋まり尽くしてしまうと、頭の働きを阻害します。それを防ぐために、メモとして外部に思考を取り出すことによって、ワーキングメモリがリフレッシュできるというわけです。
イメージストリーミングによるエピソード記憶化、そして、キーワードのメモを併用することで、思考力と記憶能力の両方の高パフォーマンスを確保できるのです。