ゼロからビジネスアイデアを創出するのは大変ですが、いまあるビジネスを組み合わせたり、見方を変えたりすれば、いろいろな可能性が見えてきます。市場間のギャップや、リソース等の空白を活用し、大きく躍進した企業のビジネスを例に、具体的な内容を見ていきましょう。
2つのモノ(市場)の価格格差・情報格差を利用する
今やマクドナルドやナイキに代表されるグローバルビジネスでは常識となっている「世界で最も安い市場でモノを調達して、世界で最も高く売れる市場で売る」というビジネスモデルのもとになっている発想法がギャップ活用法です。
今日では、巨大グローバル製造業が企画・デザインは本社で行い、生産はアジア圏や東欧諸国など人件費、物価の安い地域で行い、グローバルに展開する店舗で販売する垂直統合型のビジネスモデル(SPA)を採用しています。具体的にはGAP、ラルフローレン、ZARA、H&M、ユニクロ、IKEAなどをあげることができ、まさに市場間の「ギャップ活用」の発想によって成功した事例といえます。
次に、近年英会話学習で普及が進む「オンライン英会話」について考えてみます。このビジネスが従来の英会話学校に比して圧倒的に優位性を持つ理由は、コストにあります。まず講師については、英語の堪能なフィリピン人講師を採用することでコストを従来の5分の1以下に下げ、オンライン学習を採用することにより、その他の付帯費用(物理的な施設等)も極限まで下げることを可能にしました。まさに2つの市場の「ギャップ活用」の事例の1つといえるものです。
ところでIT業界では、アメリカで流行したものは3~5年後には必ず日本でも流行するといわれてきました。ソフトバンクの孫社長で有名な先行する市場(アメリカ)の情報をいち早く日本に取り入れて活用する「タイムマシン経営」も、2つの市場の情報格差を利用した成功事例です。
カッティング・エッジ株式会社
代表取締役
中小企業診断士
1986年、慶應義塾大学経済学部卒業
2002年、テキサス大学オースティン本校マコームズビジネススクール交換留学
2003年、神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程(MBA)修了
2008年、MITスローン経営大学院 Executive MOT修了
1986年、日本アイ・ビー・エム(株)に入社。社内公募によりジョイントベンチャーを立ち上げ、IBMロゴの製品化を実現。1997年、当時、SFAのパイオニア企業であった米国シーベルシステムズ社の日本上陸に伴い、創業メンバーとして参加。西日本地区の責任者としてビジネスを立ち上げる。その後複数のベンチャー企業立ち上げを経て、2008年、タレントマネジメントのグローバルリーディングカンパニーであった米国サクセスファクターズ社(現SAP社)にスカウトされ、日本法人を設立し、代表取締役社長に就任。ゼロからビジネスを立ち上げ、日本におけるタレントマネジメントシステムの市場を切り拓く。その後、日本オラクル(株)、サービスナウジャパン(合)の事業責任者を経て、独立。現在は、自身の会社であるカッティング・エッジ(株)を設立し、中堅・ベンチャー企業に対するコンサルティングを行う傍ら、ビジネススクールにて「新規事業開発」講座等を担当し、後進の育成に努めている。
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