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資源大国ロシアとの関係構築はできるのか?
■ロシアとの関係を強化する意味
とりわけロシアと平和条約を結び、関係を強化することのメリットは計り知れない。新たな政権が、アフター・コロナでまず急ぐべき政策はこれだ。尖閣諸島周辺海域で領海侵犯を繰り返す中国の東進を牽制できる上、ロシアのマーケットをもっと身近に手繰り寄せることが可能になる。
経済協力開発機構(OECD)によれば、ロシアの国内総生産(GDP)は世界11位で1兆6570億ドル(2018年)、1人当たりのGDPでは9位で1億1289ドル(同)と中国(10位、9771ドル)を上回る。これだけでも決して小さくないマーケットだが、ロシアが法的に拘束力のある相互防衛協定を結んでいる集団安全保障条約機構(CSTO)加盟国であるアルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタンなどを加えると、新たなマーケットの魅力は無限大である。
さらにロシアの重要性はこれにとどまらない。注目しなければならないのは日本からの距離だ。実は日本とロシアとの物理的距離は韓国同様、極めて近い。しかも大国である。それだけの国と平和条約を結べないでいるデメリットは大きい。
現在、日本はサハリンでのエネルギー共同開発に乗り出しているが、もし平和条約が締結されれば、日ロ共同によるシベリア開発はさらに加速するだろう。シベリアで掘り出された石油やガスをパイプラインを使って日本に引き込むことも可能になる。その経済的メリットは計り知れない。
■「エネルギー調達ルートの多様化」は日本の大命題だ
こんな話がある。実は日本は今から20〜30年前に、ロシアとの間をパイプラインでつなぐプロジェクトを水面下で進めようとしたことがあるというのだ。中心となったのは伊藤忠商事グループで、シベリアで開発した石油やガスをパイプラインで北海道まで引き込み、このエネルギーを使って発電や製品生産に役立てる計画だった。
ところがすんでのところで、この計画にストップがかかった。ストップをかけたのは大物財界人、東京電力の社長を務めた荒木浩だった。「平和条約も結んでいないロシアから発電燃料を仕入れるのはリスクが大きい」というのだった。
しかし現在、仮に北方領土問題が解決し、平和条約が締結されたらどうだろう。このパイプライン構想ひとつとっても再び動き出す可能性が出てくる。かつて角栄が目指したアメリカメジャーに依存したエネルギー調達ルートの多様化も進む。それだけではない。燃料コストの低減化が可能になり、日本の産業競争力は飛躍的に向上するだろう。将来的にはシベリア鉄道を日本にまで連結させ、インバウンド客を呼び込むことも可能になるはずだ。
もちろん、アメリカとの関係にも配慮する必要はある。日本の外交はあくまでも日米安保条約を基軸に据えるというなら、それはそれでかまわない。しかし、アメリカの顔色を必要以上に気にしてロシアとの友好関係を放擲する必要はない。アメリカと手を結びつつロシアとも関係を促進させる。それこそが独立国として日本がとるべき立場であるし、進めるべき外交である。
本連載執筆中の2022年2月24日、ロシア軍によるウクライナ侵攻が始まった。
1カ月余りが経過した3月末現在、ウクライナ軍の抵抗にロシア軍は予想外の苦戦を強いられ、戦争は長期化している。米欧を中心に国際世論の大勢はロシアに対する非難でまとまり、主要7カ国は経済制裁を科すことで歩調を合わせている。
日本も貿易上の優遇措置などを保障する「最恵国待遇」の撤回やプーチン大統領ら政府関係者への資産凍結など、ロシアに対して厳しい制裁措置を講じた。これに対しプーチンは北方領土問題を含む日本との平和条約交渉を凍結させる方針を示した。
岸田文雄首相は「日本政府として領土問題を解決し平和条約を締結する基本方針は不変だ」と述べたが、日ロ交渉は事実上、振り出しに戻った感がある。もちろん、今回のロシアのウクライナ侵攻は、国際ルール上決して許されるものではないが、令和の日本がよって立つべきは、田中角栄が指向した全方位外交である。
欧米と足並みをそろえて経済制裁に参加する一方で、今回の事態を機会と捉えて、資源大国であるロシアとの今後の関係構築は、戦略的かつ独自の構想で行うべきだ。
田原 総一朗
ジャーナリスト
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