(※写真はイメージです/PIXTA)

現在、日本は少子高齢化が進む一方、新型コロナのような予想しえない事態が地球規模で起こっています。ロシアのウクライナ侵攻に見られるように、国際情勢もものすごい勢いで動いています。今こそ、田中角栄以上の新しい構想力を持った政治家の誕生が望まれています。ジャーナリストの田原総一朗氏が著書『田中角栄がいま、首相だったら』(プレジデント社)で解説します。

出でよ、令和の田中角栄

■なぜ石原慎太郎は田中角栄をモデルに小説を書いたのか

 

2022年2月1日、石原慎太郎さんが89歳で亡くなりました。

 

石原さんといえば、文壇デビュー作でいきなり芥川賞を獲った『太陽の季節』をはじめ、数々の名作を執筆されてきましたが、政界引退後の2016年に発表された、田中角栄を主人公に取り上げた小説『天才』がベストセラーとなったことでも知られています。

 

しかし、今から50年前の田中政権の時代、石原さんは、角栄失脚のきっかけとなった立花隆さんの「田中角栄研究 その金脈と人脈」より先に、同じ『文藝春秋』で「君 国売り給うことなかれ 金権の虚妄を排す」という記事を書いて角栄の金権政治を痛烈に批判するなど、反角栄の急先鋒的人物でした。

 

では、そんな石原さんがなぜ、晩年に田中角栄を主人公にした小説を書いたのか。

 

私と石原さんは互いの主義主張がまったく異なるため、ある雑誌の対談で大げんかしたことがあります。しかし、そのことがきっかけとなって、その後も意見交換をするようになり、対談集を2冊(『勝つ日本』『日本の力』[いずれも文藝春秋刊])出すほど親しくなりました。

 

そんなこともあり、石原さんが『天才』を書くに当たって、1時間半ほど角栄について取材を受けたことがあります。

 

その際、石原さんは「今になって、田中の言ったことは全部当たっていると思うようになった。改めて田中を見直したい」と言っていました。

 

今思えば、石原さんも田中角栄には惹かれるものがあったのだと思います。同じ政治家の立場からは批判しても、ひとりの作家としては、魅力にあふれた人物だったのでしょう。

 

■「構想力」と「人的魅力」が田中角栄のすごさ

 

さて、連載の締め括りとして、田中角栄のすごいところを改めて振り返ってみたいと思います。

 

1つは連載で何度も触れてきた『日本列島改造論』に代表される構想力です。

 

50年前の日本は太平洋側だけ発展する一方、日本海側や中日本は取り残されていました。そこで角栄は、日本全体をひとつの都市にしようと構想をめぐらせました。具体的には全国に高速道路と新幹線を張り巡らし、各都道府県に空港をつくり、日本の4つの島を橋とトンネルで結び、日帰りでどこでも行けるようにしました。さらに原子力発電所や大企業の工場を地方に誘致することで、地元に人が残れるシステムをつくり出した。

つまり、日本国中に産業と交通のネットワークを張り巡らすことで、都市ばかりに発展が集中しないことを考えたわけです。これは、人口が増えている時代においては最適な政策だったと思います。

 

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本連載は田原総一朗氏、前野雅弥氏の著書『田中角栄がいま、首相だったら』(プレジデント社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

田中角栄がいま、首相だったら

田中角栄がいま、首相だったら

田原 総一朗 前野 雅弥

プレジデント社

2022年は、田中角栄内閣が発足してからちょうど50年にあたる。田中角栄といえば、「ロッキード事件」「闇将軍」といった金権政治家のイメージが強いが、その一方、議員立法で33もの法案を成立させたり、「日本列島改造論」に代…

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