アメリカがレーガン政権時、「強いドル」実現のために高金利政策をとったため、エネルギー価格は下がります。ソ連は国家財政の収入の半分近くを原油と天然ガスが占めているので大きな影響を受けることになります。日本経済の分岐点に幾度も立ち会った経済記者が著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

高金利政策で原油や天然ガスの値段が下がる

アメリカ的な発想では、会社もいわゆる商品だとは言いますが、そのアメリカでも国家安全保障に関わる話になると、じつは全然違ってくるのです。例えばボーイングやロッキード・マーチン、ノースロップ・グラマンなどを切り売りするはずはありません。

 

そもそも外資に売るなんてことはあり得ない。そこを『日経新聞』などは取り違えています。彼らはアメリカ型と礼賛しますが、アメリカには国家安全保障という重要な尺度があり、ここに抵触したら一切認めないのです。

 

それを認めない法律をすぐに作ってしまいます。もしくは昔の法律を引っ張り出してくることもある。さらに大統領令を出すという方法もあります。覇権国ゆえに安全保障に対する意識が強いということもあるでしょう。法律制度が不充分だったら、議会で与野党問わず、すぐ法律を作ってしまうのです。

 

国家安全保障上、企業を守るという法律がないせいもありますが、ああでもない、こうでもないと時間ばかりかかって、法律が成立しない日本とは対照的です。日本では結局、実質的に外資に「どうぞ、おやりください」みたいなことになってしまう。

 

■米ソ冷戦と経済

 

経済が国力に及ぼす影響でいいますと、米ソ冷戦もいい例になるでしょう。

 

最後はアメリカの金融の仕組みがソ連に相当効いたと私は思っています。どういうふうに効いたかといいますと、繰り返すところもありますが、こんな経緯です。

 

1973年の第一次オイルショック、そして1979年の第二次オイルショックのとき、原油と天然ガスの値段が高騰しました。そのため原油と天然ガスが主な外貨獲得の手段だったソ連は、非常に国力を増強できました。それが1979年のアフガニスタンへの軍事侵攻に繫がったほどです。

 

一方、アメリカはとくに第二次オイルショックの頃、カーター政権はスタグフレーション(景気が悪いのに物価が上昇する現象)に悩まされました。

 

その打開策を主導したのがFRBのボルカー議長です。彼はカーター政権末期の1979年8月から1981年発足のレーガン政権初期に、高金利政策をやりました。レーガン政権はその結果、強くなったドルの維持に努めました。

 

じつはアメリカが高金利政策をとると原油や天然ガスの値段が下がります。先に触れましたが、もう一度説明しましょう。

 

ドルが高金利になるとドルは強くなる、つまりドルの価値が上がります。ドル建ての金融資産、代表的なのが国債など債券の金利(利回り)が上がると、外国の投資家が投資します。そのときに外国為替市場では母国通貨を売ってドルを買うわけですから、ドル高になるのです。そうなると投資家はモノを持つよりもドル資産を持っていたほうがいいと判断します。そのためモノ、原油や天然ガスの需要が落ち、値段は下がります。

 

そうなると今度は資源国が大きな打撃を受けます。ソ連の場合(いまのロシアもほとんど変わりませんが)国家財政の収入の半分近くを原油と天然ガスが占めています。それが激減するのですから、軍事予算もひねり出せなくなります。

 

「さあ、困った」と、ゴルバチョフ政権になってペレストロイカを導入しました。しかしいったん本気で自由化に踏み出したら、元には戻れません。逆に言えば自由化をどんどんやらざるを得なくなります。その挙句にソ連は崩壊してしまったというわけです。

 

田村 秀男
産経新聞特別記者、編集委員兼論説委員

 

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本連載は田村秀男氏の著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)の一部を抜粋し、再編集したものです。

「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由

「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由

田村 秀男

ワニブックスPLUS新書

給料が増えないのも、「安いニッポン」に成り下がったのも、すべて経済成長を軽視したことが原因です。 物価が上がらない、そして給料も上がらないことにすっかり慣れきってしまった日本人。ところが、世界中の指導者が第一の…

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