「ジャック・マーVS習近平」は米中対立を生き抜く演技なのか

アリババのジャック・マーと習近平の対立が話題になりました。マーのように、ある意味で習近平より影響力があったりすると、中国共産党としては放置できなくなります。しかし、マーという人物は非常に賢い人間だから、じつは演技ではないかという説もあります。日本経済の分岐点に幾度も立ち会った経済記者が著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

【オンライン開催(LIVE配信)】希望日時で対応(平日のみ)
「日本一富裕層に詳しい税理士」による無料個別相談セミナー
富裕層の相続対策から税金対策の悩みを一挙解決!
詳しくはこちら>>>

中国の経済発展を支えたソ連崩壊の教訓

■ソ連崩壊に学んだ中国――経済とマインド

 

ソ連崩壊の一連の経緯をしっかり見ていたのが中国です。

 

中国共産党指導部は、政治については全体主義的な共産党一党独裁を護持し、経済については大いにオープンにしてカネ儲けをやらせた。つまり政経分離を、1981年に本格的に開始しました。

 

ソ連国民はあくせく働かずに済むところはよかったのかもしれませんが、長い行列に並んでも、欲しいモノが手に入るとは限らない不安に苛まれました。ソ連共産党は市場原理に背を向けるマルクスというかレーニンの教義に忠実であろうとしたからです。

 

繰り返しになりますが、中国もかつての人民公社や大躍進政策では本来の共産主義社会を実現しようとしました。毛沢東はマルクスの教義に忠実だったと言えるでしょう。

 

ところが、大躍進政策の失敗で一説には2000万人以上の餓死者を出してしまいます。そのため毛沢東は権力の座から降りる羽目になりました。それは権力者だから、面白くない。なんとか盛り返そうと、文化大革命を主導しました。

 

文化大革命は政治・権力闘争でした。中国各地で「造反有理(「反逆には必ず道理がある」の意)」のスローガンのもと、武闘が展開され、政治的迫害や職場・学校・地域内でのつるしあげが横行して社会は大混乱に陥りました。これに全国民が巻き込まれ、非常に貧しくなり、どん底で八方ふさがりでした。

 

毛沢東が亡くなって四人組(文化大革命を主導した江青、張春橋、姚文元、王洪文の四名)が逮捕されてから、鄧小平が復権しました。そして彼は「市場経済が即資本主義であるとは言えず、社会主義にも市場はある」として、市場経済を導入しました。所謂社会主義市場経済です。

 

彼の「白い猫でも黒い猫でも、鼠を捕る猫はいい猫だ」という発言は有名ですが、つまり「イデオロギーにとらわれず、生産の発展に役立つ方法は評価するよ」ということです。それで大いに投資をして、外資も大いに受け入れて、改革開放路線を推進する。そうすれば経済が良くなって、皆豊かになるぞと、切り替えてしまった。毛沢東であればそんなことは許さなかったはずです。

 

「経済はマインド」です。人は多少不自由があっても、お金が手に入って豊かな生活を送れれば、我慢できてしまうものなのでしょう。それは中国人を見るとわかります。

 

所得がどんどん増えるのです。所得が増えればいろいろなチャンスが出てきます。例えば一人っ子でも子供をきちんと教育して、いいところに就職させたら、またさらに豊かになります。優秀だったら、留学もできます。医療先進国に留学して医学を学んでくれば、もう安泰です。だから国民にとって大切なのは、何よりも経済なのです。

 

経済の歯車が狂ってしまったら、国民は不安になります。それが第一次世界大戦後のドイツであり、第二次国共内戦のときの中国、崩壊前夜のソ連(ソ連は崩壊後もひどかったですが)です。

 

その教訓を中国共産党は非常に深く理解していました。だからこそ、入ってくる基軸通貨たるドルをある種の担保のようにして、それを根拠に人民元を発行するという規律を保っているわけです。それは6割がラインとされていて、人民元を100発行するとしたら、そのうちの6割はドル準備があるという形にしています。これは厳密に守っています。だから外貨が足りない場合は借金をしています。

 

中国は国際金融センターである香港市場で外貨を借り入れ、アメリカ株式市場に新興中国企業がIPOを行って巨額の資金調達を行います。そのやり方が米中対立によって曲がり角にきていることもあり、習近平政権は高度な自治を国際的に約束した香港の強権支配に乗り出したのですが、このことはあとで詳述しましょう。

 

【オンライン開催(LIVE配信)】8/20(土)開催決定
不動産投資に踏み出せない投資初心者を支援します
3カ月の体験で経費を引いた「家賃収入」が受け取れる

新しい「不動産投資体験サービス」とは 詳しくはコチラ>>>

産経新聞特別記者、編集委員兼論説委員

1946年高知県生まれ。70年早稲田大学政治経済学部経済学科卒後、日本経済新聞入社。ワシントン特派員、経済部次長・編集委員、米アジア財団(サンフランシスコ)上級フェロー、香港支局長、東京本社編集委員、日本経済研究センター欧米研究会座長(兼任)を経て、2006年に産経新聞社に移籍、現在に至る。主な著書に『日経新聞の真実』(光文社新書)、『人民元・ドル・円』(岩波新書)、『経済で読む「日・米・中」関係』(扶桑社新書)、『検証 米中貿易戦争』(マガジンランド)、『日本再興』(ワニブックス)がある。近著に『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)がある。

著者紹介

連載日本人の給料が25年間上がらない残念な理由

本連載は田村秀男氏の著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)の一部を抜粋し、再編集したものです。

「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由

「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由

田村 秀男

ワニブックスPLUS新書

給料が増えないのも、「安いニッポン」に成り下がったのも、すべて経済成長を軽視したことが原因です。 物価が上がらない、そして給料も上がらないことにすっかり慣れきってしまった日本人。ところが、世界中の指導者が第一の…

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧
TOPへ