(※写真はイメージです/PIXTA)

親の状態変化に合わせてホームを住み替えること。これが転ホームです。経年変化や病状の悪化などで、明らかに、入居時と比較し、身体状況が変化している場合は、その対応に得意なホームに転ホームをすることです。老人ホームの裏の裏まで知り尽くす第一人者の小嶋勝利氏が著書『間違いだらけの老人ホーム選び』(プレジデント社刊)で解説します。

家族も転ホームの勉強をする必要がある

しかし、いかなる事情があろうとも、入居している老人ホームと良好な人間関係を構築することができなければ、即「転ホームをする」ということが重要です。我慢しながら嫌な老人ホームに入居し続けるのは、親をゴミの処分場に捨てるのと同じです。

 

この部分の手間を惜しんでいると、老人ホーム側の手の内にはまるだけの話です。老人ホーム側も、一度入居した入居者は、相当のことがなければ「引っ越しはしない」と高をくくっているので、真剣に介護支援サービスの質を追求していく気が湧いてきません。これが現実の話です。

 

最後に、転ホームについて次のことを記しておきます。

 

元気な高齢者が、万が一に備えて、介護付きの老人ホームで我慢しながら生活をしているケースがあります。今はなんともないが、いずれ要介護状態になった時に面倒を見てもらおうという作戦です。しかし、私はこれを「よし」とは思えません。

 

むしろ、速やかにやめるべきだと考えています。自宅でも、サ高住でも、住宅型でもなんでもいいのですが、元気な高齢者が生活をする場所というものがあります。万一のため、念のため、将来のためという理由で、介護付きの老人ホームに入居している必要はありません。

 

そして、もし、そのホームに必要以上に高い費用を支払っているとすれば、その費用を別のことに使うべきです。老人ホームは、多くの入居者にとってオーバースペックになっていると考えてください。そして、使いもしないそのサービスや利用もしないサービスに対し、余計な支出をしているということを理解するべきです。

 

さらに、多くの入居者が入居後、常に退去の可能性があれば、老人ホーム側も緊張感が出てきます。一度入居してしまえば、よほどのことがない限り、退去などしない、と高をくくっているので、介護サービスの質は上がりません。

 

国が介護サービスの質を上げるために、介護保険法などのルールを変えることよりも、サービスが悪ければ、私はいつでも出ていきますよ、という雰囲気が蔓延しているほうが、サービスの質は上がるはずです。

 

首都圏に限って言えば、今の時代、老人ホームは多すぎます。余っています。ひと昔前とはまったく事情が違います。一部の人を除き、老人ホームを選ぶ時の選択肢は、たくさんあります。したがって、必要なサービスを必要な時に、必要なだけ求めるということ。これが、これからの老人ホーム選びには重要だということになります。

 

そしてそのためには、多少勉強をしなければならないということにもなります。私の言う、転ホームの勧めの重要性は、実はここにあるのです。

 

小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役

 

 

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※本連載は小嶋勝利氏の著書『間違いだらけの老人ホーム選び』(プレジデント社刊)から一部を抜粋し、再編集したものです。

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