地域包括ケアで老人ホームは死に場所に
■入ってすぐ死ぬ。こんなバカなことはない
多くの要介護系老人ホームの入居者は、入居後1年から2年以内に死亡します。誤解のないように言っておきますが、老人ホームの介護体制に問題があるというよりも、自宅で限界まで過ごし「もう無理」という状態になってから老人ホームに入居するケースが多いからです。ぎりぎりまで我慢しての引っ越しです。
したがって、このような入居者にとっては、老人ホームは死にに行く場所ということになってしまいます。
もちろん、この話は、経済的な話とリンクしています。多くの方は、長期間にわたり、老人ホームに入居するだけの経済的な体力がないため、いよいよ、となった場合にのみ、老人ホームを使うということになっています。「終の棲家」ではなく「最後の砦」です。
私は、この現象は、2025年から地域包括ケアシステムが本格的に始まれば、さらに、広がるのではと考えています。
つまり、病院から「これ以上、医療的見地から治療をする方法はありません」とか、「治療をしても無理です」と言われた高齢者が、在宅となって帰ってきますが、現実を考えた場合、在宅で看取りができる環境にいる高齢者は、それほど多くはないはずです。
ちなみに、重要なことなので記しておきますが、多くの在宅介護において、いわゆる困難事例、つまり、経済的に許されるのであれば、老人ホームなどに入居させたほうが良いと考えるケースは、高齢者が独居や老々世帯で、病気により今までの生活の継続が難しくなった場合で、なおかつ、子供たちからの支援が受けられない場合です。
平たく言うと、独居でも老々世帯でも、健康で自分のことが自分でできるうちは、問題はないはずです。
さらに、子世代と良好な関係を築き、子世代が積極的に親の介護に介入できる環境にある家族の場合、老人ホームへの入居依存度は低くなるはずです。
なお、補足をすると、子世代と良好な関係を築けているケースの場合で、親が老人ホームに入居するパターンの多くは、親に経済的なゆとりがある場合が多いと思います。いわゆる「子供たちに迷惑をかけたくない」というパターンです。
現場から見た現実は、「介護の沙汰も金次第」。そして「介護の沙汰は子供次第」ということになります。