キレている相手をなだめてはいけない
そしてもう1つ、絶対にやってはいけないことがあります。
それは、キレている相手をなだめようとすることです。
店長や上司、現場責任者など、立場のある方ほど、
「まあまあ、そんなに怒らないでくれませんか」
と、なんとか丸く収めようとしてしまうのですが、これは完全に逆効果。
そんなことを言えば、かえって「怒ってなどいない! 失礼なやつだ!!」と逆上されることでしょう。
これは、「なだめる」という行為が、クレーマーにとっては「自分の怒りをあなたがコントロールしようとしている」と感じられるためです。
「相手をコントロールできた」という自己効力感は、自分が感じるのは非常に快感なのですが、逆の立場になるととても不快に感じられることがあります。
そのため、なだめるのではなく、まずは相手の言い分をしっかり聞きましょう。
どう考えてもおかしなことを言っていると思ったとしても、「もしかしたら、こちらにも落ち度があったかもしれない」という気持ちでとにかくまずは相手の言い分を聞いてみてください。
「なぜ怒っているのか」「何に怒っているのか」、相手に全部吐き出させましょう。
話を聞く中で、やっぱり相手の言い分がおかしいと感じても、絶対に反論してはいけません。
「そんなに文句があるなら、もう来なくていいよ!」と思ったとしても、それが相手に伝わってしまうと、ますます相手の怒りを助長させてしまいます。
ここはぐっとこらえて、話を聞いてみてください。
相手が怒りを大体吐き出したと感じたら、次のステップに進みます。
相手の「怒りたくなる気持ち」にだけは共感を示して、
「お気持ちはよく分かりました。不快な気分にさせてしまい、大変申し訳ございません」
と謝罪してみてください。
ここで謝るのは、「せっかく来てもらったのに、相手を不愉快な気持ちにさせたこと」だけであり、こちら側に全面的に非があることを認めるのではありません。
これだけで怒りがゼロになることはありませんが、怒っている気持ちに対する謝罪が届くだけでも、怒りのピークを越え、トーンダウンすることは間違いありません。
そのようにして相手が落ち着いてきたところではじめて、相手の話に対応していきましょう。
正当な部分があれば、今後改善することを伝え、理不尽な要求には対応できないことを粘り強く伝えていくのです。
何度も言いますが、悪質なクレーマーに対して一番してはいけないのは、その場の怒りを収めるために、「今回だけは」と相手の要求をのむことです。
一見手っ取り早く解決できそうな気がしますが、このようなタイプの人たちは1度味をしめると、次も、また次も、とさらにひどい要求を突き付けてきます。
「何を言ってもダメだ」と、相手に諦めてもらうことが根本的解決につながるのです。
「あくまで組織に対するクレーム」であることと「時間制限」を意識しつつ、怒りのボルテージが高まってきたと思ったら、「感情に共感する」を繰り返す。
そのような流れで、相手が諦めるまで根気強く対応することで、「理不尽な要求は通らない」という姿勢を貫くことが、根本的解決につながります。
井上 智介
産業医
精神科医
健診医
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