全ての企業に求められる「新たな事業の創出」
ここまで述べてきたように、政治、経済、社会、テクノロジーなど様々な領域でもたらされている変化が相互に密接に影響しあいながら、急速な勢いでパラダイムシフトが進んでいます。この激しい変革の時代に、企業が進むべき道を見失わないためには、何よりも過去の成功体験にとらわれないことが重要になります。
パラダイムシフトの本来の意味は、ある時代の認識の枠組みや支配的な考え方が大きく変化することです。パラダイムシフトが起こる前と起こった後をそれぞれ旧時代と新時代とすれば、旧時代における成功体験はあくまでも古い時代の認識の枠組みや考え方のもとで実現できたものにすぎません。
一方、新時代における認識の枠組みや考え方はすでに旧時代とは大きく異なっています。つまりは前提条件が根本的に変化しているわけですから、成功体験がそのまま通用するとは限らないのです。
にもかかわらず過去の成功体験に執着し続けてしまうと、パラダイムの転換に十分に対応できず、最悪の場合、衰退の道を歩むことになりかねないのです。たとえば近時、台湾の鴻海(ホンハイ)グループによって買収されたシャープは液晶テレビの自社ブランド「亀山モデル」の成功体験から脱却できず、価格競争力のある海外へ生産基地を移転することに出遅れたため経営危機に陥ったとの指摘がなされています。
したがって、パラダイムシフトの中で生き残るためには、これまでの成功体験を捨ててビジネスモデルを再構築し、新たな収益の源泉としての新規事業に取り組まなければなりません。
哲学者ニーチェは「脱皮できないヘビは死ぬ」との言葉を残しています。成功体験から脱皮できない企業、「新規事業」という新たな皮を身にまとうことができない企業を待ち受けているのは滅亡の運命です。企業経営の中枢にいる人たちは、まさに“待ったなし”の状況にあることを何よりも強く認識しなければならないのです。
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