コロナによって引き起こされた「強制的な社会改革」
世の中はVUCA(Volatility〈変動性〉・Uncertainty〈不確実性〉・Complexity〈複雑性〉・Ambiguity〈曖昧性〉)と呼ばれる将来予測がますます困難な時代に突入してきています。
2020年に発生し、現在も進行中の新型コロナウイルス感染症は、私たちの社会生活や経済を根底から覆すほどの変化をもたらしました。通常であれば何年もかかる変化(オンライン会議やペーパーレス決済の普及、ワクチンの開発等)をわずか数カ月で強制的に実現させてしまったのです。
さらにそれは企業側に対してDX(デジタル・トランスフォーメーション)を踏まえたビジネスモデル再構築ならびに新たな経営の柱としての新規事業の立ち上げを待ったなしで迫っています。
経済面に目を移すと、日本の最大の課題は30年続くデフレからの脱却です。その負のスパイラルの根本にあるのは「上がらない給料」であり、それは日本の雇用制度に起因しています。長らく日本は終身雇用、年功序列に基づく「メンバーシップ型雇用」制度を採用し、人材の流動化や産業の新陳代謝をブロックしてきました。
しかし少子高齢化や産業のサービス化、AI化が進行する成熟化した現代において、明らかにそれは機能不全を起こしています。実際に近年、日立やソニー、富士通、資生堂をはじめ、各従業員の成果に基づく「ジョブ型雇用」制度へ移行する企業も増えています。これは「働き方」において、主体が「企業」から「個人」へと比重が移る時代の大きなトレンドを象徴しているようにも思えます。
一方、政治においては2021年10月に発足した岸田内閣が「新しい資本主義」の成長戦略のなかで「スタートアップ・エコシステムの構築」を掲げ、起業家の輩出を推進する政策を打ち出そうとしています。また最近の起業に関する新しい動きとしては、Z世代(1990年後半~ 2000年代生まれ)と呼ばれる若者の間で「起業ブーム」が起きていることです。ユニークなのは彼らの起業理由です。
従来の世俗的な起業理由である「お金持ちになりたい」「自分の力を試したい」「有名になりたい」等とは異なり(もちろん多少はそれもあるでしょうが)、注目すべきはSDGsに対応した社会貢献が主な理由になっている点です。Z世代は直感的に迫りくる地球規模の危機を感じ取っているのかもしれません。
次に最新テクノロジーが私たちのライフスタイル、ワークスタイルに与える影響についてみてみると、近年はGAFAM(Google、Amazon、Facebook〈社名をMetaに変更〉、Apple、Microsoft)と呼ばれるプラットフォーマーをはじめ新たなデジタル・ディスラプターが続々と登場し、インターネット上で利用できるあらゆるサービスを無償もしくはサブスクリプション(定額課金)サービスで提供しており、スマホ1台あればほとんどやりたいことはなんでも実現できる環境にあります。
かつては株式会社を設立するのに資本金が1000万円必要でしたが、今では資本金1円でも設立可能になっており、アイデアさえあればあなたも明日から起業できる時代が到来しているのです。以前に比べずいぶん起業のハードルは下がってきているわけです。
政治・経済・社会・テクノロジーのマクロ的視点からPEST分析の手法を用いて、私たちが現在置かれている環境を俯瞰し、そこから導かれる結論としてはここ数年で新たなパラダイムシフト(ニューノーマルへの移行)が起こり、その状況の中で今まさに新規事業開発や起業が必要とされ、それを実行に移す絶好のチャンスも同時に到来しているということです。
各国は、大きな「パラダイムの転換期」に直面している
今、日本と世界は大きなパラダイムの転換期に直面しています。まず、いちばん大きなきっかけは、上述した「新型コロナウイルス感染症」といって間違いありません。なぜなら、従来であれば10年かかる社会生活、経済活動の変化を好むと好まざるにかかわらず、わずか数カ月でもたらしたからです。
次に政治面に目を移すと、民主国家と統制国家が対立し、覇権争いがますますエスカレートしてきています。統制国家の代表である中国は、彼らの覇権拡大思想である「一帯一路構想」を推し進め、香港・台湾、ウイグル問題でアメリカをはじめとする民主国家と対立を深めています。
また、ロシアはヨーロッパ・アメリカとの間でのウクライナ侵攻問題で一触即発の危機的状況にあります。こういった分断は国家間だけでなく、たとえばアメリカ国内問題に象徴されるように人種や思想・信条、経済格差にかかわる分断にも広がり、世界中で巻き起こっています。
今、起きている地殻変動
1.政治の変化
米中覇権争い、ブレグジット、香港・台湾問題、中東情勢、ウクライナ侵攻問題、ナショナリズムの台頭、拡大するポピュリズム
2.経済の変化
グローバリゼーション、国内市場縮小、産業の再編、ジョブ型雇用へのシフト
3.社会の変化
格差社会、少子高齢化社会の進展、ライフスタイル・ワークスタイルの変化、新型コロナ問題、気候変動問題
4.テクノロジーの変化
AI, ROBOT, IoT, BIG DATA, CLOUD, SOCIAL, 5G, BLOCKCHAIN, M-RNA…
↓
パラダイムシフト
≪シェアリング・エコノミーへ≫
≪「モノ」消費から「コト」消費へ≫
≪キャッシュレス社会へ≫
≪非接触・デジタル化社会へ≫
≪脱炭素社会へ≫
さらに、日本国内ではもう1つ別の形の経済、社会の変動がもたらされています。まず経済面では、人口減少により国内市場が縮小し続ける中で大手企業が活発にM&Aを行うなど製造業、金融業、小売業など幅広い分野で産業の再編が進んでいます。
また、社会面では少子高齢化社会の進展に伴い、個人のライフスタイル、ワークスタイルにも大きな変化が生まれつつあります。100歳まで生きることを前提とした人生戦略・キャリア戦略を考えることを促す書籍(『ライフ・シフト』)がベストセラーになったことも、その1つの象徴的な表れといえるかもしれません。
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