無理しないで、今できることをしよう!
しかし、人事の方に見送ってもらい、エレベーターに乗ったとき、ふと我にかえると、「まずい、体がボロボロだ……」という状態でした。
2時間後にはさらに、書店さんとのコラボ企画「セルフマネジメントゼミ第3講」も迫っている状況でした。
「気合と根性!」が、使えればいいのですが、原稿の締め切りや、連続の夜の講座、終日の研修で、すでに使い果たしている状態でした。
そんなときに私が実践したことは、とても地味なことです。
それは、今の自分の状況に「マッチング」することでした。
弱音を吐きつつ、トボトボ歩いている自分に対して、
「そりゃしんどいよね。これだけプレッシャーが重なったら、しんどくもなるよ。わかる、わかる。お疲れ」
と自分で自分を励まし、その上で「無理しないで、気負わずに、今できることをしよう!」。そう自分に声をかけました。
すると、こんなに疲れきった状態でお伝えするテーマが「セルフマネジメント」というのが、疲れを通り越してちょっと笑えてきました。
そのあとのゼミでは、無理せず座って講義をしました。その代わりに、疲れきっている自分をネタにして、リアルセルフマネジメント法の追加レクチャーができました。
どんなときも、「今、この状況の自分」からスタートする。自分の本音や現状に、まずマッチングすることから始めていくのです。
この方法は、体が疲れているときだけでなく、気持ちが落ち込んでいるときにも使えます。
「『残業はダメ、人員は増やせないけれど、業績は上げろ』という会社の指示にずっと従ってなんとか頑張ってきたけれど、もう本当に心身ともに疲れ果ててしまった。自分が消えてしまいたいくらい、落ち込んでいます……」
これは、私が主催しているリーダー向けの年間プログラム「行動イノベーションプラチナコース」のメンバーからいただいた相談です。
こんなとき、目標実現の専門家として、「こうしてみたら?」「こう捉えてみたら?」と具体的なアドバイスをすることもできます。
ですが、人が本当に落ち込んでいたり、心身ともに疲弊したりしているときには、アドバイスを聞くことも難しいものです。
さらに、そのアドバイスを実践する余裕があることは稀です。
こういうときは、私はひたすら現状を聞いて、マッチングします。
具体的には、「そうだったんですね」「それはしんどかったですね」「それは大変でしたね」「今はそう感じているんですね」といったように、まずは、相手の現状にひたすらマッチングするのです。
すると、少し気持ちや思考に余裕が出てきます。
そのタイミングで、「無理しないで、気負わずに、今の状態でもできることがあるとしたら、それはどんなことですか?」と、聞くようにしています。
これはプロコーチがいなくても、自分ひとりでもできます。心身ともに疲弊してしまったとき、試してみてください。
大平信孝
株式会社アンカリング・イノベーション代表取締役