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今後、日本はどう行動すべきなのか
さて、今回のロシアによるウクライナ侵略戦争について、第1次、第2次世界大戦と比べてどうみるべきでしょうか。1,2次の大戦は唯一無二の覇権国の座をめぐるグローバルな争いという点で共通しています。第1次大戦は大英帝国に対する大陸欧州の軍事大国ドイツ帝国の挑戦で、米国が参戦することでドイツは野望が潰えました。第2次大戦はナチスによるドイツ第3帝国と、東アジアの大日本帝国がイタリアを加えた枢軸となり、米英同盟を中心とする連合国に敗れました。
米国は第一次大戦後、没落過程に入った大英帝国に代わる覇権国の座に座ることを避け、孤立主義をとる一方で、日本の封じ込めに努め、日本軍による真珠湾攻撃を誘発させ、参戦しました。そして欧州、太平洋でドイツ、日本を打ち負かし、唯一無二の覇権国としての座につきました。
覇権国米国の特徴は、軍事力だけではありません。基軸通貨ドルによる世界の金融市場とエネルギー・穀物市場の支配です。軍事力については旧ソ連の増長に直面し、冷戦時代に突入したわけですが、米国はドル覇権を駆使し、1次、2次の石油危機を経て、1980年代からソ連の収入の源泉であるエネルギー価格を低迷させ、ソ連崩壊へと導きました。軍事力ではなく金融力がソ連を打ち負かしたのです。旧ソ連崩壊を体験したのがKGB出身のウラジミール・プーチン・ロシア大統領です。
そのプーチンと2022年2月4日に盟約を交わしたのが中国の習近平共産党総書記・国家主席です。両首脳は「限りない相互協力」を北京冬季五輪開幕式時に約束しました。ウクライナ侵略はその20日後で、その間に詳細な協力項目が詰められました。その趣旨は、脱ドル依存のための金融協調と中国によるロシア産エネルギーと穀物の長期大量購入です。
両首脳は共に、帝国復興の野望を使命としています。プーチンはロマノフ王朝時代のロシア帝国、それを継承拡大させた旧ソ連帝国の復活、習近平は大清帝国までの版図を念頭に置いた「中華帝国の偉大な復興」です。それに立ちはだかるのが、米国のドル覇権です。ロシアにとってみれば、エネルギー、食糧ともドル建てで相場が決まり、米国の金融政策に翻弄される限り、ロシア帝国の再興は困難と考えるはずです。
中国のほうは世界の工場としてグローバル・サプライチェーンの元締めになったのですが、やはりドル金融に依存している限り、米国の圧力に屈せざるを得ない弱みがあります。習近平はグローバルな中華経済圏構想「一帯一路」を2014年に打ち出し、人民元経済圏への布石としていますが、中国経済そのものはドルの外貨準備がないと人民元金融・財政を運営できないのです。米国のドルによる世界経済支配力を弱め、グローバル世界での政治的影響力を拡大するうえで、プーチン・ロシアは格好のパートナーになったのです。
ウクライナ侵略戦争は戦況とは別に世界政治経済に重大な衝撃を与えています。エネルギーと穀物価格の急騰です。プーチンは2020年4月にサウジアラビアなど石油輸出機構(OPEC)を巻き込んだ協調減産を取り決めることに成功し、同年秋からの石油価格高騰を仕組んだ。新型コロナウイルス禍の世界の石油需要の低迷の機を捉えた。
米国の余剰ドル資金は石油投機に向かい、成功する。そしてウクライナ戦争の戦場と化した黒海での穀物輸送を困難にし、穀物価格を高騰させた。小麦の輸出市場のシェアはロシア21%、ウクライナ9%合わせて30%に上る。ヒマワリ油の国際供給の42%はウクライナ産です。欧州は天然ガス供給をロシアに頼っています。プーチンはもともと2014年以来脱ドルを着々と進め、ロシアに対して弱みを持つ欧州のユーロと、それを補完する形で人民元を取引通貨としてきたのです。
以上見ると、ウクライナ戦争はプーチンによるドル体制弱体化と、ドルを基軸とする米国の世界覇権の切り崩しであり、習近平が目立たない形で側面支援するという構図である。古典的なタイプの無法な帝国主義戦争とも言え、覇権国争いという点では第3次世界大戦の様相を限りなく帯びています。
野蛮で国際秩序無視の中露帝国主義に日本は直面しているのです。国際常識は通用しません。
日本はどうすべきか、中国をこれ以上増長させないよう、封じ込めと抑止の両面が求められる。生産、投資、金融、ハイテクすべての面で戦略を立てる。そのためには、日本の脱デフレ、経済再生、国力復興が前提となる。米国との同盟関係強化は当然だが、米国自体、台湾問題を含め対中強硬策はふらつき気味だ。日本はドル基軸を支える以上、米国への政治的発言力を強めるべきでしょう。
ロシアに関しては、中露同盟の分断を図るしかないが、具体的にはウクライナ戦争の今後の帰趨を待たなければならない。ただ一つ言えることは、ロシア経済の低迷は今後10年以上続き、ロシアが対中依存を強めるでしょう。それは中華帝国と国境紛争を繰り返してきたロシア帝国の歴史からすれば、プーチンのジレンマです。
他方で、侵略主義ロシアが日本に北方領土を返還するどころか、北海道への軍事侵攻すらやりかねない危険性をもはらんでいます。日米安保に安住し無思考の現状から覚醒すべきなのは言うまでもないですが、繰り返すように自らの国力再興と防衛力の抜本的な増強を同時並行して進めるべきです。
田村 秀男
産経新聞特別記者、編集委員兼論説委員
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