無血でソ連を崩壊させたレーガンの高金利政策、そのとき中国はどう動いたか

旧ソ連を崩壊させるべくレーガン元大統領はNATOを利用したが武力は使っていません。アメリカがレーガン政権時、「強いドル」実現のために高金利政策をとったため、エネルギー価格は下がります。日本経済の分岐点に幾度も立ち会った経済記者が著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

ドルが高金利政策をとるとエネルギー価格は下がる

■ソビエト崩壊の主たる原因

 

ソ連経済は成長せずに停滞していきました。それを歴代ソ連指導者は放置してきたので、1985年にソビエト連邦共産党書記長、つまりソ連のトップになったゴルバチョフはペレストロイカ(再構築「再革命「」の意味)で、グラスノスチ(情報公開の意味)とともに、ソ連の政治を民主的な方向に改良していこうと考えました。しかし手遅れでした。

 

その内情は以下のような感じです。

 

当時、アメリカをはじめとする西側世界はどんどん経済成長していました。さらにソ連を困らせたのが外貨の不足です。ソ連は国内で異常な生産性の低下が続き、物資が不足していたため、輸入しなければなりませんでした。当然、外貨が必要になるのですが、それを支えていたのは石油や天然ガスなど、エネルギーの輸出でした。

 

しかし、アメリカがレーガン政権時、「強いドル」実現のために高金利政策をとったのが痛かった。じつは基軸通貨であるドルが高金利政策をとると、エネルギー価格は下がるのです。

 

世界の主要エネルギーである天然ガスや原油は価格が国際市場で決まります。国際商品といわれる所以です。そしてこれらは先にも触れましたが、ドルで取引します。

 

ドルの金利が高くなると、投資家は普通、国際商品市場でさまざまある商品のなかでドルという現金を選好します。そうなると原油や天然ガスや金など国際商品の需要が相対的に下がります。だからこれらの価格が下がることになる。

 

それでソ連がいくら原油や天然ガスを輸出しても、入ってくる外貨は減ります。国家財政が行き詰まるわけです。お金がないからアメリカのレーガン政権との軍拡競争に負けると同時に、財政も窮迫しました。

 

もともとソ連経済は停滞しきっていたわけですから、ゴルバチョフとしてはこれ以上もたないと、ペレストロイカに踏み込みましたが、既述のように手遅れでした。なおかつ自由化にいったん踏み出したため、とめどない自由化への圧力で共産主義体制は耐えられず、ソビエトは崩壊していったのです。

 

■ソビエト崩壊を中国が活かした

 

ソビエト崩壊への過程をよく見ていたのが中国共産党指導層です。

 

彼らは「まず政治的独裁体制は維持します。そして、土地などの生産手段は公有制とし、供給サイドの企業や金融機関の経営は共産党のコントロール下に置きます。それ以外は自由に取引しても生産してもよろしい。市場原理は十分活かしましょう」とし、それを社会主義市場経済と言っています。

 

要するに市場経済の機能は大いに導入して、大いに生産して、消費して、ニーズに合わせるようにする。外資にもどんどん来てもらって、新しい技術を提供させて、新しい製品を作る。しかし、独裁主義による統制システムは堅持する。共産党中央が各経済セクターに指令し、ヒトとカネ、そしてモノを成長分野に投入するので、急速に中国は経済を成長させていくということになるわけです。

産経新聞特別記者、編集委員兼論説委員

1946年高知県生まれ。70年早稲田大学政治経済学部経済学科卒後、日本経済新聞入社。ワシントン特派員、経済部次長・編集委員、米アジア財団(サンフランシスコ)上級フェロー、香港支局長、東京本社編集委員、日本経済研究センター欧米研究会座長(兼任)を経て、2006年に産経新聞社に移籍、現在に至る。主な著書に『日経新聞の真実』(光文社新書)、『人民元・ドル・円』(岩波新書)、『経済で読む「日・米・中」関係』(扶桑社新書)、『検証 米中貿易戦争』(マガジンランド)、『日本再興』(ワニブックス)がある。近著に『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)がある。

著者紹介

連載日本人の給料が25年間上がらない残念な理由

本連載は田村秀男氏の著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)の一部を抜粋し、再編集したものです。

「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由

「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由

田村 秀男

ワニブックスPLUS新書

給料が増えないのも、「安いニッポン」に成り下がったのも、すべて経済成長を軽視したことが原因です。 物価が上がらない、そして給料も上がらないことにすっかり慣れきってしまった日本人。ところが、世界中の指導者が第一の…

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