なぜ戦争は起きるのか。戦争を引き起こす原因はいろいろあります。第一次大戦後、昭和恐慌が発生し、日本経済は大混乱に陥りました。第二次大戦を引き起こす原因となる日本の大陸進出は、避けることはできなかったのでしょうか。日本経済の分岐点に幾度も立ち会った経済記者が著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

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日本の大陸進出は避けられなかったのか

どういうことかというと、第一次世界大戦中、戦場とならなかった日本の製品に対する需要は急増し、大戦景気に沸きました。しかし、戦後はヨーロッパの製品が市場に戻ってきました。日本は生産過剰になったため不況に陥りました。これが反動不況で、生産過剰を整理淘汰しなければならないという発想が強かった。整理淘汰のためには緊縮が必要だと。

 

一種のショック療法です。これを求める声がとくに財界から強かったわけです。あと、金本位制に復帰(=金解禁、金輸出解禁)したほうがいいという意見も強かった。第一次世界大戦のときには世界の主要国が金本位制から離脱していましたが、戦後次々に復帰し、景気が良くなっていたためです。日本もこれに乗ろうと、金本位制に復帰したのです。

 

金解禁は通貨価値を上げることを狙っていますので、緊縮財政、デフレ政策です。ただ当時は不況でしたから、そのときにデフレ政策をとるのはまったく辻褄が合わない手です。先に話しましたが、反動不況で生産過剰だから整理淘汰しないといけない、整理淘汰のためには、やっぱり緊縮が必要だという流れでした。

 

それで昭和恐慌が発生し、日本経済は大混乱に陥りました。海外に出ていくしかないという世論の強まりは、勿論ありました。国内で食い潰れて、可能性がない。ならば海外に出て行こうか。そういうときに満洲国が建てられ、多くの農民が集団移住し、満洲鉄道に代表される巨大インフラ整備もなされました。

 

それから財閥も鮎川義介の日産コンツェルンが満洲では大きな事業展開をしましたし、野口遵の日窒コンツェルン(いまのチッソ、旭化成、積水ハウスなど)は朝鮮半島に大規模な水力発電所をいくつも建てました。

 

明治維新以降、日本は拡大政策、富国強兵で成功してきたわけです。たまたま台湾と朝鮮半島では成功しましたから、拡大主義のイデオロギーが非常に強かった。繰り返しますが、満洲国建国は大義名分として防共、共産ソ連への対策もありました。

 

というのも中国では蔣介石が内戦ばかりやっていて、華北は軍閥の張作霖の天下で、彼に任せておいたら不安定なままなので、このままではソ連がやってくるだろうと踏んだわけです。すでに朝鮮半島は日本領で、鴨緑江を挟んだ向こうは満洲です。だから当時は防衛という理屈が当然のように発生しました。

 

一方の経済対策ですが、当時の列強といわれている国の基本的な考え方に帝国主義があり、満洲国建国で八方ふさがりの日本経済をなんとかしようとする意図はあったわけです。ある種の資本の運動というべきか、国内が望めないなら海外に収益機会を求めるのです。

 

当時国内マーケット、需要は第一次世界大戦後の不況とデフレで細っていましたから、海外に出て投資しようという資本主義特有の動機は本能的なものだといっていいでしょう。

 

当時はWTOやIMFといった、自由な投資の国際的枠組みがありませんでした。だから、早く行ったほうが勝ち、やったもん勝ちです。先に来ていた国を追い出す目的での戦争もあったでしょう。

 

あくまでも人間のやることですから、国民世論やメディアの論調など全体的な主張がものすごく影響しています。これらは政治に反映されますし、軍の行動にも結びついていくのです。戦前の大陸進出は、全体的な潮流を考慮すると、やはり避けられなかったのだろうと思わざるを得ません。

 

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    本連載は田村秀男氏の著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)の一部を抜粋し、再編集したものです。

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