戦争の原因は経済というケースは多い
■大東亜戦争と経済
歴史的に戦争の原因が経済だったケースは多々あります。例えば日本が先の大戦を起こしたのも、やはり経済的に追いこまれたことが理由のひとつだったりします。
世界大恐慌があって、日本は満洲事変を起こして満洲国をつくりました。それはソ連の脅威に対処するのが大きな理由でもあります。中国に関していえば、その時点で結構な数の日本企業や居留民が行っていました。
その人たちが虐殺されたとか、テロに遭ったとか、いろいろなことが起きたわけです。そうなると当然、日本軍が日本人の生命と財産を守るためにという名目で出ていきます。それでドンパチが発生し、だんだんと戦火が広がっていった。
その後の盧溝橋事件で日中戦争に至りましたが、伏線としては日本が経済権益を得たい、つまり経済圏を中国大陸に広げたいという理由が大きかった。しかし、日本に石油をはじめとする資源の供給をしていたアメリカが日本を牽制するため、禁輸の措置をとりました。
日本は経済、そして軍を維持するために資源を求めてインドシナ半島に出ていかざるを得なくなった。それで南下作戦をとったということです。
インドシナ半島にまず行って、その次は当然のようにオランダ領インドネシアです。大きな油田がありますから。
ということで自ずとこれは米英を敵に回すしかないことになり、真珠湾攻撃という流れになった。日本が日米開戦を避けたいなら、最後通牒と評される「ハルノート」をのむしかありませんでした。しかし、もしのんだらどうなったか。満洲国は放棄し、インドシナ半島から撤退、中国大陸からも全面撤退です。
口では簡単に言えますが、そこに至るまで大きな犠牲を払っています。この段階で日本軍は相当な戦死者を出し、産業振興で結構な額のお金もつぎ込んでいますし、国民の精神は高揚している。ここでハルノートをのんで全面撤退なんてことになったら、東條内閣は退陣に追い込まれる。政治的にも経済的にも、そして軍事的にもどうにもならないという状況に追い込まれていったわけです。
こういう流れから見ると、先の大戦勃発の最大の原因のひとつは、中国における日本の経済権益の維持だといえるでしょう。それを確保するために、結局日本は開戦に踏み込まざるを得なかった。
日清戦争以降、日本は中国大陸に進出し、1932年、傀儡の満洲国を建てました。これは経済的にどういう意味合いがあったのか。まず満洲には鉄鉱石や石炭の鉱山がありました。だから、資源確保では進出の意味があるわけです。食料も、大豆や小麦の大規模生産ができました。満洲国を建国して、経済権益を確保するという動機は相当強かったはずです。
加えて日本国内は1929年の大恐慌の影響を受けた昭和恐慌の真っ盛りで、経済的にはひどい状態でした。第一次世界大戦が終わったあとの反動不況が昭和恐慌の発端のひとつです。