子世代の都合で老人ホームの場所が決まる
■自分の家から近いという理由だけで選ぶのは問題あり
繰り返しになりますが、重要なことなので何度でも記しておきます。多くの現状を見ていればわかりますが、老人ホームは、入居者本人が自分の意思で入居を決めるというケースはほとんどありません。本人は、なんで自分が老人ホームに入らなければならないのか! と思っているからです。
そして、多くのケースで老人ホームは、子世代が、邪魔になった親を捨てる場所なのです。「そんなことはない」と言って反論する方もいると思いますが、現象だけを冷静に見ていれば、そのような運用になっています。もちろん、中には、多少まともな考え方で親の老人ホーム入居を考えている子世代もいるとは思いますが、それは少数派です。
老人ホームを子世代が選ぶ時に、費用の次に重要なことが「地域」です。つまり、どこにするか? ということです。多くの場合、親が住んでいる地元か子世代の都合の良い場所にある老人ホームが選ばれています。
特に、子世代の都合の良い場所というと、自宅周辺か勤務先の周辺です。なお、少し触れておきますが、老人ホームなどの居住系の施設には、「地域密着型」というスキームがあります。これは、地元に住んでいない高齢者は入居できないという制度です。
さらに言うと、物事には何でも「特例」というものがあり、老人ホームの場合も、「住所地特例」という制度があるため、地元でなければ何人も入居することはできない、ということでもありません。まったく、わかりにくい制度です。
多くのケースでは、子世代の都合で場所が決まります。決定するのは子世代だからです。親のことを考えて、親の地元に決めるケースもありますが、多くのケースでは、自分の利便性を考えた場所になります。
介護業界では「引き寄せ」という言い方があります。これは、遠方にいる親を自分の家の近所の老人ホームに引き寄せるということを指します。一緒の家には住みたくない、しかし、遠いと行くのが面倒だし、コストもかかる。だから、スープの冷めない距離にある老人ホームに住まわせるということです。これによって、自分の都合で行きたい時に自由に気軽に行くことができるようになります。
小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役
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