様々な不動産投資があるなかで、初期費用の小ささから初心者にすすめられやすいのが、「ワンルームマンション投資」です。しかし、物件数は多い一方で、儲からないとも言われています。
そこでこの記事では、ワンルームマンション投資の基礎知識や、儲からないと言われる理由について解説します。自分がワンルームマンション投資に向いているかどうかを知ることができますので、ぜひ参考にしてください。
1. ワンルームマンション投資の仕組み
ワンルームマンション投資とは、ワンルームマンションを活用して投資を行う方法です。購入費用が抑えられるため、自己資金が少ない方にもおすすめの投資方法です。
ワンルームマンション投資には、インカムゲインとキャピタルゲインという2種類の投資方法があります。
インカムゲインは、マンションの一室を購入して第三者(入居者)に貸し出し、入居者から毎月家賃を得るという投資方法です。またキャピタルゲインは、物件を高い価格で売却することで売却益を得るという投資方法です。
キャピタルゲインは、相場を読むのが大変難しいため、投資初心者の場合はほとんどがインカムゲインで投資を行っています。
インカムゲインでは、収益性が高い物件であれば毎月一定の家賃収入が見込めますので、長期的な運用が期待できます。
2. ワンルームマンションは儲かるの?
初心者にすすめられることが多いワンルームマンション投資ですが、実際は儲かるのでしょうか?
ワンルームマンション投資の利回りや、発生する費用・収入について具体的な数値をもとに解説します。
2.1. ワンルームマンション投資の利回り相場
不動産投資において、最も重視すべき数字は「利回り」です。利回りとは、不動産の取得にかかった費用に対して、1年間でどの程度の収益を生み出すかを指します。利回りが高い物件は「利益が高い」ということなので、不動産投資では利回りがとても重要な指標となります。
日本不動産研究所が行った2021年10月の『不動産投資調査』によると、エリアごとのワンルーム賃貸住宅の期待利回りは以下の通りです。
期待利回りは年々減少傾向にあります。大阪では2009年・2010年は期待利回りが約7%をマークしていましたが、年々下落しており現在は4.6%です。
また、築年数と利回りで見ると、築年数が経過している物件ほど利回りが高くなります。都心部のワンルームマンションで、築年数に応じた平均表面利回りは以下の通りです。
中古物件は購入費用が低いため、利回りが高くなります。ただし、物件が古くなれば古くなるほど空室のリスクが増えるので、注意が必要です。
2.2. ワンルームマンション投資にかかる費用項目
ワンルームマンション投資は、購入費用以外にも多くの費用が発生します。ワンルームマンション投資でかかる様々な費用について下記の表にまとめました。
以上の費用を合計すると、不動産購入費用以外にも年間約24.5万円程度発生することになります。
もちろん、物件やエリアにより費用は異なるため、物件購入前にどの程度費用が発生するのか確認しましょう。
2.3. ワンルームマンション投資の収入
ワンルームマンション投資での収入は、下記の4つです。
空き室ではない限り、毎月入ってくるのが家賃収入です。また、更新料が発生するマンションであれば、入居者が契約更新をするたびに更新料が入ります。
他にも、入居者が新規に契約したときだけ入ってくるのが礼金です。敷金のように返還する必要はないので、受け取った金額が収入となります。
万が一不動産投資をやめたいと考えたときには、マンションを売却することでも売却益を得られます。
3. ワンルームマンション投資が儲からないと言われる理由
投資初心者には比較的購入しやすいワンルームマンションですが、一般的に「儲からない」と言われることもあります。なぜ儲からないと言われるのか、その理由について解説していきます。
3.1. 空室リスクが大きい
ワンルームマンション投資は、入居者がいないと収入がゼロになります。空室の期間が少しであれば問題ありませんが、なかなか入居者が見つからないと、ローンの返済や管理費の支払いに追われることになり、生活が苦しくなります。
一棟アパートやマンション投資であれば、一室空室になっても他の部屋に入居者がいれば収入はありますが、ワンルームマンション投資は一部屋にリスクが集中します。
また、ワンルームマンションは間取りにバリュエーションがないため、他物件との差別化が難しく空室になる可能性が他の物件と比べて高いです。
3.2. 家賃保証がメインになりやすい
空室のリスクを避けるために、サブリースと呼ばれている家賃保証制度を利用する人もいます。これは、不動産投資会社が物件をオーナーから借り上げ、入居者に転貸するというシステムです。
入居者が入らない場合でも、サブリース会社が代わりに家賃を払ってくれます。サブリース会社はオーナーより保証料をもらいます。
注意点は、家賃保証は家賃の額を保証するわけではないことです。長期間入居者がつかないと、サブリース会社は家賃の引き下げをオーナーに対して行います。
契約時には、入居者がつかなくても永久に同じ額が払われ続けると勘違いをしていて、実際にはもらえる家賃が引き下げられてしまった場合、赤字経営が続くこともあります。
家賃保証(サブリース)を検討する際は、必ず契約内容を確認しましょう。
3.3. 収益性の低さが見えにくい
比較的少額で始められることがメリットのワンルームマンション投資は、一棟マンション投資よりも各月の収入はかなり少なくなりますが、その分支出も少ないです。仮に赤字経営になっていたとしても、赤字の額も小さいため赤字が積み重なるまで問題が重大化せず、対応が遅れてしまうことがあります。
そのため、小まめに経営状況の確認をし、収益のシミュレーションと管理を行う必要があります。根気強く管理を行うことができる人でないと、継続的に利益を出し続けることは難しいでしょう。
3.4. 参入障壁が低く賃料が下落しやすい
ワンルームマンションは建築費も低く、また狭い土地でも建築が可能です。そのため、当初は周辺に類似物件がなくても、将来類似物件が建築される可能性は高くなります。
また、類似物件が建った場合には、ワンルームマンションは間取りにバリュエーションがないため差別化がしにくく、建築年数で判断されることが多くなります。
すると、競争力を保って入居者を確保するには、賃料を引き下げるしか方法がなくなります。賃料を引き下げると、当初予定していた収入を得ることができなくなり、結果として収益性が落ちてしまいます。
投資をする際に、賃料が同じであるという前提で収益シミュレーションを行うことは、非常に危険です。賃料が下がっても、収益性が担保できるかを確認しましょう。
3.5. 減価償却費が小さく節税効果が薄い
不動産投資は、減価償却による節税が可能です。減価償却とは、所有している不動産の価値が減った分を費用として計上することで所得を減らし、所得税・住民性を減額させることです。
ただし一般的にワンルームマンションは、節税効果が低いことが多いです。なぜなら、ワンルームマンションで見られるRC造は、木造物件などと比べ耐用年数が長く、減価償却費として計上できる額は少なくなるからです。そのため、節税効果は小さいです。
節税目的であれば、木造アパートなどの高額で耐用年数が短い物件の購入が必要となります。
4. ワンルームマンション投資のメリット
ワンルームマンション投資には悪いところばかりでなく、メリットももちろんあります。ワンルームマンション投資のメリットを解説します。
4.1. 初期投資を抑えやすい
ワンルームマンションは、ファミリータイプと比べて購入費用が安いです。ファミリータイプはワンルームマンションの2〜3倍の購入費用がかかります。また、修繕個所が少ないため、中古だったとしても修繕費用が安く、初期費用を抑えることが可能です。
さらに先ほど解説したように、ワンルームマンションはRC造が多く、木造物件と比べて耐用年数が長いため、住宅ローンも長期間で設定することができます。住宅ローンの期間が長くなると月額の返済金額を低くできるため、毎月の返済負担を抑えたい方には嬉しいメリットと言えます。
4.2. 初心者でも始めやすい
ワンルームマンション投資は初期費用が少なく済むため、手元資金が少ない、リスクを大きく取れない初心者でも始めやすい不動産投資です。
また、管理する物件も一室であるため、複数の部屋を同時に管理する必要がなく、一室に集中することができます。そのため、サラリーマンが初めて不動産投資をする場合は、ワンルームマンション投資をおすすめされることが多いです。
もちろん、収益化するためには、コツと綿密な計画が必要ですが、まず不動産投資に慣れたい、経験を積みたい初心者にとってはおすすめの投資方法です。
4.3. 単身層から人気が高い
ワンルームマンションの入居者は、単身者がほとんどです。単身者にとって、ファミリータイプのマンションは広すぎることに加え賃料も高いため、多くの方がワンルームマンションを選びます。
また、昨今は結婚をしない単身者の割合が増加しており、今後も単身者の増加が見込まれています。このことは、ワンルームマンション需要が増加する可能性が高いことを表します。
地域により需要に違いはありますが、よい物件の選択ができれば、入居希望者は増えることが想定されます。
4.4. 流動性が高く買い手がつきやすい
不動産投資は、第三者に貸して賃料を一定額得たあとは、売却することが王道です。そこで重視すべきことは、流動性が高い物件かどうかです。
流動性が高いとは、物件の換金がしやすいかどうかを意味します。ワンルームマンションの場合は初期費用が安くローンも組みやすいため、買い手がつきやすい、つまり流動性が高いと言えます。
不動産を売却したくても、需要がなく買い手がつかなければ売却できません。ファミリータイプよりもワンルームマンションのほうが流動性が高いため、いざというときに売却しやすいというのは大きなメリットと言えます。
5. ワンルームマンション投資で成功するためのコツ
初心者も始めやすいワンルームマンション投資ですが、誰でも成功するわけではありません。ワンルームマンション投資で成功するためのコツを解説します。
5.1. オーナーチェンジ物件にする
オーナーチェンジ物件とは、すでに入居者がいる物件のオーナーをチェンジすることを言います。
すでに入居者が入っているため、不動産購入後からすぐに賃料を得ることができます。入居者を募集する費用も抑えることができ、空室リスクを避けるために人気の不動産投資方法です。
優良なオーナーチェンジ物件を探すためには、現在のオーナーと入居者との間で結ばれている契約内容を確認しましょう。賃料・更新料の有無・保証人の有無などを事前に確認しておくことで、あとで問題が発生することを避けることができます。
また、売り主から過去の状況を確認する必要があります。今の入居者はいつから入居しているのか、家賃の滞納はないのか、過去に空室の時期があったかなどを確認しましょう。将来はわかりませんが、過去のデータからある程度の推測は可能です。
5.2. 撤退しやすい借入額を選ぶ
ワンルームマンション投資は流動性も高く、初心者にとって始めやすい投資ですが、投資に絶対はありません。入居者がずっとつかない、入居者が自殺してしまったなど不測の事態も考えられます。
そのため、初めての投資で巨額の借り入れをすることは危険です。借り入れの額は最低限の額で設定し、緊急事態が発生した場合には撤退できる額にしておくようにしましょう。小さく少しずつ始めていくのが投資の原則です。
5.3. ランニングコストを試算する
不動産投資は初期費用のみでなく、ランニングコストが発生します。税金や管理費・保険料などが年間いくら発生するのかを試算してみましょう。
また、修繕費も発生します。オーナーには設備が破損した場合や、経年劣化により故障した設備などを修繕する義務があります。
ドアノブが壊れた、エアコンが動かない、便座の洗浄機能が壊れたなどが考えられます。これらの費用は、定期的に発生する可能性が高いので、ランニングコストとして試算する際に入れておくことが大切です。
5.4. 実質利回りまで計算する
利回りを計算する際には、表面利回りと実質利回りがあります。表面利回りとは、物件価格に対して家賃収入をどれくらい得られるかを表します。計算式は以下の通りです。
ただし、実際の収益性を見る際は、物件価格以外にもかかる費用を考える必要があります。その際に用いるのが、実質利回りです。各種コストも考慮して利回りを算出します。計算式は以下の通りです。
ワンルームマンション投資は、対象が一室のみで計算もシンプルですので、必ず実質利回りまで計算してから投資を始めましょう。
5.5. 競合物件のレントロールや賃料相場も確認する
レントロールとは、家賃や敷金、契約期間、契約日などの条件が記載された資料です。不動産投資に欠かせない資料で、オーナーチェンジの際もレントロールをもとに不動産価格が決まります。このレントロールは、不動産業者に依頼すれば受け取ることができます。
そのため、希望の物件だけでなく競合物件のレントロールも確認し、競合物件のほうが条件が優良である場合、将来的に競争に負ける、もしくは家賃を引き下げざるを得なくなる可能性が高いと言えます。
レントロールを確認した結果、競合物件に負けている場合は、他の物件を検討することをおすすめします。
6. ワンルームマンション投資はミドルリスク・ミドルリターン
ワンルームマンション投資は儲からないと言われがちですが、状況によっては魅力的な投資先です。
不動産投資で成功するかどうかは、不動産投資方法というよりも勉強の可否によります。そのため、適切に管理・運営ができればミドルリスク・ミドルリターンの堅めの不動産投資になり得ます。
まずは物件の内見を積極的に行い、専門家や経験者の話を聞いてみましょう。