海外不動産投資に興味はあるけれど、何から始めたらよいのかわからないという人も多いでしょう。本記事では、海外不動産投資メリットやデメリット、始め方やリスクについて説明します。
また、どんな人に向いていて、注目すべき国がどこなのかなど、これから海外不動産投資を始めようとしている人に知ってもらいたいポイントもあわせて解説します。
1. 需要急増?今さら聞けない「海外不動産投資」とは?
海外不動産投資とは、海外の不動産を購入し、賃貸収入によるインカムゲインや、売却によるキャピタルゲインを得ることをさします。
海外不動産投資には日本では得られないメリットがあるため、多くの投資家に注目されています。また、リスクを回避するために、分散投資を目的として海外不動産に投資する場合もあります。
ただし、海外といっても、ヨーロッパやアメリカなどの先進国と、タイやマレーシアなどの新興国では特徴やメリットなどが異なります。その国の税制や市場などの理解が必要です。
2. 海外不動産投資は儲かる?投資家が注目する理由とは?
海外不動産投資は儲かるのでしょうか。ここでは、多くの投資家に注目されている理由を、キャピタルゲインとインカムゲインの両側面から紹介します。
2.1. 海外には不動産価格が上昇を続けている国がある
2021年の地価公示によると、日本では5年ぶりに住宅地が全国平均で下落となりました。つまり、一部のエリアを除き、不動産価格は下落傾向にあるということです。
一方、世界的には不動産価格が高騰しており、2006年の世界金融危機以前の上昇率になっています。価格が上昇傾向にある国であれば、短期的な保有であってもキャピタルゲインを得ることが可能です。国内よりも海外へ目を向ける投資家が増えているのも頷けます。
2.2. 人口が増加している国は安定した家賃収入を得やすい
人口が増加傾向にある国では賃貸需要が高まるため、空室リスクも小さくなります。競争率が高いエリアであれば、賃貸価格も下げる必要がなく、安定してインカムゲインを得ることができます。フィリピンやタイ、マレーシアに人気があるのは、そうした理由からです。
しかし、人口が増加している国の場合でも、ターゲット層や賃貸物件の供給量によっては空室リスクがないとはいいきれません。国だけでなく、エリアの選定も重要なポイントになります。
3. 海外不動産投資の代表的な3つのメリット
海外不動産投資に注目が集まるのは、日本では得ることができないメリットを実感できるからです。前述の通り、不動産価格の上昇率や空室リスクが少ないことも利点です。本項では特に紹介したいメリットを3つ紹介します。
3.1. 日本の不動産よりも高い利回りを目指せる
利回りとは、投資金額に対する収益の割合のことです。また、通常1年間の「年利回り」のことをそう呼ぶことが多く、投資した元本から1年間にどれぐらい利益が得られたかを表す指標となります。
海外不動産投資サイトのGlobalPropertyGuideによると日本の利回りは2.66%ですが、インドネシアは7.09%、フィリピンは6.13%で日本の3倍以上の利回りです。海外不動産投資をするうえで利回りの高さは大きなメリットになります。
利回りから不動産投資先を選定するのも1つの方法ですが、外国人に対する規制が厳しい国もあるため、総合的に判断する必要があります。
3.2. 投資のリスクを分散できる
不動産投資に限らず、投資先を分散させることはリスク回避として、広く用いられている手法です。国内だけでなく海外不動産に対しても投資することにより、リスクを分散することができます。
海外で賃貸収入を得ることができれば、外貨で資産を積み立てることができ、円安のリスクに対応することができるでしょう。
また、東南アジアは不動産価格が安く、利回りが高いなどのメリットがある場合もありますが、外国人に対する制度が厳しく変更されることもあります。さまざまなケースに備えて不動産投資先を分散させておくとよいでしょう。
3.3. 法人は節税効果が見込める
以前は個人、法人いずれも減価償却等による節税効果を享受することができました。しかし、2020年の税制改正により、個人は減価償却の計上が認められなくなりました。
これに対し、法人については、依然として海外不動産による減価償却費を計上でき、本業の利益を圧縮することができます。
4. 海外不動産投資のデメリットも3つあげられる
海外不動産投資にはデメリットもあります。本項では代表的な3つのデメリットを紹介します。
4.1. 情報が少なく判断が難しい
海外不動産投資について情報を得ることは、国内での場合と比べて難易度が高く、判断するための情報が少ないことがあげられます。言語の問題に加えて文化や法律の違いもあり、海外不動産投資を難しく感じる人は多いでしょう。
また、国内で不動産を探すような感覚で海外不動産を下見することができないため、現地での情報収集も限られるでしょう。海外不動産投資を検討する場合は、比較的情報が少ない状態で投資先や購入物件を判断する必要があります。
4.2. 資金調達のための融資が通りにくい
国内の金融機関すべてが海外不動産物件の融資をしているわけではありません。担保評価が難しいこともあり、限られた金融機関に相談する必要があります。
また、国内の不動産と比べて審査が厳しく、希望金額が借入れできるとは限りません。金利が高い可能性もあります。
海外の金融機関から借入れする方法もありますが、現地での収入がない場合は難しく、ハードルはかなり高いと思ったほうがよいでしょう。なるべく現金で購入できる範囲で投資することをおすすめします。
4.3. 世界情勢の影響を受ける
海外不動産投資では世界情勢に影響を受けることがあります。たとえば、為替リスクや政治的なリスクです。とくに新興国の場合は政治が不安定なケースがあるため注意が必要です。
これらのリスクについては、次項でさらに詳しくご紹介します。
5. 失敗する例|注意すべきリスクを解説
海外不動産投資に失敗しないためには、どのようなことに注意したらよいのでしょうか。ここでは特に気をつけておきたい、注意すべきポイントを2つ、前章よりも少し踏み込んで紹介します。
5.1. 新興国では政治状況も不動産価格に大きな影響を与える
前章で触れた通り、新興国では政治体制の変化や急激な経済状況の悪化などにより、不動産投資に関して損失が発生しやすいリスクがあります。
先進国ではまったくないというわけではありませんが、新興国ではその振り幅が大きいことに注意が必要です。カントリーリスクといわれるものです。
政治や経済の変化は、不動産価格にかなりの影響を与えます。たとえばクーデターや戦争、内乱などが起きたときには、海外企業が撤退してしまう可能性があります。外国駐在人をターゲットにした不動産投資だと、大きな損失が発生するでしょう。
また、新興国は政治が不安定なケースや、外国人への規制や税制が急に変わるケースもあります。そういったリスクを回避するためにも、現地エージェントから常に情報を得られるようにしておきましょう。
カントリーリスクがある国での不動産投資は、不測の事態に備える必要があります。無理のない範囲で、資金にも余裕を持って行うことが重要です。
5.2. 為替の下落により利益が減少する
海外不動産投資のリスクの1つが為替リスクです。円高になれば、賃貸収入は為替の影響で目減りします。逆に円安であれば、その分収入が増えます。また、為替は不動産売却時にも影響しますので、為替の動向をみて売却のタイミングを考える必要があるでしょう。
また、その通貨を国内で使う場合は、日本円に両替する必要があります。このとき、為替レートによって利益が目減りすることがあるので、両替のタイミングも重要です。
さらに、物件の購入に際して国内でローンを組んだ場合には、海外で得た資金を両替して支払うことになるため、ここでも為替リスクが発生します。
6. 儲かりやすいのはどんな人?誰でも始められる?
海外不動産投資で利益を出しやすい人はどんな人なのでしょうか。また、誰でも始めることができるのでしょうか。本項では海外不動産投資に向いている人を3タイプ紹介します。
6.1. 現金で物件を購入できる金銭的な余裕がある
海外不動産に対して融資を行う金融機関は限られています。オリックス銀行やSBJ銀行など、一部の金融機関では海外不動産にも融資していますが、審査は厳しく、借入期間が短い場合や金利が高い可能性があります。
投資先の海外の金融機関でローンを組むことも基本的には難しいケースが多いです。したがって、全額もしくは大部分を現金で購入できるような、資金に余裕がある人が向いています。不測の事態も考慮して、資金をプールしておく必要もあるでしょう。
6.2. 将来的に海外移住の予定がある
リタイア後や近い将来、海外に永住する予定がある場合は、その希望する国で不動産投資をすることで、永住権を獲得できるケースがあります。投資家ビザといわれる制度で、アメリカやタイ、スペインなどで認められています。
投資額は数千万円以上を条件としている国が多く、資金に余裕がない場合は難しいですが、海外に移住する予定がある人には特におすすめです。
6.3. 海外で長期の移住経験がある
投資先や海外での長期移住経験がある人にもおすすめであるといえます。英語や現地の言語が堪能であれば、現地の不動産会社とのコミュニケーションがスムーズになり、ストレスを感じることが少ないでしょう。
また、土地勘がある場合、投資不動産を選定する場合にリスクを回避できる可能性が高いです。文化や習慣などをイメージできれば、不測の事態が発生した場合にも対処できる可能性があります。
7. 海外不動産投資の3つのやり方・始め方
7.1. 海外物件を取り扱っている日本の不動産会社から購入する
日本の不動産会社から海外不動産を紹介してもらい、そこを窓口として購入することが可能です。しかし、どこの不動産会社でも扱っているわけではありませんので、インターネットなどで海外不動産を扱っている不動産会社を探すのがよいでしょう。
無料セミナーや説明会などを実施している場合もあるので、まずはそこで情報収集するのも1つの方法です。日本の不動産会社であれば言葉の問題がないため、ストレスなく相談ができます。
また、なかには海外に事務所を設けている会社もあり、現地の情報を入手することも可能です。まずは日本の不動産会社に相談することをおすすめします。
7.2. 言語に自信があるなら現地の不動産会社から購入する
英語や現地の言葉に自信がある場合は、不動産投資先として検討している海外の不動産会社に相談するのもよいでしょう。現地の不動産会社であれば、エリアの特徴やターゲット層など、現地ならではの情報を得ることができるメリットがあります。
多少言語に不安があったとしても、日本語での対応ができる人がいる不動産会社へ依頼する方法もあります。
注意すべき点は、日本のように物件紹介から契約、引き渡しまでの業務を一貫して行う不動産会社と、そうでない会社がある点です。どこまでサポートが受けられるのか確認するようにしましょう。
7.3. 海外の法律に詳しい専門家にアドバイスをもらう
海外不動産投資をする場合には、その国々の税制やルールなどを理解する必要があります。専門的な知識を必要とする場合は、海外不動産専門の不動産会社や海外の不動産に詳しいファイナンシャルプランナーなどに相談することをおすすめします。
専門家のアドバイスを得ることにより、リスクを軽減することが可能です。これは海外に限ったことでなく、国内で不動産投資をする場合にも同じことがいえます。
8. これから海外不動産投資を始める際に注目の国や地域
海外不動産投資を検討する場合、キャピタルゲインを期待するのであれば、GDPの成長率が高く、人口が増加傾向である国がよいでしょう。
IMFのデータによると、GDPの成長率が平均して高いのはアジアの国々です。すでに経済が成長している先進国は、新興国と比較すると低くなる傾向があります。
2025年の予測値では、日本など先進国のGDP成長率は下がる見通しですが、フィリピンやベトナム、カンボジアなどでは6%超の成長が見込まれています。キャピタルゲインを期待するのであれば、こうした国々が候補となるでしょう。
国際連合による2015〜2020年の人口増加率は、日本は-0.2%ですが、カンボジアやベトナム、フィリピンは1%を超えており、急激ではないものの安定した増加傾向になります。人口の増加は、キャピタルゲインだけでなく、空室リスクを軽減できる要因にもなるので、注目すべきポイントです。
まとめ
海外不動産投資は日本での投資と違い、多くのメリットを得られる場合があります。しかし、一方でデメリットやリスクがあるので注意が必要です。
メリットとデメリットを知ったうえで投資をすることができれば、メリットを最大限生かし、リスクを最小限に抑えることも可能でしょう。
大切なことは海外の市場や税制、投資に向いている国を知ることです。ぜひ多くの情報を得て投資先を選定してください。