カンボジアはGDP成長率や人口増加率が高く、アジアのなかでも不動産投資国として特に魅力がある国です。しかし、外国人は土地の所有ができないなどのデメリットもあります。
本記事ではカンボジア不動産投資のメリットだけでなく、リスクや注意すべき点、今後の見通しについて解説します。
1. カンボジア不動産投資がバブル期といわれるのはなぜか
近年カンボジア不動産投資は「バブル期」を迎えているといわれています。しかし、果たしてそれは本当なのでしょうか。本項では、カンボジア不動産投資がバブル期にあるといわれる理由を、5つのポイントで検証していきます。
1.1. 著しく成長する経済、将来性が見込める
外務省の基礎データによれば、近年、カンボジアでは主要産業のサービス業や建設業が順調に成長し、2011年から2019年までは約7%の経済成長率となりました。これはアジアでもトップクラスの成長率です。
2020年には新型コロナウイルス感染症拡大によりマイナス成長となったものの、2021年には再びプラス成長となり、IMFの見通しによると2023年には5.9%になると試算しています。また2025年にはASEANのなかで最も急成長を遂げるだろうと見込まれています。
1.2. 世界的に信頼度の高い米ドルが流通している
カンボジアの通貨はリエルですが、実際流通しているのは米ドルです。その流通量は90%以上といわれており、東南アジアでは唯一の米ドル流通国といえます。
新興国で不動産投資をする場合、通貨価値の変動は気になるポイントであり、資産が目減りする可能性も秘めています。その点、カンボジアでは米ドルで家賃収入を得ることができるため、安定して資産を積み立てることができます。
インカムゲインだけでなく、キャピタルゲインも米ドルで得ることができる点は大きな魅力の一つといえます。
1.3. カンボジアに非居住でも口座開設が可能である
現状、カンボジアでは非居住者であっても銀行口座を開設することができます。ただし、すべての銀行で非居住者が口座開設できるというわけではないので注意が必要です。
たとえばプノンペン商業銀行の場合は、パスポートと雇用証明を必要としていますが、アクレダ銀行の場合はカンボジアへの渡航は不要で、郵送で口座開設が可能です。アクレダ銀行は三井住友銀行が筆頭株主であり、日系企業が株式の約3分の1を取得しています。
カンボジアの平均金利は2.0〜5.0%と非常に高く、日本の銀行の1,000倍以上です。米ドルを高い金利で預けることができ、利息収入も期待できます。
1.4. 若者の人口比率が高く賃貸需要が見込める
少子化が進む日本では2008年ごろから総人口が減少し始めており、今後さらに高齢化が進む見通しです。将来的には人口ピラミッドは、つぼ型になるといわれています。
一方、カンボジアでは年々右肩上がりに人口が増加し続けており、人口ピラミッドの形も理想的なピラミッド形を描いています。今後も労働人口が増加することは明らかです。働く世代の増加は消費も生むため、今後更なる経済成長と共に、賃貸需要の高まりも見込まれるでしょう。
参考元:カンボジア>総人口(世銀統計)|GLOBAL NOTE
1.5. 一等地にある不動産を安価で購入できる
海外不動産ガイドであるGlobalPropertyGuideのデータによると、カンボジアの平方メートルあたりの不動産価格は2.913米ドルとあり、約16.3米ドルである日本の6分の1です。また、アジア諸国と比較してもまだまだ安く、台湾の3分の1です。
最近プノンペン市内のアパート供給は増加傾向にあり、今後もコンドミニアムの完成が続くことを考慮すると、賃貸物件が過剰供給となる可能性があります。一等地とされる不動産を安価で購入できる可能性が高い状況といえます。
参考元:自由落下中のカンボジアの住宅価格
2. 気になるカンボジア不動産投資の利回りと価格推移
ここからは気になるカンボジア不動産の利回りと、コンドミニアムの価格推移を見ていきましょう。
2.1. 他国と比較しても高い利回り率である
海外不動産サイトであるGlobalPropertyGuideのデータによると、カンボジアのプノンペンの利回りは5.33%です。インドネシアのジャカルタの7.09%、フィリピンのマニラ首都圏の6.13%に次いで、アジアでは3番目に高い利回りです。
ちなみに日本の東京は2.66%、香港は2.35%です。地域や広さ、タイプによって異なりますが、同じアジアのなかでは高い利回りであることがわかります。
前述の通り、預金に対しての金利が高いことは魅力です。しかし、借入をする場合にも金利が非常に高いので、カンボジア不動産投資をする場合は自己資金で購入することをおすすめします。
2.2. 数年間で地価が2倍になっているエリアも
事業用不動産サービス会社であるCBREのカンボジアレポートによると、プノンペン市内の地価は2010年から2020年まですべての地区で上昇し続けていることがわかります。
新型コロナ感染症拡大により2020年ごろに取引数が減少しているにもかかわらず、数年で2倍になっているエリアもあり、堅調に推移しています。
また、コンドミニアムの価格は2020年以降に多少下落傾向が見られましたが、比較的安定して推移しています。
3. カンボジア不動産投資におけるリスク・デメリット
カンボジア不動産投資にはリスクやデメリットがあります。本項では特に注意すべきポイントを5つ紹介します。
3.1. 購入できるのはコンドミニアムやアパートのみ
カンボジアで土地所有が認められているのは、カンボジア国民もしくはカンボジア法人(株式の51%以上をカンボジア国民が保有している法人)のみです。つまり、基本的に外国人や外国法人は土地の所有が認められていません。もちろんカンボジア法人を偽造して設立すると罰せられます。
そのため、外国人がカンボジア不動産投資をする場合は、必然的にコンドミニアムやアパートに限定されます。また外国人が購入できるのは建物の延べ床面積の70%以下とする制限もあるため、購入時に注意が必要です。現地エージェントに確認するようにしましょう。
3.2. 不動産会社選びを慎重に行う必要がある
1991年まで内戦が続いていた影響により、カンボジアでは法律関係の文書は現存せず、現在でも不動産に関連する法律が整備されていません。免許を持たず不動産を販売している会社もあるため、事前に売主や仲介会社について調べる必要があります。
日本の不動産会社では、通常物件の紹介から引き渡しまでを行いますが、カンボジアでは物件や会社を紹介するだけで、不動産売買の実務を行わないケースもあります。どこまでの業務を行うのかについて、事前に確認することをおすすめします。
3.3. プレビルド方式の物件は「竣工リスク」がある
カンボジアでは外国人向けにコンドミニアムが数多く開発されており、建設工事途中である「プレビルド」の物件が多く販売されています。
買主が支払った代金をそのまま工事費に充てる、自転車操業となっているプロジェクトもあります。その場合、物件の売れ行きが悪いと建設費が不足し、完成しないケースもあるため注意が必要です。完成しなかった場合、頭金や中間金は戻ってきません。
竣工リスクを避けるためにも、信頼できる大手ディベロッパーなどの開発物件を選ぶことが非常に重要です。またディベロッパーの実績や売れ行きも確認しましょう。
3.4. 面積表記が2つある
カンボジアではコンドミニアムの面積表記が2通りあります。「ネット面積」と「グロス面積」です。ネット面積とは、住戸内の床面積とバルコニーの面積を合計したものをいいます。日本でいう専有面積のイメージです。
一方、グロス面積とは、建物全体の延べ床面積を戸数で割った数字です。共用部分である廊下や階段部分も含まれます。グロス面積を参考にするとかなり実際の面積と異なりますので、購入を検討する場合はぜひネット面積を参考にしてください。
3.5. 登記の制度が整備されていない
前述の通りカンボジアでは内戦時に法律関係の文書が処分されたため、不動産所有に関する記録も残されていません。よって1979年以前の所有権は無効とされています。現在不動産登記は進められていますが、依然として国土の半分以上が未登記の状態です。
日本では不動産登記はデータベース化されていますが、カンボジアでは手書きの登記簿で管理されている状態です。不動産登記を確実なものにするためには、不動産登記までの業務を行う不動産会社に依頼することが重要です。
4. カンボジア不動産投資に失敗しないための対策
カンボジア不動産投資のリスクやデメリットを理解したうえで、失敗しないためにはどのようなことができるのでしょうか。本項では4つの対策を紹介します。
4.1. 正確な情報の取得の他ブログなども目を通す
カンボジア不動産投資を検討する場合、正確な情報を得ることが重要です。数は多くありませんが日本の各省庁や団体が公表しているデータや、民間企業のレポートなどを参考にしましょう。
カンボジア不動産を扱っている不動産会社に、不動産市場や国の情勢などを直接問い合わせることも必要です。
また、実際にカンボジア不動産投資をしている人のブログなども参考になります。実践的な情報や失敗事例などを知ることができますので、ぜひ参考にしてください。
4.2. 現地を視察する
不動産会社から情報を得て物件選びをすることは重要ですが、なるべく現地を視察したうえで物件を選定することをおすすめします。カンボジア渡航歴がない場合は、イメージと現状が異なる可能性があります。
環境や周辺エリアの特徴などを確認できると、空室リスクを抑えられる可能性もあります。また、プレビルドの場合には実物は内見できませんが、セールスギャラリーという形で参考になる部屋を内見できる場合もあります。なるべくご自身の目で確認し、慎重に物件選びをするようにしてください。
4.3. あらかじめ出口戦略を検討する
カンボジア不動産投資をする場合、不動産価値が急激に上昇する可能性がある一方で、竣工リスクや空室によるリスクも考えられます。
事前にあらゆる可能性を想定して出口戦略を検討しておくことで、キャピタルゲインを最大化できるタイミングで売却できる可能性が高くなります。一方でリスクが生じるような場合には、早期に対応することで損失を最小限に抑えることができるでしょう。常に情報収集し、いつでも対応できる状態でいることが重要です。
4.4. 信頼できる不動産会社に依頼する
前述の通り不動産会社選びは重要です。不動産物件選定の際にエリアの特徴やターゲット層について的確なアドバイスをもらうことができれば、リスクを軽減できる可能性があります。販売実績や日本人との取引経験の有無などを確認し、信頼できる不動産会社を選びましょう。
5. カンボジア不動産投資で注目のエリア「プノンペン」
カンボジア不動産投資を検討する場合、今後も人口の増加が大きく期待できるプノンペンを選ぶのが王道といえますが、プノンペンにも地域により特徴があります。本項では代表的な3つのエリアの特徴を紹介します。
5.1. 高級住宅街「ボンケンコン」
プノンペンのなかでも外国人駐在員や、カンボジアの富裕層が多く住むエリアです。日系ショッピングセンターのイオンモールからも近く、高級レストランやスターバックスカフェなどが多く集まるエリアで、プノンペン随一の繁華街といえます。
ボンケンコンは「BKK」と呼ばれ、「BKK1」~「BKK3」まであります。ちなみに一番地価が高いのは「BKK1」です。日本食店も複数あるため、日本人駐在員が多く住んでいるエリアです。
5.2. 日本大使館がある「チャムカモン」
日本大使館があるチャムカモンにはカンボジアイオンモール1号店があり、比較的治安もよいことから外国人に人気のあるエリアです。他にもカジノ「ナガワールド」やロシアンマーケットなど商業施設が多く集まっています。
チャムカモンは外国人だけでなく現地の富裕層も多く住んでいるため、ローカルな雰囲気も感じられるエリアといえます。
5.3. オリンピックスタジアム周辺「7マカラ」
オリンピックスタジアムやオリンピアモールなどがあることで有名なエリアです。オリンピックスタジアムではありますが、オリンピックが開催されたことはありません。
7マカラにはプノンペンタワーというランドマーク的なオフィスビルがあり、オフィス街のイメージです。コンドミニアムが多く立っているエリアで、不動産投資をする候補地としても検討できるエリアです。
6.【2022年以降】カンボジア不動産投資の今後
カンボジア不動産投資を検討するうえで避けて通れない問題といえば、今後導入予定の「キャピタルゲイン税」です。不動産や株式などすべての資本投資に適用される税金で、利益に対し税率20%が課される予定です。
当初2020年7月に税率20%で導入が計画されていましたが、新型コロナウイルス感染拡大により複数回延期された経緯があります。
カンボジア租税総局(GDP)は国の歳入を増やすことを目的としていますが、一方でキャピタルゲイン税の課税を避けるため、今後不動産の売却が加速するのではないかという見方もあります。価格の急落を招く可能性もあり、今後の動向が気になるところです。
まとめ
今後、人口増加と経済成長が期待できるカンボジアでの不動産投資には、大きな魅力があります。
しかし、不動産に関する制度等が日本とは大きく異なるので、安易に投資を進めてしまうとリスクもあるため、注意すべき点があるのも事実です。
カンボジア不動産投資に限りませんが、エリアの選定や国内の情勢などの情報収集が大切です。ぜひ、信頼できる現地の不動産会社と相談のうえ、投資物件を選定してください。