「工場にいくらでもあるじゃないか?」従業員がわざわざ〈店舗で買った自社商品〉を食べていたワケ

「工場にいくらでもあるじゃないか?」従業員がわざわざ〈店舗で買った自社商品〉を食べていたワケ

多くの波をかいくぐり、いよいよ自社ブランドで勝負することになった北海道の豆菓子店。自社名が表に出ることにより、従業員たちの姿勢もこれまでと大きく変化することになります。店舗運営で顧客と直接接点を持つことからビジネスチャンスも広がり、二代目社長が就任して初めて「追い風」が吹いてきました。

自社ブランド確立に向けた「追い風」が吹いてきた

自社ブランドの直販を事業化していく中で、我々は菓子作りとは別に新たな業務が増えました。それは、最終消費者であるお客さんとの接点を強化し、コミュニケーションを活性化することです。OEMはメーカーがお客さんですが、自社ブランドは直販です。メーカーの指示通りに作るのとは違い、お客さんが求めている菓子を作らなければなりません。そのためには、知りたいことがたくさんありました。

 

誰がどんな菓子を好むのか、どんな場面でどんな時に食べるのか、店舗展開はそういった情報を集めるための手段ですが、私の会社のことをより多くの人に知ってもらうためにはもっと幅広い層の人を対象として、店に来る機会が少ない人とも接点を作る必要があります。そこで考えたのが「豆まきイベント」です。

 

もともと節分のころには、本社近隣の住人を呼ぶ豆まきイベントを行っていました。これを拡大し、節分向けの商品ラインナップを増やしました。また、このイベントが地域のテレビ番組などで紹介されるようになり、約1週間のイベント期間中に、累計で1万人以上が集まるイベントへと成長していくことになりました。一方で、より広い範囲に向けたコミュニケーションとして、鬼ブランドのテレビCMもスタートさせました。

 

このころから、自社ブランド確立に向けた追い風が吹き出します。認知度の面では、女優や俳優がお気に入りの菓子として私の会社の創作豆菓子をテレビなどで紹介してくれるようになり、その都度、お客さんが増え、売り上げも伸びました。味の面では、北海道加工食品コンクールで「さっぽろちょころ」など菓子業界の名誉ある賞を受賞するようになりました。

 

豆まきイベント「節分フェスタ」また、北海道企業としても、北海道とともに成長することを掲げた企業の取り組みが注目されるようになり、地域の農商工団体、JETRO(日本貿易振興機構)、行政などから評価されたり、工場の品質管理が評価されたりするようになりました。

 

振り返ってみれば、社長に就任して以来、追い風が吹いたのはこの時が初めてです。それまではずっと向かい風でした。中国製品の台頭や本州メーカーの進出といった逆風に耐え、レッドオーシャンの中で生き延びる道を模索しながら、ようやく追い風が受けられるブルーオーシャンを見つけることができたのです。

 

社長就任当初に挑戦した新商品開発や自社ショップ展開も、逆風の中での挑戦でした。当時はいずれも失敗に終わりましたが、今回は両方ともうまくいっています。その差はどこにあったのだろうと考えた時、私は従業員にあると気づきました。

 

ことの発端は、元気がない従業員のことを思い、「誇りと自信が持てる事業を作り出そう」と決断したことです。きっかけは何だったか。自社ブランドを作りたいという従業員の声でした。そして、その思いに他の従業員が共感し、一丸となって努力してくれました。それが、名実ともに評価されるようになった最大の要因です。

 

従業員の力が会社を育てます。そう実感して、私はこの時、従業員を大事にする会社でなければならないと思い、今後のあり方がはっきり見えるようになったのです。

 

 

池田 光司

池田食品株式会社 代表取締役社長

 

 

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