(※写真はイメージです/PIXTA)

子どもは、ほんのちょっとしたことで、自分とまわりの子を比較して劣等感を持ち、自己否定に走りがちです。アドラーは、そんな状況に直面した子どもに自信を持たせることの重要性を説きました。精神科医の和田秀樹氏が著書『アドラー流「自分から勉強する子」の親の言葉』(大和書房)で解説します。

日本の詰め込み式の教育は成功事例

■できないんだったら答えを見てもいいよ

 

日本の教育の問題点の一つは、本来は大人になってから身につけるべきことまで、子どものころから求めすぎてしまうところにあります。

 

その一例が、2020年度から実施された大学入試制度改革です。この改革では、センター試験が廃止され、大学入学共通テストが導入され、記述式問題の導入が検討されました。

 

「知識偏重型の教育をやめて、暗記力を問う試験ではなく、子どもが考える力を問う試験方式に変える」

 

こう聞くと、いかにももっともらしく、教育上の効果も高いように思えます。しかし、果たして本当でしょうか。

 

冷静に考えれば、世界中の国を見渡しても、初等中等教育においては詰め込み型の教育に力を入れています。むしろ、そもそもは日本の詰め込み式の教育は成功事例として、アジアや欧米各国の手本とされてきた経緯があります。

 

こうした国々では、まず詰め込み式の教育を行い、大学に入学後にそれまで身につけた知識を疑う教育、知識を応用する教育を施しながら考える力を伸ばしてきたのです。

 

それに対して、日本では、考える力を大学入学までに求めようとしています。単に大学の教授がラクをしたいがためでは、と勘ぐりたくもなります。

 

現に、日本の大学には魅力のある教授がいないという定説がまかり通っており、世界の優秀な留学生が集まらないのが実情です。海外では、大学卒よりも大学院卒、大学院卒よりも博士卒のほうが就職でもはるかに厚遇されていますが、日本では「高学歴ニート」などという言葉もあるくらい、大学院卒は敬遠されています。大学に長くいた人ほど使い物にならないと思われているからでしょう。

 

もちろん考える力を伸ばすことは大切です。しかし、「算数の問題をできるようになるまで考えろ」と強制していると、子どもの多くは算数に劣等感を持つだけです。

 

「できないんだったら答えを見ていいよ。それで次にできるようになったらいいじゃないか」

 

こう言うだけでも、算数嫌いは減るはずです。教育には順序や段階があるのです。

 

和田 秀樹
和田秀樹こころと体のクリニック 院長

 

 

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