実は、資格を持たずに不動産投資をしている方は多いです。しかしながら、資格を取得したほうが不動産に対する知識や見識が広がるため、役に立つ場面は多いです。
この記事では、不動産投資に資格が必要であるかを解説しつつ、実際に投資に役立つ資格や取得する具体的なメリットについて詳しく紹介していきます。不動産投資を始める前に資格が必要か悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
1. 不動産投資のために資格は必要か?
結論から述べると、不動産投資をするために資格は必要ありません。実際に、資格を何も持たずに不動産投資をしている方が多く見受けられます。
しかし、資格を所有していれば不動産に対する様々な知識を得られるため、不動産投資での失敗を避けられる可能性もあります。
特に不動産投資では、法律や税金に関する知識は必要になるため、資格取得のために得た知識や見識がとても役立ちますので、不動産投資を始めるにあたって決して無駄にはならないでしょう。
2. 不動産投資に役立つ資格12選
不動産投資に役立つ資格といっても、金銭管理をするものから、税金を管理するもの、マンションや物件に特化したものなど様々なものがあります。
それぞれの特徴を理解し、取得することによって得られるメリットを選ぶようにしましょう。ここからは不動産投資に役立つ資格を12個紹介していきます。
2.1. 宅地建物取引士
宅地建物取引士とは通称「宅建」と呼ばれている国家資格の一つで、不動産の売買や賃貸物件のあっせんをするときに、その建物と土地についての「重要告知事項」を伝える重要な仕事を担います。
不動産売買や賃貸借の仲介を行う際は、一つの事務所で「業務に従事する者」5名につき1名以上の宅地建物取引士の設置が法律で義務付けられています。不動産に関する重要告知の説明は宅地建物取引士という資格を所持していないとできない独占業務なのです。
宅地建物取引士を取得することによって得られるメリットは以下の通りです。
・独占業務を行える
・不動産に関する知識や法律を学ぶことができる
・税金の取扱いが詳しくなる
不動産取引に関する知識や税金のルールといった基本的な内容を学びます。合格率は15%前後と難易度が高いため、合否に関わらず知識を得るために勉強を始めてみるのもおすすめです。
2.2. 賃貸不動産経営管理士
賃貸不動産経営管理士とは、賃貸不動産管理に必要な専門的な知識・技能・倫理観を所有し、賃貸管理業務全般を担う資格です。管理の適正化・健全化に寄与することを目的としている資格制度でもあります。
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律において、設置が義務付けられている業務管理者の一つです。
賃貸不動産経営管理士は実務に直結する知識を学べるため、一度学ぶとその後の賃貸住宅経営で活用ができ、不動産の資格を学びたいと考えている方にはおすすめできる資格です。
賃貸不動産経営管理士の取得によって得られるメリットは以下の通りです。
・建物や設備に関する基礎知識を身につけることができる
・賃貸住宅経営上でのトラブルが発生しても、独自で判断を下せるようになる
・賃貸住宅の募集から契約までの流れを学ぶことができる
・賃貸借契約に関連する法律を学べる
・不動産管理について学ぶことができる
・不動産管理について学ぶため、管理会社と話すときに対等に話ができるようになる
・管理会社や仲介業者とやりとりする際に優位に立てる
・賃貸住宅経営を行ううえで、さまざまな経営判断を取れるようになる
上記のように、賃貸住宅を経営するうえでの様々な知識を得られるため、不動産投資を始めるときにはまず取得を目指したい資格だといえるでしょう。
2.3. ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナーとは、通称「FP」と呼ばれる資格で、長期的な人生のイベントや目標を実現できるように、経済面からサポートするお金の専門家です。
お客様のお金の動きや、収入、資産、負債などを分析し、長期的な資金計画を立て、貯蓄計画、保険、投資対策など総合的な資産設計を行う仕事です。
不動産投資の面でファイナンシャルプランナーの資格を取得することで得られるメリットは以下の通りです。
・不動産投資や不動産に関連する法制度を学べる
・キャッシュフローを作成できるようになるので、物件購入前の資金計画が容易になる
・資金計画ができるようになるので、不動産投資の失敗を最小限に抑えられる
実はメリットはこれだけではなく、対外的な信用も増すといわれており、物件購入の際にキャッシュフローを作成し金融機関に持っていけば、好条件での融資獲得が可能になります。
2.4. マンション管理士
マンション管理士とはマンションの構造や管理組合の仕組みなど、マンションの維持・管理について学ぶ資格をさします。なかなか聞かない資格名でもあるので、知っているという方は少ないのではないでしょうか。
マンション管理士の資格を取得することで得られるメリットは以下の通りです。
・マンション管理組合の仕組みを学べる
・マンションの構造や技術面が学べるので専門的知識が得られる
・管理組合の総会や理事会の内容を理解できるようになる
マンションに関する様々な知識を得られるので、今後マンション経営を考えている方に向いている資格であるといえます。
2.5. 管理業務主任者
管理業務主任者とは、マンション管理業務を行う際に必要になる国家資格の一つです。宅地建物取引士と同様に独占業務が設けられており、管理業務の報告や委託契約に関する専門的知識を学ぶことができます。
管理業務主任者を取得することによって得られるメリットは以下の通りです。
・契約書類の内容を事細かに理解できるようになる
・独占業務を担える
・物件管理について法的な対応の取り方が学べる
・建物の設備や修繕に関する知識が得られる
賃貸借ではなく、主に売買契約時と管理面でのメリットが大きい資格だといえます。管理業務に関する書類の内容を説明する責任を担うため、より深く複雑な知識を学ぶ必要があります。
2.6. 簿記
簿記とは、お金の出入りを記録する方法のことで、日々の取引や活動を帳簿に記入していく作業のことを指します。主に経理事務には必須の資格ですが、実は不動産投資にも役立ちます。
会計や税金に関する知識として簿記を学ぶことで、日々の経理業務や銀行へ提出する書類の作成など様々な場面で活用できます。
簿記を学ぶ具体的なメリットには下記のようなものがあります。
・貸借対照表や損益計算書がわかるようになる
・銀行融資に必要な書類を作成できるようになる
・確定申告の流れがわかるようになる
主に金銭的な面で活用することができ、お金の重要性について見極められるようになります。
赤字の際は収支バランスを調節したり、節税に関する知識も発揮できたりするため、さまざまな面で役立つでしょう。
2.7. 不動産実務検定
不動産実務検定は不動産運用にまつわる実務知識を体系的に網羅した不動産投資専門資格です。日本初の不動産投資専門資格であり、ライフプランニングや、不動産投資、満室経営、税金、建築、ファイナンス(金融)、土地活用コンサルティングなどの幅広い知識を学ぶことができます。
不動産実務検定を取得することによって得られるメリットは以下の通りです。
・不動産投資の基礎を学べる
・賃貸管理の運営ノウハウを学べる
・税務、経営、金融、土地に関する知識をつけることができる
この資格を持っているだけで優遇される資格ではないですが、不動産投資初心者が身につけるべき基礎知識を学べるため、不動産投資を始める前にまず学んでみることをおすすめします。
2.8. 投資不動産取引士
投資不動産取引士とは、投資用不動産の取引実務に必要な知識やスキルを所有する専門家を認定する資格となります。投資不動産の売買におけるコンサルティングや、適切な判断、投資対象物件のメリットやリスクの明確化、トラブルやリスクを回避し未然に防ぐといった、投資に対してさまざまな業務を担う重要な仕事です。
投資不動産取引士を取得することによって得られるメリットは以下の通りです。
・投資不動産取引実務に必要な知識を身につけられる
・取引できる環境を提供し高い信頼を獲得できる
投資不動産取引士は、法務省認定のADR(裁判外紛争解決制度)調停人の基礎資格に認定されています。
2.9. ホームインスペクター
ホームインスペクターとは、住宅診断士とも呼ばれる資格で、不動産の不具合事象やどのくらいお金が必要なのか、あと何年くらい持つのかを診断する仕事を担います。
住宅に精通し、第三者の目線と専門家の目線から住宅の劣化状況や不具合事象の有無、改修すべき点やその時期、おおよその費用などを見極めアドバイスを行う専門職業です。
ホームインスペクターの資格を取得することにより得られるメリットは以下の通りです。
・欠陥住宅を購入するリスクを減らせる
・売買後のトラブルを未然に防げる
・既存住宅瑕疵保険に加入できる
ホームインスペクターは「住宅のお医者さん」とも呼ばれている資格で、目視により屋根、外壁、室内、小屋裏、床下などの劣化状態を診断できるようになります。
2.10. 土地活用プランナー
土地活用プランナーとは、土地活用を成功に導く土地活用のプロフェッショナルのことを指します。オーナーに対して長期的で安定的な経営を実現できる健全な土地活用を提案し、成功へ導く仕事を担うのが土地活用プランナーです。
土地活用プランナーの資格を取得することで得られるメリットは以下の通りです。
・不動産や土地に適切な判断がつけられる
・物件運用における収益を見込める
・経営リスクを最小限に抑えられる
・経済の流れを把握できる
不動産投資でも必要になる、税務や法務、賃貸管理、設備、マーケティング事業収支計画の立て方など幅広い知識を身に付けることができます。
2.11. 不動産鑑定士
不動産鑑定士とは、不動産の適切な価値を鑑定する仕事を担う資格です。不動産鑑定士は「土地を売りたい・貸したい・贈与したい」といった要望に応え、土地や建物の価値を判断するプロフェッショナルです。
不動産鑑定士の資格を取得することで得られるメリットは以下の通りです。
・不動産鑑定を通じて不動産の価値を見出せる
・不動産のやりとり時の資金計画を立てやすくなる
・一般不動産取引や銀行が融資を行う際の担保評価が行える
ただし不動産鑑定士は、弁護士や公認会計士に並ぶ文系難関三大資格といわれており、難易度がとても高いため、資格取得のためではなく、知識の一つとして学ぶのもおすすめです。
2.12. 相続診断士
相続診断士は多岐にわたる相続に関する問題を理解し、一般の方への啓蒙活動を行う仕事のことを指します。相続についてのヒアリングを行い、相続診断を行っていきます。
不動産投資を行う方のなかには、節税効果を見込んで始める方もいるのではないでしょうか。相続診断士の資格を持っておくことで、相続税と不動産の関わりを理解できるようになり、資産の相続や税金対策になる投資先について把握できるようになります。
相続診断士の資格を取得することによって得られるメリットは以下の通りです。
・相続税などの税金に対する知識を身につけることができる
・不動産投資における節税対策を理解することができる
・相続税と不動産の関わりを理解できるようになる
不動産と相続税の関わりを深く理解できるようになると同時に、節税に対する見識もつけられるようになります。
3. 資格を取得するメリット…どのようなときに役立つ?
では、具体的に資格を取得することでどのような場面で役立ってくるのでしょうか。ここからは資格を取得するメリットや役立つシーンについて具体的に解説していきます。
3.1. 専門知識を得ることでリスクを回避できる
不動産投資では専門的な知識をつけなければ最悪の場合、投資に失敗して損失が出る可能性があります。
経済的な流れで失敗することはありますが、業者によっては検討させる時間を故意に減らす、すぐに決断しないと契約が無効になる、検討の時間を与えない説明をするといった悪徳業者も存在します。
このような行為は宅建業法で禁止されていますが、知識がなければ反論できずに騙されてしまう可能性もあります。
しっかりとした専門知識があれば、このような違法な不動産会社の行為に騙されるリスクを大きく減らすことができるのです。
3.2. 取引相手からの信頼度が上がる
不動産投資で資格を取得することによって得られるメリットは、取引相手からの信頼を勝ち取ることができる点が挙げられます。不動産投資での取引相手は主に「不動産会社と金融機関」を指します。
不動産投資をする人が資格保有者であれば、物件の提案もしやすくなりますし、知識を持っていることから金融機関からの融資が受けやすくなります。資格を取得することにより、不動産に対する知識を持っていると認識されるので、今後の不動産投資がよりスムーズに進めやすくなります。
また、資格の種類によっては、提案された物件の価値がわかるほか、この不動産を運用するにあたってどのくらい費用がかかるのかなど細かい部分を見出せるようになります。
3.3. トラブルに対処しやすくなる
不動産投資後に実際に物件の運用をするにあたり、様々なトラブルが発生しがちです。入居者が家賃を払わない場合や、契約更新をしないにも関わらず一向に退去する様子が見られないなど様々なケースが考えられます。
しかし、賃貸経営や法務関連の資格を取得していることにより、賃貸経営に関するあらゆるトラブルへの対処がしやすくなります。資格を取得しているおかげで支払督促や訴訟などの手段の存在に気づき、トラブルが悪化する前に対処することができるのです。
3.4. 重要書類の内容を把握しやすくなる
不動産経営においては、契約書類など様々な重要書類を確認する必要があります。資格を取得することにより、それぞれの書類の内容をより理解できるようになるため、不動産経営をスムーズに進めることができます。
不動産賃貸や売買に関する契約書や確定申告書類など、契約や税務に関する書類が多く、専門知識がないとその内容を理解することが難しい場合もあります。自身で内容を理解できなければ専門家にお願いして契約書を作成したりアドバイスをもらったりすることになりますが、内容が理解できれば、その都度専門家に依頼するコストを抑えることができるので、不動産経営のコスト削減にもつながっていきます。
4. 不動産投資で成功するためのポイント
では資格を取得する以外に、不動産投資を成功させるためのコツはあるのでしょうか? ここからは資格有無に関わらず、不動産投資に成功するための重要なポイントについて解説していきます。
4.1. 不動産投資を始める前に徹底的にリサーチする
不動産投資を始める前に徹底的なリサーチをすることは必要不可欠です。物件や土地の価値や需要のリサーチはもちろん、毎月のローンの支払額や返済までの期間、入居者による家賃で得られる収入、その他発生する費用などをシミュレーションし、本当に経営できるのかを確認してから投資を始めることが大切です。
何のリサーチもなく投資をしてしまうと失敗するリスクが高まりますが、徹底的なリサーチを行い、計画的に進めていければ成功するための道がより広くなることでしょう。
ただし、徹底的なリサーチをしても予測できないことがあります。それは、入居者の家賃滞納や不可抗力によって発生する災害などです。家賃滞納や災害はいつ発生するかわからないため、トラブルが発生した場合についても事前に考えておく必要があります。
4.2. 信頼できるパートナーを見つける
どのようなビジネスでも信頼できるパートナーが必要です。販売や管理会社とは今後も長く付き合っていく可能性が高く、パートナーとなる会社の質がとても重要となります。
さらに一緒に事業を進めていくにあたり、よいパートナーを探すためにも本記事でも紹介したような資格を一つでも有するパートナーを選ぶことが重要です。資格を有している人ならではの意見や知識、技術などを持っているので総合的に判断し適切な投資を行えるようになります。
4.3. 本業を安定させる
一般の方が不動産投資を行う場合、主に不動産投資が副業になり、他に本業を持っている方が多いでしょう。
不動産投資の資金を銀行などから融資を受ける場合、本業の職業が安定していると融資を受けやすくなります。融資額が大きいほど、より条件のよい物件の選択ができ、希望にそった投資が行えるようになります。
5. 不動産投資に関する資格は必須ではないが役に立つ
不動産投資を行うために資格は一切必要ありません。しかし、資格を有することにより、不動産の価値や税務、マンション、住宅などに関する知識を身につけることができるので、不動産投資による失敗を減らし、より成功しやすくなります。
本記事で紹介した様々な資格を実際に取得する、取得しないに関わらず、資格に関する様々な勉強を始めてみることをおすすめします。