写真提供:一級建築事務所KOTATSU+

今後、国の住宅性能に係る政策が急速に変わろうとしています。これから家を建てる方々は、その方向性を踏まえて計画を進めることが、資産価値の落ちない住まいづくりのためには重要だと思います。これから家を建てる方にとって、とても参考になるお話が聞けたと思います。今回も、住まいるサポート株式会社代表取締役・高橋彰氏が、住宅の性能向上に積極的に取り組んでおられる柿沢未途衆議院議員(自由民主党 東京15区)と田嶋要衆議院議員(立憲民主党 千葉1区)のお二人に、これからの我が国の住宅性能に係る政策の方向性を中心についてインタビューします。

「既存住宅」の性能向上こそ、最大の課題

高橋:新築については、一連の制度改正により、今後急速に高断熱化・省エネ化が進む見通しが立ちつつあるかと思います。一方で、人口は減っていて、新築の住宅着工戸数も減っているので、新築の省エネ性能向上の効果は、家庭部門の脱炭素化という観点では、限定的だとは思っています。

 

これからの最大の問題は既存住宅の性能向上だと思うんです。アルミサッシの単板ガラスの家がまだまだいっぱいあって、多くの高齢者の方々が、寒さに耐えながら、「私はもう死ぬまでこのままでいいのよ。もったいないから。」っておっしゃっている。でも、ヒートショックで、年間19,000人もの方々が亡くなっていて、この人数は交通事故死者数のなんと7倍以上に上ります。さらにヒートショックで倒れて命を取り留めても、半身不随や車いす生活等を強いられて健康寿命を失っている方々が、ヒートショックの死者の数倍の上るのではないかといわれています。

 

欧州では、既存住宅の断熱改修がどんどん進んでいますが、日本では今後どうするのか、有効な政策が打ち出せていないように思っています。

 

柿沢:これは今度、次に仕掛けていくべき住宅政策に関する大きなマインドシフト、パラダイムシフトの一つのポイントだと思いますね。

 

いままで景気の指標に新築着工戸数が使われてきたことから見られるように、新築住宅が量産されるということが景気のいい証拠みたいなふうに思われてきたわけですけれども。空き家800万戸とかいう時代に、これからやがては空き家になってしまうような新築住宅をどんどん量産するなんていうのは、いうなれば見当違いの政策になっていく。それをまた住宅ローン減税で優遇していくというような政策をいつまで続けられるのか。住宅政策を総合的に見直していって、新築優遇政策から、既存の住宅ストックをどのように有効に長く活用していけるかっていうことに転換していかなきゃならないと思います。

リフォーム補助金で地域経済が活性化したドイツの例

実際にドイツの例がよくいわれますけど、リーマンショック以来、特に断熱リフォーム等々の既存の住宅のリフォームにドーンと大きく補助金を付けることによって、結果的にそれが有効な景気対策として作用したと。それは大手ハウスメーカーがやる仕事ではなくて、地場の工務店がやる仕事になるので、地域におカネが循環するっていう意味でも、地域経済の活性化も含めて、非常に有効な景気対策だったと思うんですね。

 

この考え方のシフトを、国の省庁で起こしていかなければいけない。これから心ある専門家、有識者の皆さんと私たちが取り組むべき政策の方向性って、ここだなっていうふうに私は思っています。

 

[図表7]住宅投資に占めるリフォームの割合の国際比較

 

高橋:なるほどですね。ただ、私は、既存住宅に関しては、補助金だとかの、飴だけの施策では効果は限定的なのではないかなと思っているんですよ。特に高齢者の方々がなかなか腰を上げない気がします。それだけに、既存住宅の省エネ性能の向上ってものすごく難しいだろうと思っています。

 

柿沢:そういう意味では、ボーリングのセンターピンみたいなスイッチボタンが私はあるとすれば、建築基準法の改正だと思っているんですよね。

 

高橋:仮に、断熱性能不足だと既存不適格という扱いになるだけでも、断熱改修の促進につながりそうですね。

 

田嶋:いずれにしても、既存住宅の断熱リフォームで、地域のリフォーム会社さんの売り上げが増えるということは、地域経済の活性化につながり、日本の国のみんなにとってプラスなことばかりだよっていうことをきちんと訴えて、理解を進めていきたいですね。

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