写真提供:一級建築事務所KOTATSU+

今後、国の住宅性能に係る政策が急速に変わろうとしています。これから家を建てる方々は、その方向性を踏まえて計画を進めることが、資産価値の落ちない住まいづくりのためには重要だと思います。これから家を建てる方にとって、とても参考になるお話が聞けたと思います。今回も、住まいるサポート株式会社代表取締役・高橋彰氏が、住宅の性能向上に積極的に取り組んでおられる柿沢未途衆議院議員(自由民主党 東京15区)と田嶋要衆議院議員(立憲民主党 千葉1区)のお二人に、これからの我が国の住宅性能に係る政策の方向性を中心についてインタビューします。

高気密・高断熱化によって住宅の寿命が延びる

柿沢:もう一つ、視点として持たなければいけないのは、高気密・高断熱の住宅を造ることによって、住宅そのものの長寿命化が図れるということだと思うんです。日本の昔の粗製乱造的な新築建設ラッシュでは、だいたい30年とかいう住宅ローンを払い終えると、その住宅は無価値になって、単なる空き家かスクラップになってしまうということが続いてきたわけです。中途半端な断熱・気密性能の家の場合は、壁のなかで結露が生じて、構造体の劣化が早いそうです。

 

高気密・高断熱化によって、住宅が長寿命になって、ライフサイクルが100年とかいうスパンになれば、次の世代に中古住宅として譲り渡していくということができるようになる。

 

私は実は住宅の断熱の問題をなんでこんなにやるようになったのかというと、もともと東京都議時代に厚生委員会に入ったからなんです。厚生行政にまったくなんの知見もなかった人間が、「高齢化社会において、税金や社会保険になるべく頼らずに、自前でどうやって老後の生活を支えていけるか?」っていうことを考えたときに、(自らの住宅を元手に老後資金を調達する)リバースモーゲージみたいなことができれば理想だなっていうということを考えたわけです。でも、リバースモーゲージをしようにも、ちょうど住み終えたころには無価値になってしまっているという住宅の現状を知り、長寿命化だ。そのためには断熱だっていう。こういう経路で私は、この領域に入っていっているんですよね。

 

いま、空き家をリノベして、次の世代に譲り渡すみたいなことが流行りつつありますけれども、こうなって住み終えたときに、一定の資産価値を持ったものとして、そのときに、いうならばお金が入ってきますよということになれば、そのことに一定のコストをかける意味を見いだすことができるんじゃないかと。

 

田嶋:前回の冒頭で触れた日本の住宅資産額だけが現状、異常な状況になっていることとつながってくる話かなって思いますね。私も中古の古い築35年くらい住宅を買うようなことも検討したときに、専門の方に「ちなみにこの家は物理的にはどのくらいこれから持つんですか」と聞いたら、「100年は持ちます」っていわれたんですよ。それなのに、マーケットの価値はすごく低くなってしまっている。先ほども触れましたが、法定耐用年数は22年ですね。結局、計算上そうなっちゃうから、みんなそこをいま、現実のものとして受け入れてしまっているけど、そこが変わってくると大きいですよね。

人に有害、効果は5年…見直すべき日本のシロアリ対策

高橋:長寿命化ということでいうと、日本の住宅業界のゆがみの一つに、シロアリ対策があると思います。現在一般的におこなわれているシロアリ対策は、EUでは使用が禁止されている農薬をベースにした合成殺虫剤を使用しているものです。これは、人体に有害で、かつ防蟻効果が5年程度しか続かないんです。さらに、現在の建築基準法では、地盤面から1mまでの構造材に防蟻処理を要求していますが、最近被害が急増している外来種のシロアリは2階の柱や屋根の構造材にも巣を作るので、この防蟻方法では通用しなくなっている。

 

耐震性能にこだわる方は多いですが、シロアリにやられてしまうと、耐震性能も維持されないですし、長寿命化や住宅資産の維持という点でも問題が大きいと思います。それほど費用をかけずに解決する方法はあるのですが、あまり知られていない。蟻害リスクは木造建築の唯一の欠点だと思うのですが、この現状のシロアリ対策についても、これから見直されていくことが必要だと考えています。

 

[図表4]一般的なシロアリ対策(合成殺虫剤系)

 

柿沢・田嶋:そのことは知らなかった。今度、調べてみますね。

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