アベノミクス1年後のニューヨーク投資家の衝撃予測
■財政出動、金融緩和に依存したアベノミクスの“失敗”
アベノミクスについて、みなさんはどう考えますか。安倍政権が2013年6月に打ち出した「アベノミクス」という言葉は実に分かりやすく、インパクトがありました。特に、世界に対して「日本はデフレ脱却に向けて頑張ろうとしている」というメッセージを伝え、日本の存在感を印象付けることに成功したと評価します。
アベノミクスは「3本の矢」を柱にしました。第1の矢が「大胆な金融政策(金融緩和)」。第2の矢が「機動的な財政政策(財政出動)」。第3の矢が「民間投資を喚起する成長戦略」です。
「3本の矢」が発表された時、私は「うまくいかないかもしれない」と一抹の不安を感じていました。なぜなら、社会や経済の規律を緩めてしまう効果もある金融緩和や、借金を重ねる財政出動は、必要な時は必要なのですが、経済政策の「王道」ではなく、いわば「邪道」ではないかと考えていたからです。所詮、他力本願にすぎないからです。
こうした対策に依存すればするほど、考える力が奪われます。最も大事なのは成長戦略なのですが、アベノミクスには、未来を切り拓く革新的なメニューを私は見つけられませんでした。
アベノミクスの異次元の金融緩和。日銀は株式を大量に購入しました。日本株に投資する上場投資信託(ETF)を年間約6兆円も買いました。株価は新型コロナウイルスの感染が広がる前までは上がりました。しかし、日銀が企業の筆頭株主になってしまうケースも頻発し、市場原理で動くはずの日本の株式市場は、日銀の「公的資金」で歪められました。日本は、まるで「社会主義経済」の様相でした。
アベノミクスがスタートして1年余りたったころ、ニューヨークで取材した現地の投資関係者は「アベノミクスはいずれ失敗に終わる」と予測していました。
アベノミクスのスタートから7年。日本経済は未来に向けた展望が見いだせないまま、日本は未曽有のコロナ禍に見舞われました。
アベノミクスの評価は賛否両論あります。2012年12月から2018年10月までの71カ月、景気回復を継続させました。戦後第1位の「いざなみ景気」の73カ月には及びませんでしたが、戦後第2位の長さになりました。
世界経済の回復を背景にしていたとはいえ、マクロ経済政策としては一定の評価に値します。しかし、最大の課題のひとつだったデフレ脱却は果たせませんでした。何よりも生産性上昇率が低下傾向をたどり、潜在成長率を低迷させました。