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ポストパンデミックのコミュニティの中心に
■モールからプラットフォームへ
まずは、ショッピングモールを「大きな賃貸スペースのある有形資産」と捉えるのをやめてみよう。「デジタル世界と実世界の両方に切れ目なく広がる無限のプラットフォーム」がそこにあると考えてみてはどうか。そのプラットフォームは、テナントも買い物客も設備保守点検業者も地域住民も自由にアクセスできる場である。
このプラットフォームは、買い物客にとっては次のような特徴がある。
・何かニーズがあれば、顧客とモールの間で相談できる双方向のコミュニケーション窓口
・多様なチャネルの垣根を越えた購入方式(オンラインで商品をカートに入れて、そのまま実店舗へ移動して続きを購入など)
・上質なサービスや体験、特別イベント入場などを含む会員制プログラム
・ジャンルを問わないパーソナルショッパー(買い物同行・支援)サービス
・ライブイベントやストリーミング配信の拠点
・携帯端末ですみずみまで検索可能なスペース(ショップ、ブランド、商品など)
・暮らしのなかで、思い出に残るひとときになるような体験
地元コミュニティにとっては、次のような特徴がある。
・地元の行事や活動・運動の支援と会場提供
・施設のサステナビリティや社会的責任に関わる取り組みについて、リアルタイムに情報発信
テナントにとっては、次の特徴がある。
・テナントに役立つリアルタイムの市場関連情報やデータの提供
・物販、エンターテインメント、飲食はもちろん、斬新なテナント形式も含めた実験の場
・オンラインでもオフラインでも、手早く簡単に販売の場を設置できるプラグアンドプレイ型のプラットフォーム
・スタートアップの販売店向けの資金調達・インキュベーション機能を備えたプラットフォーム
・宅配、クリック&コレクト(オンライン注文後に自宅以外の場所で受け取るサービス)、海外発送などを支援するロジスティクスのプラットフォーム
・ライブ配信型、録画配信型など、魅力的なメディアづくりのための制作スペース
ショッピングモールが単なるコンクリートの巨大な箱ではなく、ハイテクを駆使した自由度の高いプラットフォームと捉えれば、前記のすべてが可能になる。
■さまざまなリテールタイプが揃ったパラダイス
ショッピングモールのポジショニングの考え方はすでに触れたが、優れたショッピングモールは、テナント構成でも同様の考え方を採用する。1つひとつのテナントに明確な目的と価値があるかどうかの確認が重要になる。よくある退屈なブランドが何となく並んでいるのではなく、いろいろなリテールタイプの小売業者が集まり、それぞれの小売りスペースが顧客の抱く問いかけに生き生きと確かな答えを出す――。
そんなテナントのラインナップにすべきではないか。テナント選定に当たっては、先に解説したカルチャー、エンターテインメント、ノウハウ、商品の各領域で訴求力があり、独自の店内体験を生き生きと演出しているかどうかを重視する。
結局のところ、世の中は何の代わり映えもしないショッピングモールをいくつもほしいとは思っていないからだ。求められているのは、独自性があって見掛け倒しではない集いの場であり、マーク・トロの言う人間のエネルギーが感じられる場だ。
今や、手のひらの上に膨大な商品の海が広がっていて、ほしいものがあればタップ2つで手に入るような時代である。「ショッピングモール」とか「ショッピングセンター」という工業化時代の遺物にできることといえば、「ポストデジタル時代、ポストパンデミック時代のコミュニティの中心」としての新たな役割を確立する他に道はない。
ダグ・スティーブンス
小売コンサルタント
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