(※写真はイメージです/PIXTA)

法律で義務付けられている健康診断。しかし、多くの企業が受けさせているだけ、あるいは実施はしているものの受診率が8割ほどに留まっている現状です。健康診断に掛かる費用は最低でも一人当たり7000円ほど、平均は1万~1万5000円、30人の職場であれば1回の定期健康診断で30万円から45万円と決して安くない費用が掛かっています。産業医の富田崇由氏曰く、健康診断の結果は個人の問題だけでなく職場の健康づくりにも活かすことができるそうです。

また社員の健康状態は食事や運動習慣、飲酒、喫煙といった個人の習慣や嗜好だけで決まるものでもありません。実は働く人の心身の健康は、その職場での環境や働き方によっても変わってきます。

 

例えば長時間労働で帰宅が遅くおなかが空いて深夜にドカ食いをしてしまう、業務が集中して睡眠時間が十分に取れず、朝食も食べずに出勤している、週末に時間をつくって運動をしたいと思っても、普段から疲れ果てていて寝ているだけで終わってしまう…こういう生活スタイルの社員が多い会社・部署では定期健診でも血圧や血糖、血中脂質などに異常をもつ人が増えてきます。

 

このような場合、個々の社員に食生活などに気をつけるように伝えて自力で改善するように促すだけではあまり効果は上がりません。そしてそのような状態が長く続くほど、病気や不調を抱える社員が増え職場の活力が失われていきます。これを改善するためには、会社全体あるいは部署単位で業務負担のバランスや労働時間といった働き方を見直すことも検討していく必要があります。

 

また一般に職場の健康づくりというと、どうしてもメンタル不調対策や休職・復職支援といった部分に目を奪われがちです。しかし心の健康と体の健康は別々のものではありません。高ストレス状態が長く続いている人はメンタル不調のリスクだけでなく生活習慣病のリスクも高まります。逆にいうと、定期健診で確認できる身体的な健康度が上がると、それがメンタルヘルスの向上にもつながります。

 

つまり職場の定期健康診断の結果には、社員個人の問題だけでなく今の職場が抱えている課題やリスクも表れています。だからこそ定期健診を活用することで職場全体の健康度や活力をアップさせることができるのです。

早期の対応が会社と個人の医療費の削減に繋がる

■定期健診から健康づくりを始め、会社も社員も幸せに

 

先日も知り合いの歯科医師と話していたのですが、多くの人は40~50代ぐらいになって歯や歯茎の異常に気づき10~20年ぶりに歯科医院を受診します。そこで虫歯や歯周病が進んでいれば歯を抜かなければならないこともあります。

 

本当はもっと若いうちから定期的に歯科医院を受診し、歯や歯茎の健康を意識していれば歯を抜かずに済んだはずです。しかし大きい問題が起こるまで受診の必要性に気づくことができず漫然と時間が過ぎるなかで次第に歯を失っていきます。

 

こうなると健康な歯を取り戻すことはできませんし、入れ歯やインプラントなど治療のための費用もかさんでしまいます。

 

現代の職場の健康障害の多くを占める生活習慣病にもこれと同じことがいえます。定期健診でわかった小さい変化を早い段階で有効な対策につなげることができれば、社員の健康度が上がり治療に掛かるはずだった医療費を抑えることができます。

 

反対にせっかく職場で定期健診をしていても「受けさせただけ」で何も手を打たなければ、時間とともに血圧や血糖、血中脂質を下げる薬を飲む人が増え続け、医療費も膨らむ一方です。

 

2019年度の国民医療費は総額44兆3895億円に上っており、3年連続で過去最高を更新しています。医療費の増加は、治療を受ける社員個人の負担にもなりますし、社員の健康保険料の半額を負担する会社の負担にもなります。

 

私自身は職場の定期健康診断の活用をはじめとして、日本全体で健康な職場が増えていくとみんなが健康になり、国民医療費は今の3分の1くらいまで減らせるのではないかと考えています。そうなると医療費や社会保障費の負担は減り、心身ともに健康に長く働ける人が増えて会社も社員もみんなが幸せに過ごせるのです。

 

少し大げさにいえば日本の社会全体を幸福にする可能性を秘めているのが職場の健康づくりであり、健康経営なのです。

 

富田 崇由

セイルズ産業医事務所

 

 

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※本連載は、富田崇由氏の著書『コストゼロで作る小さな会社の健康な職場』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

コストゼロでつくる小さな会社の健康な職場

コストゼロでつくる小さな会社の健康な職場

富田 崇由

幻冬舎メディアコンサルティング

働く人の健康問題に注目が集まっていますが、組織として健康増進に取り組んでいる企業は多くありません。 「健康経営」や「従業員の健康づくり」は必ずしも産業医がいなければできないものではなく、小さな会社でもコストを掛…

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