一般健康診断の目的は早期発見と予防
■「一般健診」と「特殊健診」
会社(事業者)が社員に対して行うように法律で定められている健康診断には大きく2種類があります。「一般健康診断」と「特殊健康診断」です。
一般健康診断の目的は、生活習慣病をはじめとした健康障害の早期発見と予防です。雇い入れ時の健康診断や、年に1回行う定期健康診断などがこれに当たります。
法令で定められている職場の定期健診の検査内容は、身長・体重、腹囲や血圧、血糖、肝機能、心電図などです。医療機関や健診施設により、また健診のコースなどによっても少しずつ検査内容は異なります。さらに個人の希望に応じてがん検診などのオプション検査を加える場合もあります。
一方の特殊健康診断は業務によって起こりうる病気の予防、早期発見を目的としています。例えば建設業や工事現場で働く人が長期にわたって粉じん(細かい粒子)を吸い込むと、肺の組織が硬くなって呼吸が苦しくなるじん肺、という病気を発症します。これを予防するために「じん肺健康診断」として胸部X線検査を行います。ほかにも有害物質を扱う人を対象とした「鉛健康診断」「有機溶剤健康診断」「特定化学物質健康診断」などもあります。これらは6ヵ月に1回実施し、結果を労働基準監督署に報告することになっています。
会社に雇われて働く人は、業務内容に応じて定期的に一般健診の定期健診あるいは定期健診と特殊健診の両方を受けていくことになります。
このほかに会社の義務ではありませんが、特定の業務に従事する人の健康障害を予防するために推奨されている健康診断もあります。
なお、職場の定期健診とよく似たものに「特定健康診査(通称メタボ健診)」があります。これは会社ではなく健康保険組合や協会けんぽ、自治体などが実施するものです。生活習慣病、特にメタボリックシンドローム(メタボ)の早期発見を目的とした健診で、健康保険に加入する40~74歳の人の対象です。
特定健診は職場の定期健診と検査内容の多くが重なるため、40歳以上で働いている人では職場の定期健診が特定健診を兼ねていることがほとんどです。
■健康診断は、目的に合ったものを毎年受けることが大事
健康診断に対して「自分は気になる不調もないし、健康には自信があるから受けなくても大丈夫」「何かあれば、自分で病院へ行くからいい」と考える人がいます。仕事や家事に追われていて、痛いところもないのに毎年の健康診断を受けるのが面倒だという人がいるのは私も理解できます。
しかし健康診断とはそもそも健康な人が受けるものです。健康な人を対象として体に負担の少ない簡便な検査を行い、進行すると命に関わる病気やその兆候がないかどうかをふるいにかける(スクリーニング)検査です。
ざっくりと病気がありそうかどうかを調べるものですから、必要なときは追加の検査や精密検査を行い、病気の有無や治療がいるのかどうかなどを判定します。
健康診断はそもそも本人も気づかない病気の“芽”を調べるものですから、気になる症状がないからとか去年の健診で異常がなかったからといった理由で、今年は受けなくてもいいということにはなりません。たとえ数値が正常の範囲内でも少しずつ健康状態が悪化している場合もありますし、例年と比べて急に大きく数値が変わったときは何か病気が隠れている可能性もあります。少なくとも年に1回、毎年継続して受けて経年の変化を見ていくためのものなのです。
また健康診断は、その目的によって調べる検査項目が異なります。一つの健康診断ですべての病気の有無が調べられるわけではありませんから、目的に合ったものを受診していくことも重要です。乳がんなどの婦人科がんは、職場の定期健診では調べられないことも多く、個人で受診しなければならない場合もあります。
ちなみに「健診」と「検診」は音が同じですが、少し意味合いは異なります。健診は職場の定期健診などの一般的な健康診断を指すのに対し、検診は「がん検診」「婦人科検診」「眼科検診」など特定の病気の有無を調べる検査を表すことが多くなっています。