コストゼロからでも職場の健康づくりは可能!
■コストを掛けなくても、健康な職場はつくれる
小さな会社が大手と同じような産業保健活動をしようと思うと当然コストも労力も掛かります。産業医と契約をすれば月々の費用が発生しますし、窓口となる人員も必要です。だからこそ「お金や人手がないとできない」と思われるのだと思いますが、実はそれこそが大きな誤解です。
小さな会社でも、コストを掛けずに従業員が自分たちでできる健康づくりはたくさんあります。そのことを少しでも多くの人に知っていただきたいと思っています。
むしろ職場の健康づくりにおいて、産業医のような専門家にできることは限られています。健康経営に力を注ぐ大手企業もそうですが、産業医や産業保健の専門家がすることは医学的な情報を提供したり、健康管理をするきっかけづくりをしたり、働く人が困ったときに相談にのったりというアドバイザーやサポーターのようなことに過ぎません。実際に健康な職場をつくっていくのは経営者や人事労務の担当者、そして従業員です。
自分たちでやるといっても何をしたらいいかわからない、あるいは健康の知識が少ない素人だけで効果の上がる取り組みができるとは思えないと考える人もいます。けれども働く人たち一人ひとりの意識や行動が変わると、職場の健康度は思った以上に上がります。私のこれまでの経験からもそれは確実にいえることです。
IT関連企業でメンタル不調者が多く、若手社員もどんどん辞めていくというような会社でも社員の行動を少し変えるだけで職場の雰囲気がガラッと変化し、働きやすい職場になることがあります。40~50代以上の中高年が多い職場では高血圧や糖尿病、腰痛などの病気や不調が多くても年だから仕方がないと思いがちですが、働き方や生活習慣に気をつけていくと健康度が改善します。そして健康な社員が増えるとそれだけで不思議なほど職場全体がいきいきとしてきます。
職場の健康を守る「5管理」
■定期健康診断は、職場の健康づくりのすべての基本
小さな会社で職場の健康づくりを考えたいというときに活用できるのが、毎年職場で行っている定期健康診断です。
職場の定期健康診断は事業規模や従業員数にかかわらず、会社が労働者に対して実施することが義務付けられています(労働安全衛生法など各種法令による)。どの会社でも雇い入れ時の健康診断や、半年~1年に1回程度の定期健康診断を行っていることと思います。
この定期健康診断は実は職場の健康づくりにおいて、最も基本となるものです。職場の産業保健(労働衛生)の基本要素となるのが次の3つです。3つの管理なので「3管理」とも呼ばれます。
②作業管理(心身の健康に有害となる業務の内容や方法、労働時間などを管理する)
③健康管理(健康障害を予防・早期発見し、労働者の健康を保持・増進させる)
事故のリスクが高い職場、危険物を扱うような職場では①作業環境管理や②作業管理の比重が大きくなりますが、現代日本のオフィスワークがメインの職場では③の健康管理が対策の中心となってきます。特に社会の高齢化が進んでいる日本では業種に関係なくすべての職場で健康管理が必要でありその基礎データとなるのが定期健康診断です。
なお、この3管理に次の二つを加え産業保健(労働衛生)の「5管理」の取り組みを行っていくことが職場の健康づくりの全体像になります。
⑤総括管理(職場全体での、健康づくりの実施体制を構築し、計画を立てる)