過疎化地域にある診療所や、在宅医療、夜間診療など、利用者にとっては必要不可欠な存在である医療サービス。一方で、国内の約半数の病院が「赤字」に陥っていると、株式会社アリオンシステム代表取締役社長の山本篤憲氏はいいます。医療を「経営」の面からみた際の厳しすぎる現実と、解決に必要な要素について、DX化のプロとして市町村とも連携を図る山本氏が解説します。

赤字と黒字の分かれ目は「人件費」対策

病院の主な支出は、なんといっても医師や看護師などへの給与をはじめとする人件費です。この人件費が高いほど、病院が赤字に陥るリスクは高まります。

 

病院ならではの考え方として、病床に対する人員配置という条件がつきまとうため、好きに調整して削減するわけにはいきません。そのため、稼働していない病床が多いと収益につながらない費用を垂れ流してしまうことになります。

 

病床稼働数の損益分岐点は80%とされますが、現状日本の全病床の稼働率平均は80%強を保ちつつも、減少傾向にあります。その背景には、病床数が削減されながら入院日数も圧縮傾向にあることが影響しています。

 

もちろん、看護師はほとんど常時何かしらの仕事はしていますからはっきりとは見えづらいのですが、人員過剰である場合、看護師を「遊ばせている」状態が生まれてしまいます。

 

看護師の配置に対しては、病床稼働率を十分意識するべきです。そうすることで人件費に関する収支バランスは整っていきます。

 

逆に、人材不足を補うために採用活動を行い看護師や医療事務スタッフを雇ったはいいが、最終的には人員過多になり、かえって人件費がふくらんでしまったという事例も耳にします。

 

採用にしても配置にしても、円滑な医療提供に貢献してくれる人員と院内の実情を丁寧に照らし合わせて行うことが、戦略的にもコスト対策的にもよいことは間違いありません。

 

 

山本 篤憲

株式会社アリオンシステム

代表取締役社長
 

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※本連載は、山本篤憲氏の著書『病院を発展・黒字化させる 電子カルテイノベーション』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

病院を発展・黒字化させる 電子カルテイノベーション

病院を発展・黒字化させる 電子カルテイノベーション

山本 篤憲

幻冬舎メディアコンサルティング

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