過疎化地域にある診療所や、在宅医療、夜間診療など、利用者にとっては必要不可欠な存在である医療サービス。一方で、国内の約半数の病院が「赤字」に陥っていると、株式会社アリオンシステム代表取締役社長の山本篤憲氏はいいます。医療を「経営」の面からみた際の厳しすぎる現実と、解決に必要な要素について、DX化のプロとして市町村とも連携を図る山本氏が解説します。

国内46.2%が「赤字」…高すぎる「コスト」

2020年11月、一般社団法人日本病院会の調査により国内の赤字病院の割合は全体で46.2%であると報告されました。前年同月に公表された厚生労働省の「医療経済実態調査」によると、赤字傾向にある病院は国公立系が多く、民間病院は黒字体質にあるとされていました。

 

国公立系の病院は、民間では対応が難しい、へき地医療や救命救急といった収益性の薄い医療も担わなければなりません。その側面もあって、国公立系の病院は赤字傾向になっているのだろうと読み解くことができます。

 

当然ながら医療法人の第一目標は「儲けること」ではなく、使命感をもってへき地医療などに取り組むことは決して否定されるべきでもありません。ただ、「だから赤字でよい」とはされていません。医療費国庫補助が10兆円にものぼる現在の状況は、日本の医療の持続可能性を考えると無視できない問題です。

 

その証拠に、厚生労働省は医療機関の赤字脱却手段として、全国424の病院に再編検討と、赤字対応策の策定を期限付きで打診しています。人道的要素が強い医療法人であっても、赤字経営にはメスを入れると明確に行動で示しているといえます。

 

日本には国民皆保険制度という制度があります。同じ病気であれば、全国どの病院を受診しても治療費はほぼ一律です。

 

これは患者にとってはありがたいことなのですが、病院側にとっては経営の舵取りを難しくしている大きな要因でもあります。

 

実際、医療サービスの提供額にも集患数にも差がないのに、一方は黒字、他方は赤字というケースも少なくはありません。どうしてこのような差が生まれるのかといえば、医業収入に補助金収入を加えてなお、医業経費などのコストが収益を上回っているからです。

 

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※本連載は、山本篤憲氏の著書『病院を発展・黒字化させる 電子カルテイノベーション』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

病院を発展・黒字化させる 電子カルテイノベーション

病院を発展・黒字化させる 電子カルテイノベーション

山本 篤憲

幻冬舎メディアコンサルティング

日本の病院の約4割は慢性的な赤字経営に苦しんでおり、高い人件費率がいちばんの原因になっています。その解決策として挙げられるのが、電子カルテの導入による業務効率化ですが、中小病院の約6割がいまだ導入に踏み切ることが…

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