赤字に苦しむ中小病院にイノベーションをもたらす可能性を秘めた「電子カルテ」。なかには年間約7,000万円のコストカットに成功した病院もあると、株式会社アリオンシステム代表取締役社長の山本篤憲氏はいいます。もっとも「カルテの電子化」には厚生労働省が定めたいくつかのルールが存在するため、電子カルテ導入にあたって求められる3つの原則をみていきましょう。

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電子カルテに求められる3つの原則

カルテの電子化が認められたのは、1999年のことでした。それまではどの病院も紙カルテで患者の記録をつけていました。カルテは法律により、最低5年間の保存義務があります。

 

また、診療記録とは連続性を持った情報です。法律に従っているからといって、「最後の受診が5年前の今日でした、だからそれ以前の分はすべて処分します」というわけにはいきません。5年以上なんらかの疾患の治療を受けている人は大勢います。何年も前に治療したきりずっと音沙汰のなかった人が突然やってきて、診療を求める可能性は決して小さくはありません。

 

そこで、古いカルテも結局「もう少し残しておいたほうが安心」という結論になりがちでした。やがて患者の数だけカルテは増え、どの病院も置き場所に困るようになっていきました。こうした医療機関の頭痛のタネを解消すべく考えられたのが、カルテの電子化でした。この電子化にあたり、厚生労働省は3つの原則を提示しています。

 

まず1つ目は、真正性を持たせることです。真正性とは、厚生労働省のガイドライン(『医療情報システムを安全に管理するために「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」』2009年)によれば、「正当な人が記録し確認された情報に関し第三者から見て作成の責任の所在が明確であり、かつ、故意または過失による、虚偽入力、書き換え、消去、及び混同が防止されていることである。なお、混同とは、患者を取り違えた記録がなされたり、記録された情報間での関連性を誤ったりすることをいう」となっています。

 

つまりそのデータ作成の履歴が正確に残っており、患者ときちんと紐付いているということです。そのため電子カルテはいったん記録として保存したあとは、修正などを行う度に改定歴にログが残るようになっています。

 

万一、どこかで改ざんされるようなことがあっても、どのタイミングで改ざんと疑われる修正がなされたかを絞り込めるようになっているのです。

 

2つ目は、カルテを見たときにすっと読めるような形になっていること、つまり見読性です。こちらもガイドラインによれば、「電子媒体に保存された内容を、権限保有者からの要求に基づき必要に応じて肉眼で見読可能な状態にできることである。ただし、見読性とは本来〈診療に用いるのに支障が無いこと〉と〈監査等に差し支えないようにすること〉であり、この両方を満たすことが、ガイドラインで求められる実質的な見読性の確保である」となっています。

 

簡単にいえば、誰でも読める文字で書かれていることが要求されている、ということです。

 

3つ目は保存性が担保されていることです。保存性とは、同じくガイドラインでは「記録された情報が法令等で定められた期間にわたって真正性を保ち、見読可能にできる状態で保存されることをいう」と説明されています。

 

カルテが果たす機能の重要性から、消失は絶対に起こってはならないことです。電子化したのはいいけれど、サーバーの電源が落ちたらデータが消えました、では話になりません。そうならないよう、データの管理はバックアップ体制をきちんと行うようにという意味です。

 

このような原則に従い病院移転を機に電子化に踏み切った病院の一つ、神戸市立医療センター中央市民病院が2012年の「神戸市立病院紀要」に掲載された「電子カルテ導入に向けた紙カルテPDF化の実際と成果」(神戸市立医療センター中央市民病院医療情報部加藤健司、谷口悦子〈診療情報管理士〉)で、そのコスト削減効果を報告しています。

 

この論文はインターネットで検索してPDFでダウンロードすることができます。

 

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