業務効率化やコスト削減に便利な電子カルテ。一方、病院内で情報システムを満足に扱える人材が少ないことがトラブルなどのリスクにつながると、株式会社アリオンシステム代表取締役社長の山本篤憲氏はいいます。医療現場の「ITリテラシーの低さ」の実情とともに、病院経営者が考えるべきリスク対策について解説します。

「コピペってなに?」…医療現場の呆れた実態

医師や看護師をはじめ、病院では多くの人が働いています。しかしそのなかに情報システムに精通している人材がいるかというと、ほとんどいないのが現実です。オンプレミス型電子カルテを入れる際、さすがに医師や看護師が情報システム室担当になることはありませんが、職員のなかには情報システム室への異動を指示される方も出てくるかもしれません。

 

オンプレミス型電子カルテを導入する段階で、サーバーやパソコン、プリンターといった電子カルテ専用ハードウェアを病院にそろえる必要があります。そして、設置したからには日々の維持管理はもちろん、もしこれらの端末や電子カルテにトラブルが起こった場合、基本的には院内の職員が解決に当たらなければなりません。

 

電子カルテに関係するトラブルのうち、バックアップがうまく取れていなかったという例もありました。バックアップ用の磁気テープが装填されていなかったのがその原因だったそうですが、これもシステムに精通しているスタッフであればまず起こりえなかったミスだといえます。

 

IT企業や商社と比べると、失礼ながら病院職員のITまわりの知識……、いわゆるITリテラシーはかなり低いところにあります。パソコンの基本操作といえるコピー&ペーストでさえ「何?」と疑問を呈し、「Excelのワークシートを増やすにはどう操作すればいいの?」といった質問が担当者の口から出ることは、決して珍しいことではないのです。

 

IT知識がこのような水準の方に情報システムの管理を任せるのは、はっきりいって、患者にとってはリスクでしかありません。ちょっとしたトラブルでマニュアルでの対処ができるレベルならまだしも、深刻なエラーになれば病院内で少しシステムに詳しいレベルでは太刀打ちできないことがほとんどです。

 

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※本連載は、山本篤憲氏の著書『病院を発展・黒字化させる 電子カルテイノベーション』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

病院を発展・黒字化させる 電子カルテイノベーション

病院を発展・黒字化させる 電子カルテイノベーション

山本 篤憲

幻冬舎メディアコンサルティング

日本の病院の約4割は慢性的な赤字経営に苦しんでおり、高い人件費率がいちばんの原因になっています。その解決策として挙げられるのが、電子カルテの導入による業務効率化ですが、中小病院の約6割がいまだ導入に踏み切ることが…

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